昨年の春に、北海道の森を代表する木である「トドマツ」の精油を製造している『フプの森』という会社について取り上げたことがあります。
【過去の参考記事：北海道の森を代表する木”トドマツ”にこだわった精油会社『フプの森』。どんな考え方・背景を持った会社なのか確認してみました。】（2019年3月7日）
北海道の千歳空港で、フプの森が生産したトドマツ精油を買って香りを嗅いだ時に、北海道生まれの私にとって懐かしい想いが沸いてきたのと同時に、本州に多い杉の香りにはない「爽快感」があり、とても素晴らしい香りだと感じました。
昨年記事を取り上げたときには、トドマツの香りの「有効性」に関する情報はほとんど無かったのですが、エステーグループの日本かおり研究所にて、その有効性に関する研究が続けられ、少しづつわかってきていることがあるようなので、今日はそのことを取り上げたいと思います。
捨てられていた木の枝が…空気をきれいに！北海道の森の資源
シリーズでお伝えしている「ＳＤＧｓ北海道から未来へ」。国連が掲げている17の目標のうち、今回、取り上げるのは、17番「パートナーシップで目標を達成しよう」です。
道東の森に放置され、使われていなかったあるものが、空気をきれいにする資源として注目されています。衣服についた臭いを軽減する消臭ミストや、車内の空気浄化剤。そして、消臭効果のあるゴミ袋。
「生ごみの嫌な臭いが全然しませんね」（記者リポート）
これらの商品、実は、道東の森が深く関わっています。釧路で国有林の森林整備を請け負う会社を訪ねました。
「（こちらでは何をしている？）ここでは森林を伐採して、丸太を作った時に未利用だったトドマツの枝葉を持ってきて、ここで精油を抽出しています」（北都・山﨑正明社長）
国内では、ほぼ道内だけに分布するトドマツ。丸太の生産で残った枝葉は、従来は使われないまま放置されるだけでした。そのトドマツに注目したのが、日用品大手・エステーグループの日本かおり研究所です。
「葉っぱから出る匂いの成分、それが非常に高い二酸化窒素除去能がある」（日本かおり研究所・金子俊彦ＣＥＯ）
公的機関と共同分析した結果、トドマツは、車の排気ガスなどに含まれる二酸化窒素を取り除く働きが、スギやヒノキを上回ることがわかりました。
「都市部を森にする…いいですよね？でもそれは無理だと。そうではなくて森の有効成分を都市部に持って来ることができれば、森の有効な機能をお届けできる。非常に奥の深い資源が、この北海道に眠っていた」（日本かおり研究所・金子俊彦ＣＥＯ）
トドマツの豊かな資源価値が長く見過ごされてきた北海道。釧路では、今、マイクロ波を利用してトドマツの枝葉から空気浄化作用のある精油などを抽出し、消臭剤のほか、エアコンフィルターやペット用品など、さまざまな商品への応用が進んでいます。
また、精油ができる過程で生じる残りかすは、臭いを消すゴミ袋などに利用されています。
さらに残ったものは牛の寝床に敷く材料になるなど、廃棄物ゼロの実績は、道が廃棄物抑制に取り組む事業所に贈る、昨年度の「北海道ゼロ・エミ大賞」に輝きました。「本州だとスギ・ヒノキの文化なので、みなさんにトドマツという樹種を認知していただいて、将来、北海道から製材品とかが出て行った時にトドマツはいいものだということで使っていただけるようになればなと思う」（北都・山﨑正明社長）
北海道の森林の4分の1以上を占める人工林、その半分以上がトドマツです。これまで使われていなかった森の資源が注目を集めています。
※HBCの2020年8月20日の記事（https://www.hbc.co.jp/news/efd61c4a85ef04c6621052875ded0fee.html）より抜粋
廃棄物を出さないこの動きは非常に素晴らしいと感じました。消臭効果のあるごみ袋は、本州に暑い地域には需要の高い商品なのではないかと思います。
日本かおり研究所のホームページを覗いてみると、抜粋記事の取り組みは、「クリアフォレスト事業」の一環であることがわかりました。
「クリアフォレスト」は、日本かおり研究所が、（研）科学技術振興機構の独創的シリーズ展開事業、“革新的ベンチャー活用開発”の成果として、（研）森林研究・整備機構と開発した「機能性樹木抽出成分」を活用した技術・成分ブランドです。日本かおり研究所では、クリアフォレストを環境衛生事業として捉え、本来自然が有している治癒力、生命維持能力などを科学の力で引き出して、人間が引き起こす大気汚染の低減やセルフメディケーション、菌・ウイルスによる感染制御等を視野に入れた事業展開を目指しています。
クリアフォレストは、次の3つの新技術から成り立っています。
今まさに社会からのニーズが高い事業だと思います。ホームページを詳しく見ると、「トドマツ」の有効成分に特化したビジネスのようです。
また、クリアフォレスト技術によって抽出した「トドマツ」の精水と精油、及び針葉紛体（天然針葉パウダー）には二酸化窒素の低減を含め、以下の効果があるとの記載がHPにあります。
青葉アルコールなど森林浴の効果があるとされる成分を多く含んでいます。
各種悪臭に対して効果があります。
大気汚染の原因物質の大きな要素である「二酸化窒素(NO2)」等を無害化させる成分（β-フェランドレン等）を含んでおり、低減させることができます。
空気中の活性酸素の発生原因の1つである「二酸化窒素(NO2)」等に作用し、脂質の酸化を抑制することができます。
トドマツ香り成分がスギ花粉をコーティングすることで、花粉のアレル物質の働きを低減します。
（特許取得済第6124340号）
トドマツが持つポテンシャルは非常に高そうなので、トドマツ事業の今後の動向にはアンテナを張っていきたいと思います。
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