小学校の「香り表現」授業に人工知能を活用。セントマティックの新たな取り組み

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約2年前に、AIを駆使した香りと言葉の変換システム『カオリウム』を通じ、香りを言葉に変換していくことで、香りの可視化を目指すセントマティックという会社を取り上げたことがあります。

【過去記事:多様な香り体験を創造することで、心豊かな瞬間のあふれる未来社会をめざす「セントマティック」の試みが興味深いです。】(2019年12月29日)

☝の情報に触れた時、この壮大な取り組みは、中長期的に社会へ及ぼす影響は大きくなっていくことを予感しました。

香りに対する個々の感じ方はそれぞれ異なるものなので、香りとAIの相性はかなりいいと思います。

前出のセントマティックが、小学校向けの新たなプログラムを開発し、すでに始動していたので、今日はそのことを取り上げます。

「香り表現」授業に人工知能? “仕掛け人”が語る意外な必然性

「香り」を教材とした、小学校「生活科」向け感性教育プログラムの授業風景。(写真提供:セントマティック)

 子どもの感性を伸ばす「感性教育」の題材として、五感の中で取り残されていた「嗅覚」を対象とする試みが日本で進められている。人工知能システムも援用し、「香りを言葉に表現する」ことで、子どもたちの香りに対する興味、関心、感性を高めたり、人の感覚の多様性を感じさせたりするものだ。

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取り残されてきた「嗅覚」の感性教育

 子どもの感性を育む教育は一般的に「感性教育」とよばれる。日本では少なくとも昭和20年代から、「感性」を主眼とした教育の議論や提案があった。以降、感性教育を意識的に導入する学校が現れている。

 だが、感性教育の対象となる五感のうち、取り残されている感覚がある。「嗅覚」だ

 嗅覚は、記憶や感情との深い関連性をもち、食における「味わい」の重要な役割も果たす。一方で、視覚(見る)、触覚(触れる)、聴覚(聞く)、味覚(味わう)と比べて、授業の対象とするには手間がかかるなどの課題があるのだろう。「嗅覚教育」の実践や調査の報告はこれまで皆無ではないが、日本では学校授業の日常風景にはなっていない。

 そうした中で、嗅覚を対象とし、かつ人工知能(AI)を援用する感性教育プログラムが、スタートアップ企業から誕生した。

香りを言葉で表現、感じ方の違いを実感

 教室で、小学1年生の子どもたちが、瓶のふたを開けて香りを嗅ぎ、シートに「あっさり」「しずかな」「みずみずしい」などと書いていく。一方、他の子が同じ香りに対して書いた言葉には「クリア」「すーっとする」などの別表現が見られる。

 子ども自らが言葉を思い浮かべて表すのは難しい。そこで授業では、「カオリウム」とよばれるAIシステムが画面に示す複数の言葉から、その子が感じた言葉を選んでいった。これならば、感じた香りを言葉に表現しやすいし、こんな言葉にできるといった気づきもあるだろう。

「においは一緒だけど、自分が嗅いだにおいと、人が嗅いだにおい(の感じ方)は違う(と分かった)」

 子どもたちはこうして、自分の感じた香りを言葉で表したり、人により感じ方に違いがあることを知ったりしていった。

 この授業は、2019年設立のセントマティック(東京都渋谷区)が、都内インターナショナルスクールで開催したトライアル授業だ。愛知教育大学の野田敦敬学長監修のもと、リバネス(東京都新宿区)と協力し、2021年11月に実施した。 

(上)授業で使ったワークシートと「カオリウム」。(下)自分とクラスメイトの選んだ言葉の違いを確かめる子どもたち。(写真提供:セントマティック)

 セントマティック代表取締役の栗栖俊治氏は、「香りに対する、興味、関心、感性を高めることで、みなさんの暮らしを豊かにしていくことを目指しています。その一分野が教育です。子どもたちに嗅覚を意識的に使うことで感性を高めてほしい。そして、同じ香りにも好き嫌いなど感じ方の違いがあり、その理由として先天的なDNAが影響していること、そして後天的な人生経験に起因していることを知ることで、ダイバーシティの基本的理解につなげてほしい」と、ねらいを話す。

