過去4日間にわたってお届けした『免疫力アップ・抗菌”に関連するハーブの説明をJAMHA(日本メディカルハーブ協会)のホームページでじっくりと読み返してみるシリーズ』は、本日で最後とさせていただきます。
(1回目)エキナセア
(2回目)シソ(赤紫蘇)
(3回目)ペパーミント
(4回目)レモンバーム
最終日の今日は、「ハトムギ」を取り上げたいと思います。「ハトムギ」と言えば、夏に飲む「はと麦茶」はあまりにも有名で、知らない人はいないのでは?というくらい、日本国民に広く認知されています。
ただ、私自身、ハーブの世界に関わるようになってから、「ヨクイニン」という名の生薬が、ハトムギの種皮を除いたものと知った時に、大きなインパクトを受けました。また、「免疫賦活」の効能についての研究も広く行われているということから、最終回に相応しいと思い、選択しました。それでは、さっそく取り上げたいと思います。
Job’s tears; Adlay
ハトムギ・植物名 ハトムギ
・学名 Coix lachrymal-jobivar. ma-yuen Stapf.
・英名 なし
・別名 なし
・科名 イネ科 ジュズダマ属
・近縁の西洋ハーブ なし
・植物 中国、インドシナ地方原産で、日本には古くに渡来し、現在は一部の地域で栽培されている。草丈約1~1.5m、花期は8~10月。9~10月に長さ8~10mm、楕円形で茶褐色の果実をつける。ジュズダマ(Coix lachrymal-jobi)の栽培品種。(文献1、2、3)
・使用部位 種皮を除いた種子(文献4)
・生薬名 ヨクイニン(薏苡仁)
・薬味・薬性 甘・微寒(文献5)概論
ハトが好んで食べることから名づけられ、中国では数千年前から食用にされていました。現在、煎じて飲む、炊いて食べる、肌に塗るなど、化粧品や健康食品、薬膳の分野で特に美肌効果が注目を集めているハーブです。豊富な栄養素が新陳代謝を活発にし、滋養強壮を促し、体内の老廃物排出を促すと考えられています。(文献6)
神農本草経では「上品」に記載があります。湿熱(体内にこもった余分な熱や湿気)を取り除く作用があるされ、消炎、利尿、鎮痛、排膿の目的で浮腫、リウマチ、神経痛などの漢方薬の中に今でも配合されています。民間では経験的にイボとりに利用されてきました。(文献2、3)
近年では、皮脂分泌抑制、抗炎症、抗腫瘍活性、免疫賦活、血糖降下、排卵誘発などの薬理作用研究が進み、有効成分として脂肪酸、多糖類などが推測されています(文献7、8、9)。脂肪酸エステルであるコイクセノライドの抗腫瘍効果に注目が集まりましたが、その存在を疑問視する報告も出ています。 (文献10) 。医療の分野では、イボやアトピー性皮膚炎などでの有用性が検討されています。 (文献9、11)
果皮と種皮を除かずに焙じたハトムギ茶は、香ばしくまろやかで蒸し暑い夏場の飲み物とて親しまれています。
成分(文献4、12)
・デンプン50~79%
・タンパク質16~19%
・脂肪油7%(パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸などのグリセリド)
・カンペステロール、スティグマステロール
・多糖類
・ビタミンB1
・アミノ酸適用 イボ、肌荒れ、むくみ、痛み
使用法(文献1、4)
・1日量10~30gを水500~600mlで煎じ、1日3回服用する。
・粉末の場合はは1回2gを1日3回服用する。安全性
・同属植物のジュズダマは、米国ハーブ製品協会の安全性ハンドブックでは、クラス2bであり、妊娠中に使用しないとされている。(文献13)
【参考文献】
1.岡田稔監修 『牧野和漢薬図鑑』 北竜社 2002
2.難波恒雄監修 『和漢薬の事典』 朝倉書店 2002
3.鈴木洋『漢方のくすりの事典』 医歯薬出版 1994
4.日本公定書協会編 『第15改正日本薬局方解説書』 廣川書店 2006
5.荒木性次 『新古方薬嚢』 方術信和会 1972
6.載昭宇 中医臨床 24(3),337-338;2003
7.杉浦真理子ほか 臨床と研究 82(3)544-548;2006
8.太田康之ほか 綜合臨床 54(12)3199-3200;2005
9.伊田喜光、寺沢捷年監修 『モノグラフ生薬の薬効・薬理』 医歯薬出版 2003
10.田瑞華ほか Natural Medicine 51(3)177-185;1997
11.杉浦徹 小児科臨床 58(12)2195-2198
12.ヒキノヒロシ 現代東洋医学 9 51-54;1988
13.メディカルハーブ広報センター監修『メディカルハーブ安全性ハンドブック』東京堂出版 2001※日本メディカルハーブ協会のMedical Herb Libraryの「ハトムギ」の記述(https://www.medicalherb.or.jp/archives/3401)より抜粋
ハトムギの可能性を感じる記述が多いです。ネット上でハトムギのことを検索していたのですが、以下の「はとむぎ館-はとむぎ専門 総合情報サイト―」が非常に面白いです。
■はとむぎについて
―植物学上の分類
―ハトムギの生態
―ハトムギの構造
―ハトムギの流通量・割合
―ハトムギにまつわる話
■はとむぎの歴史
―はとむぎの健康食としての歴史
―ヨクイニンの効果・効能
―神農本草経
―神農本草経のヨクイニンの記述
―本草網目
―大和本草
■はとむぎの効能
―ハトムギの栄養
―現在のハトムギの研究
―ハトムギに含まれる有効成分
■はとむぎの研究
―ハトムギ研究論文
―ハトムギ研究論文紹介
―抗癌・抗炎症作用に関する研究
―江文章教授の論文
ハトムギの全体像を把握する上で、このサイトは非常に有益だと思いました。
上記の抗癌・抗炎症作用に関する記述の部分ですが、以下の金沢大学の研究でも、有用性が示唆されていますのでリンクを貼ります。
同じく、金沢大学の下記の講演資料の中には、”免疫賦活作用”の部分についての記述があります。
今回、上記の情報に触れたことで、ハトムギのことをもっと知りたくなってきました。
継続的にハトムギの情報については幅広く触れていきたいと思います。