切実な悩みを抱える人を、香りでサポートする『ムジナの庭』

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約2年の在宅勤務中心の生活を過ごしてみて、「アロマ」を活用することの重要性を深く認識しました。

ちょっと沈みがちな気持ちを高める際、休憩中のリラックスタイムの際や会議前に集中力を高めたい時など、様々なアロマと付き合っています。

嗅覚はダイレクトに脳に働きかける器官でもあるので、体感的にも即座に脳波の調整に役立っていることが感じられます。

今日は、様々な心の苦しみを持った人々に、香りを基軸としたカウンセリングプログラムを提供する『ムジナの庭』について取り上げたいと思います。

誰かと誰かを、誰かと地域を、“つなぐ”役割。鞍田 愛希子

思わず「ただいま」と言ってしまうような、福祉サービス施設『ムジナの庭』を設立した理由を、運営団体『Atelier Michaux』代表理事の鞍田愛希子さんに聞きました。

行きたくなる場所をつくる。

『ムジナの庭』とは、鞍田愛希子さんが経営する、就労継続支援B型事業所で、生活や就労に困難を抱える人が、一日数時間や週に数回など、体調に合わせて自身のペースで働くことのできる福祉サービス施設だ。一般的には作業所と無機質な名前で呼ばれる場所だが、『ムジナの庭』には明るく温かい空気が満ちている。鞍田さんをはじめスタッフの皆さんが、通所者のことを「メンバーさん」と呼ぶことからも想像できるように、ここに集う全員が『ムジナの庭』をつくる一員なのだ。鞍田さんは「福祉施設に通うことに抵抗のある方は多い。だからこそ、ここを作業所とは呼んでいないし、障害がある方・そうでない方、誰にとっても行きたくなる場所にしたかったんです」と話した。

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元は子ども部屋。改装してキッチンに。

鞍田さんはなぜ『ムジナの庭』を始めたのだろうか。すると、草木と自身の関係について話をしてくれた。「私はずっと植物の仕事ばかりやってきたんです。最初は植木屋で、その後は花屋。そして京都市内に住んでいた頃に、Enfleu rage(アンフルラージュ)という、花から香りを抽出する技法を知りました」。
 
本格的に香りに関わろうと、心身のトラブルに香りを用いて回復へ導くアロマカウンセリングを学んだのは2011年、東日本大震災の後だった。東北から離れている関西の人たちも傷ついていると感じてはいたが、アロマカウンセリングを通じて、深刻な悩みを抱える人に出会うことが多かったそうだ。「家族や本人が精神疾患を発症したり、生きるために自分の体を傷つけたり、想像以上に多くの人が生きづらさを抱えていました」。その頃の鞍田さんは植物と哲学の実験工房『Atelier Michaux』を運営していた。草木や花を観賞物以外の存在として感じる方法を模索しており、アロマカウンセリングは、実験工房の活動の一部だった。料理研究家や造形作家の友人たちと協働するワークショップは人気となる一方で、荒廃した茶畑へ茶摘みに行ったりなど、植物を育てる現場への思いも強くなっていた。「いつしか京都市内からもっと山奥へ行きたいと思うようになりました。香りの森をつくりたいなと想像したりして」。植物と自分の理想の関係が見えかけていた2014年頃、夫の転勤により急きょ、東京へ移り住むことになった。

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ハーブからエッセンシャルオイルなどをつくる、銅製の蒸留機。

香りと福祉施設が、居場所。

福祉の領域へ踏み出すきっかけは、家の前を歩いていく人たちの表情だった。「舌打ちしたりイライラしていたり。人口密度が高くなるほど人はストレスを感じるものですが、本当にそうだなと。東京にこそ心のケアが求められているのかもしれないと思いました」。そして、自宅近くの福祉施設を仕事先に選んだ。利用者にアロマを活用したプログラムができればと考えたのだ。「すれ違う人と東京では挨拶することもなかったけれど、福祉施設ではみんなが話しかけてくれました。まずそれが心地よかったんですよね。東京で初めて、人間の温かさを感じられた場所だったような気がします」と当時を回想し、こう続けた。「心の問題というのは、薬で治療することが多いです。でも薬に頼らず、人との対話によって症状を好転させられるという事実を知ったのもこの頃です。大きな衝撃を受けました。東京でも植物を使って何かをしたいという気持ちはずっとあったんですが、精神的な疾患を抱える人たちと出会って、アロマは切実に必要とされていると実感した時に、私はここにいたほうがいいと思ったんです。自分の居場所を見つけた瞬間だったのかもしれません」。