栗栖俊治(くりす・としはる)氏。セントマティック代表取締役。慶応義塾大学大学院卒業後、NTTドコモ入社。「しゃべってコンシェル」、音声認識機能、GPS機能などのプロジェクトリーダーを担当。NTTドコモ・ベンチャーズ シリコンバレー支店へ出向。2019年、セントマティック設立。現在に至る。同社は、AIシステム「カオリウム」で、日本酒、フレグランス、チョコレートなどの風味を言葉に可視化するサービスを小売業などに提供してもいる。(写真提供:セントマティック)

先生の主観に依存しない「かおり表現」の提示

 授業で用いた「カオリウム」は、特定の香りに対して人びとが抱く表現の数々を、重みづけしながら示すことのできるシステムといえる。

 たとえば、ハーブならハーブといった特定の香料が出す香りに対し、一般の人たち、それにソムリエなどのプロたちがネットや文学作品などでさまざまな表現をしている。これらの表現のデータをAIに分析させて、関連度の高い言葉を表示できるようにするわけだ。その香りとの関連度の高い言葉ほど、画面上の手前に大きく表示される。

 では、香りを教材とした感性教育に、AI技術を用いることの必然性はどこにあるのだろうか。栗栖氏はこう答える。

「先生が自分で香りの表現を用意したとしたら、それは先生の感性による表現となってしまいます。けれども、人の感じ方の傾向は、年齢や文化など、さまざまな要因で変わりうるものです。一義に定めることはできない。そこに、客観的なデータに基づくことの必然性が出てきます」

 栗栖氏はまた、AIはあくまで授業の支援ツールであるということも強調する。

「『カオリウム』は表現の選択肢を示すものです。人が感じた香りを言葉として選んで表現するためのツールといえます。感じ方の表現をさまざま示すことは『カオリウム』のできることですが、そこから先の深い部分を子どもたちに伝えるのは先生の役割です」

授業とは別日に「カオリウム」を筆者が体験したときの表示画面。「メム」という香水の香りに対し、「みずみずしい」「強い」「落ち着き」などの言葉が示された。複数の香りを選んだ上で、「“青空に泳ぐこいのぼり”のような香り」といった表現を導くこともできる。逆に、自分の感覚に合った香りを選ぶこともできる。 

フランスが先進国、日本は・・・

 セントマティックは、トライアル実施した授業を足がかりに、香りを題材とした感性教育プログラムの展開をねらっていく。

「地道に授業数を増やしていきたい。必要に応じてスタッフを出張させるだけでなく、学校に『カオリウム』を貸し出して先生に実施していただくことも考えています」(栗栖氏)

 同社は、香りをもとにした「物語づくり」の機会を子どもたちに提供するワークショップも実施している。「地域特産“ゆず”の香り」を題材とし、子どもたちからは、「薫るゆずの木の間から現れた鹿と触れ合う物語」などが生まれた。香りの感性教育を通じた地域創生の支援もねらいにあるという。

 嗅覚を扱った教育ではフランスが先進国だ。醸造家ジャック・ピュイゼが1975年に創始した「味覚教育」が、政府によって小学生向けにカリキュラム化されるなどの展開を見せてきた。「嗅覚、匂いの記憶」という授業案が用意され、「記憶の喚起と匂いの識別」や「風味の特徴」などの表現活動を含む体験的内容が組まれているという。

 過去、日本では定着しなかった嗅覚を対象とした感性教育は、人工知能などの新たな技術を力にして広まっていくだろうか。スタートアップ企業による取り組みは、まだ始まったばかりだ。

※JBpressの2022年2月20日の記事(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68888)より抜粋

非常に大きな可能性を感じる記事です。

嗅覚の教育が最も置き去りになっているということは、産業としてのマーケットが掘り起こされていないという状況なので、まさしく「ブルーオーシャン」の状況です。

セントマティックの今後の取り組みから目が離せません。

あと、嗅覚教育先進国のフランスの具体的な教育プログラムというものにも触れてみたくなりました。

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