農家バーテンダーが取り組む「木から作る酒」。千葉市に蒸留所建設予定。

クラフトビールに始まり、クラフトコーラ、クラフトジンと、飲料業界に様々な風が活発に吹いていますが、そこにはハーブ・スパイスが関わり、且つ、そこから醸し出されるアロマが重要なファクターとなっています。

ハーブ・アロマに関わる者として、日々ワクワク感が止まりません。

今日は、「木の酒」づくりに情熱を注ぐバーテンダーの物語を取り上げたいと思います。

世界で活躍する「農家バーテンダー」は、なぜ「木の酒」に挑むのか

今年4月、バンコクで発表された「アジアのベストバー50」で、東京・新宿にあるバー「ベンフィディック」の鹿山博康氏がアジアで5位(日本で1位)にランクインした。

「ベンフィディック」の名は、鹿山氏の苗字から。ゲール語で「鹿の谷」という意味のウィスキー「グレンフィディック」から着想を得て、ゲール語で「鹿の山」とつけた。ウィスキー好きは思わずニヤリとしてしまう名前かもしれない。

その店内は、バカラのアンティークのグラスに、シャルトリューズのオールドボトルなどが並ぶオーセンティックバーの雰囲気だが、出てくるカクテルは一味違う。自分で育てたニガヨモギを漬け込むなどして作ったオリジナルのアブサンが使われたり、畑から摘んできたフレッシュなジュニパーの葉がカクテルに添えられるなど、様々な植物のアロマと味わいを自在に取り込んだカクテルが登場する。

木から酒はつくれるのか?
実は鹿山氏は埼玉県ときがわ町の実家が農家で、ファームトゥーテーブルならぬ、ファームトゥーグラスを提唱する「農家バーテンダー」。コロナ期間中はスタッフ総出で農作業をし、カクテルに使うハーブを育てたりもしてきた。

そんなスタイルが注目を集め、先日はなんとアフリカ・ナイロビにゲストバーテンダーとして招聘されるなど、その活躍は世界規模だ。

そんな鹿山氏が2020年から取り組んでいるのが、なんと「木から作る酒」だ。その研究自体は、すでに茨城県つくば市にある、国立森林総合研究所が進めており、その試作品が完成していたことから、そのノウハウを生かしてオリジナルの木の酒が作れないか、と考えている。

そう思い至った理由は、故郷ときがわ町の7割が森林に覆われ、木材の産出で有名だから。高校の後輩で製材所を営む山口直氏によれば、製材する過程で出る木屑や端材は、産業廃棄物として処分しなくてはならないのだという。

「ハーブだけではなく、木材の香りを抽出したアルコールができれば、端材も無駄にせず、多種多様な木を使うことで、様々な天然のアロマを溶け込ませたオリジナリティあふれるカクテルができるのではないか」、と鹿山氏は考えた。

根本に立ち返って、日本酒は米から、ワインはぶどうからできるが、なぜ木の酒がないのか。

木材そのものにも、アルコール発酵の元となる糖分がある。その中でも、セルロースが多く含まれているが、リグニンという成分に覆われているため、発酵しない。しかし、セメントを作る際などに使う「ビーズミル」を使うことで、0.001ミリ以下に粉砕すると、醸造することができるようになるという。

香りを抽出するだけなら、既存のアルコール飲料に木片を漬けるだけでできる。でも、この木の酒が全く新しいのは、アルコールそのものが木から作られているという点にある。現在、人間が飲用しても問題ないかなどの試験を行なっている段階だ。

その背景にある森林の問題は、どのようになっているのか。実際に、鹿山氏と共に、山口氏の製材所を訪れた。

山口氏は製材所の3代目。普段は都内の住宅関連の会社で働きつつ、週末は実家に戻り、製材所を手伝っている。実際に木を加工するところを見せてもらったが、角材を作るためには、円柱形である丸太の端を切り落とす。「外側は水分が多く、香りが良い。でも、反りやすいので木材としては使いづらい」のだという。


鹿山氏(手前)と山口氏(奥)

木の街として知られるときがわ町だが、安い外国産の木材に押され、製材所の数は激減。30年前は9軒あったものの、今は3軒が残るのみとなり、外から丸太を仕入れずに、ときがわ町内で丸太を伐採しているのは2軒だけだという。

山口氏は、昔からの地元の製材所だからこそ、山を守りたい思いが大きいという。人間の都合で全て伐採するわけでなく、逆に一切関与しないのでもなく、必要な木を切ることで、下草に光があたり根が張ることで、土砂災害を防ぐことができる。まずは3ヘクタールある自分が持っている山から、良い循環を作って行きたいという。

クラフトブームも追い風に
昔からあったそんな山の循環が、なぜ崩れてしまったのか。それは、外国産の木材に押され、国産の木材が価格競争を強いられ、山に利益が回らなくなってしまったことが原因だ。国産材の価格は、1960年代の10分の1に値下がりしたという。

切った木全体の約2割が端材や木屑となり、年に18トンほどの産業廃棄物となる。それをお金を支払って捨てるのではなく、「木の酒」を作ることで収入とすることができれば、山の手入れに、もっと力を注ぐことができると山口氏は考えている。

「国産材には国の補助金もあるが、その場合は、効率重視で一気に全部切ってしまうので、土砂災害などを引き起こす可能性がある」と山口氏は警鐘を鳴らす。昔は樹勢を整えるための枝打ちをする人も多くいたが、国産材価格の暴落もあって減少。山の手入れも、以前より高価になってしまったという。

山の変化は、自然にも大きな影響を与えている。「この辺りの川の水も、だいぶ少なくなってしまった」。木の酒を通じて、山や森林を取り巻く環境に興味を持ってくる人も増えるのでは、と期待している。

鹿山氏は地元の思いも背負いつつ、去年、エシカルスピリッツ社と共に会社を設立。千葉市に木の酒専用の蒸留所を作る予定だ。

「実際に、森林総合研究所で杉やヒノキ、ミズナラ、クロモジ、桜などの木材からできたお酒を試飲させてもらったが、素晴らしい味に感動した。今は大量生産、大量消費ではなく、クラフト的なものに世の中が価値観が移ってきた」と鹿山氏は感じている。

日本は国土の67%が森林と、世界でもトップクラスの森林率を誇る。廃棄されている端材や木屑が資源となるなら、そのインパクトは少なくない。サステナブルやSDGsの動きが活発化する中、この新しい木の酒の取り組みに、引き続き注目していきたい。

※Forbes Japanの2022年5月22日の記事(https://forbesjapan.com/articles/detail/47604)より抜粋

今後が非常に楽しみになる記事です。

確かにバーへ行って、杉やヒノキ由来のアルコールから作られたお酒が置いてあったら、どんな風味と香りなのかが非常に気になります。

現在は人体に悪い影響が無いかの確認が行われているということですが、影響ないとジャッジされ次第、数年以内に商品化される流れになるはずです。

「素晴らしい味」と鹿山氏が太鼓判を押しているので、美味しいことに間違えないと思います。

定期的に動きをウォッチしたいと思います。

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