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施設の2階の窓から見える庭の景色。季節ごとに表情は変わる。

切実に必要とされている、とはどういうことなのだろうか。「例えばフラッシュバックを繰り返す場合に、要所を指で叩くタッピングや植物の香りで、活発すぎる右脳の働きを鎮める実践もあります。これまではそういった症状は薬で抑え込むしかないと考えられてきたけれど、実はそうじゃない。うつや対人恐怖などの精神症状に対しても、香りやタッチケアで身体に安心感を育むアプローチも増えてきています。さらに、何かあったときに駆け込める場所があれば、薬に頼らない生き方ができるかもしれません」。

「生きるための、香りと対話を提供する。駆け込める場所をつくる」。それが『ムジナの庭』設立の、鞍田さんの思いだったのだ。

『ムジナの庭』を共生の場に。

切実な悩みを抱える人を、香りでサポートする。その目的を実現する方法はいくつもあるだろう。アロマカウンセリングの専門家になってもいい、アロマオイルの調合・販売もひとつの方法かもしれない。しかし鞍田さんは、精神障害者に対する相談援助業務に携わるための国家資格「精神保健福祉士」を取得した。2020年5月には「自分の活動を形にしよう」と、東京都小金井市の事業創出プログラムにも参加し、個人の活動の場『Atelier Michaux』を法人化。「地域とつながり、誰もが憩える庭がある、福祉施設の開設」が、鞍田さんの目標になった。

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玄関のポスターは、歓迎!の印。

ここで疑問に思うのは、福祉領域への鞍田さんの思い入れの強さだろう。すると鞍田さんは「身近な家族や友人がメンタルに不調をきたしていたときに、力になれなかったんです。さまざまな経験をした今ならできることがあると思います。でも当時は、励まそうとするばかりで対話にもなっていなかった」と話した。そして「『ムジナの庭』をつくることを決めた頃、利用予定者はまだ数名だったけれど、あの頃の家族や友人を思い浮かべて、準備を進めました」と続けた。

施設に『ムジナの庭』と名づけた理由にも、鞍田さんの願いが込められているようだ。「ムジナってアナグマのことで、100メートルほどの巣穴をつくるんですね。そこにキツネやタヌキが勝手に棲み着いても追い出さずに一緒にいたりして。それがいいなって。あと私は、香りを扱うから、家はもちろん庭も大切なんです」。生活に障害がある人もない人も、誰もがのびのびとしていられる場所、ということなのだろう。

"つなぐ"ことが、自分の役割。

『ムジナの庭』は2021年3月にオープンし、鞍田さんが「事業創出プログラム」で掲げた目標どおりの、草木に囲まれた福祉施設になった。ここを「地域とつながる憩いの場」として、さらに育てていくことが鞍田さんのこれからなのだろうか。

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「メンバーさん」が主役のオープンアトリエ。鞍田さんは黒子。

すると、「今は」としたうえで、こう話した。「メンバーさんの話を聞いて、地域の人たちとつないでいくことが、私の役割だと思うんです。まずメンバーさんが『ムジナの庭』に通ってくれたら、スタッフとの関わりができる、これがスタート。次に、月に1度のオープンアトリエの日、見ず知らずだけれど、『ムジナの庭』に興味を持ってくれている外部の人たちと触れ合う。目の前で自分の作品が売れる経験は、やっぱり大きな自信になりますよね。そうやって、少しずつ他者とのつながりが広がっていければいいなと思うんです。だから私は、地域の人たちとも、思いを同じくしている人たちとも、もっとつながりたい」。鞍田さんが媒介になることで、『ムジナの庭』に来れば、心と身体が守られるだけでなく、自分らしさを発揮しながら社会とつながっていけるのだと想像できる。

『ムジナの庭』は、今の世の中の仕組みに生きづらさを感じる人だけでなく、すべての人にとって「一度立ち止まっても、ここへ来ればまた歩き出せる」という、お守りのような存在になるのかもしれない。  

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オープンアトリエ来場者に自分の作品を説明する「メンバーさん」。

photographs by Mao Yamamoto   text by Maho Ise

記事は雑誌ソトコト2022年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

※ソトコトの2022年2月の記事(https://sotokoto-online.jp/people/12524)より抜粋

このような施設が、今の社会全体に増えていくことで救われる人が多いのではないかと思います。

「植物の香りの素晴らしさ」に気づくことで、様々な心の囚われにも気づくきっかけを提供してくれるはずです。

香りが社会に与えるポテンシャルの大きさをさらに感じた記事に出会うことができ、感謝!

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