フランス料理の本質を知りたいなら「地方を食べろ」。サヴォア地方がリードする美食文化。

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ハーブを軸とした視点でフランスを見ると、南フランスのプロヴァンス地方に関連する情報に偏りがちになりますが、実際にプロヴァンス地方へ行くタイミングが自分の中で現実的になってくると、フランスをもっと広い視点で捉えないといけないと思うようになりました。

そうすることで、プロヴァンス地方そのものの本質も捉えやすくなると思うからです。

今日は、フランスの中で一番の美食地方と注目されている「サヴォア地方」というエリアがあるようなのですが、その土地の食文化について取り上げたいと思います。

プロヴァンス地方から見て南南東の方角です。

フランス料理の本質を知りたいなら、地方へ!サヴォア地方がリードする、現代フランス美食文化

フランスは多様性溢れる地方の食文化を生み出した国だ。この国でフランス料理の本質を知りたいなら「地方を食べろ」、というのは定説で、時代とともにさまざまな地方に注目が集まってきたが、今、一番の美食地方と目されているのは、サヴォア地方だろう。その理由は、この地の、いい意味での〝閉鎖性〞とでも言おうか。フランス東部、3〜4000メートル級の山々に囲まれたサヴォア地方。特産といえば、緑豊かな高原で育った牛の乳製品。山が育むジビエも豊富で、キノコやハーブも香り高く、湖では淡水魚が育つ。かつてはサヴォア公国の一部だったので、今なおイタリアや南仏の食文化の残り香りもある。険しい山岳地帯なので、他の地方との交流は進まなかったが、むしろそれゆえ伝統が失われず、食文化に於いても強い個性を保持してきたといえる。

料理は素朴で滋養のあるチーズグラタンやシャルキュトリーなどが主流で、いわゆるガストロミーの文化は根付かなかった。ミシュランでも、数年前まで、三ツ星を獲得したシェフはわずか3人しかいなかった。ところが、2012年にエマニュエル・ルノー、15年にルネ&マキシム・メイユール、今年はパリでも活躍するヤニック・アレノの「シュヴァル・ブラン」が三ツ星となり、一気にサヴォアを美食の地に仕立てた。さらに、10軒の二ツ星店もあり、近い将来の三ツ星、と目される店も数軒あるのだ。

食べ手は世界中であらゆる美食を体験するようになった。彼らが欲するのは、他のどこでも味わえない、その土地ならではの魅力に満ちた、その作り手だけが語れるストーリーを持った料理だ。現在の嗜好に、サヴォア地方はぴったりとマッチし、この地で店を開いた料理人たちは、そんな食べ手の欲求を敏感に感じ取り、こぞって、地元の食文化をガストロノミーにふさわしいものにするべく、挑戦に乗り出したのだ。

サヴォアの豊かな自然を美しくナチュラルに皿に乗せる

ルネ・メイユールは、アルプスが連なるサヴォア地方奥地の谷で生まれ育った。1976年、25歳の時に地元に「ラ・ブイット」をオープン。郷土料理から始まった店は、少しずつガストロノミー化し、96年に息子マキシムが厨房に入ってから、進化は一気に加速した。父子揃って、地元から出たことがなく、料理学校も料理修業の経験もない完全な独学。だからこそ、サヴォア地方の山や湖の魅力を知り尽くし、サヴォア人としてのアイデンティティに忠実に、器の上にナチュラルに、かつ美しく昇華させてきた。ゆっくりとしかし着実に、唯一無二の料理を生み続け、三ツ星という山の頂上に立ったのだ。

エマニュエル・ルノーは、パリで生まれフランス北部で育った。子どもの頃から山が大好きで、夏冬のヴァカンスはいつもサヴォア地方。料理修業もこの地が主で、1997年にムジェーヴで「フロコン・ド・セル」を開業。2008年にはより自然に抱かれたい、と村を離れ、山の中腹に引っ越した。以後、ルノーの料理は、より自然に寄り添うように。毎朝、店のすぐ横に広がる森に分け入り、キノコやハーブを収穫し、森や湖の幸に、フレッシュな山の香りをあしらい、自然の魅力を力強くも繊細に表現した作品を次々と創造するようになり、ミシュラン最高峰に登りつめた。

パリの美食とは異なる魅力を持つ、地方のガストロノミー。その中で、若手ベテランを問わず、今もっとも多くの才能ある料理人が、それぞれのスタイルで強い個性を持つ土地の魅力を表現しているのが、ここサヴォア地方なのだ。

世界有数のリゾート地、ムジェーヴ。街から車で10分ほど山に分け入った、大自然に囲まれた山小屋風のホテル・レストラン。冬季は一面雪景色となる。

レマン湖で揚がったオンブル・シュヴァリエ(鱒)。懇意の漁師から釣れたてが店まで運ばれてくる。地元のワインでアクセントをつけ、レモンと松を香らせたバターのクリームでシンプルに。

鳩の胸肉ロティ。下には地元のジャガイモのフォンダン。内臓や腿肉は煮込んでフォアグラとともに。山に自生するアカザのクーリを添えて。

真っ白で繊細な食感を持つ淡水魚、フェラ。身の美しさを視覚的にも昇華させた作品。ほろっとやわらかな身に、パンで香ばしいアクセント。付け合わせは、イタリア原産で、この地域の伝統野菜プンタレラ。

ルネ(右)1950年生まれ、マキシム1975年生まれ。ともに、サン・マルタン・ド・ベルヴュで生まれ育ち、独学で料理を学ぶ。76年「ラ・ブイット」オープン。2015年、ミシュラン三ツ星獲得。

Emmanuel Renaut

1968年、パリ近郊出身。
97年、ムジェーヴの街中に
「フロコン・ド・セル」を
オープン。2008年に現在の
山間地に引っ越し。04年、
MOF獲得。12年、ミシュ
ラン三ツ星獲得。

Flocons de Sel
フロコン・ド・セル

1775 route du Leutaz 74120
Megève France
☎+33 (0)4 50 21 49 99
www.floconsdesel.com

La Bouitte
ラ・ブイット

Saint Marcel 73440 Saint-Martin-de-
Belleville France
☎+33 (0)4 79 08 96 77
www.la-bouitte.com

取材、文 加納雪乃
会社の駐在で過ごしたパリでレストラン文化の魅力に触れ、レストランの楽しさを伝えたい、と、ライターに転身。2000年から、パリはもとよりフランス全国を旅し、フランス美食文化の担い手たちを日本の雑誌に紹介している。

本記事は雑誌料理王国277号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は277号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

※料理王国の2021年10月4日の記事(https://cuisine-kingdom.com/emmanuelrenaut/)より抜粋

この抜粋記事で取り上げられている極一部の料理の説明を見るだけでも、興味を惹きつけられる組み合わせや素材に溢れています。

世界の美食家が注目しているというのも頷けます。

フランスに限らず、日本国内でも「地方」というのは魅力的な土地が多いのですが、その土地独自の地理的環境、気候環境から生み出される多様性の中で育まれた「唯一の文化」の存在によるものだと思います。

サヴォア地方という魅力的な土地を今のタイミングで知れてよかったです。

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