以前、フランスの代表的地方別の郷土料理の特徴を紹介した記事を取り上げたことがあります。
【過去記事:【8つの代表的地方別】フランス郷土料理の世界。〈地方別料理を堪能できる東京都内の料理店紹介付〉】(2020年8月14日)
その中で、「アルザス・ロレーヌ地方」(ドイツと接する東のエリア)は8つのエリアのうち一番最初に取り上げられていました。
【特徴】
アルザス・ロレーヌ地方はフランスの東に位置し、アルザス地方は隣接するドイツの食文化と山側の気候を受けている。また立地が山側のため、塩蔵(えんぞう)した肉やジビエ、ソーセージやベーコン、ハムといった加工肉、川魚、チーズを使った料理が多い。
ロレーヌ地方は「キッシュ・ロレーヌ」という有名な料理の名が示す通り、パイ風料理のキッシュが有名で、他にハチミツやミルキーな味わいのマンステールチーズなども特産品としている。
▲シュークルート
【代表的な料理】
シュークルート(塩漬け肉や魚、ソーセージと発酵キャベツの煮込み)、フォアグラのパテ、ハムなどのシャルキュトリー、マトロート(川魚の赤ワイン煮)、パン・デビス(スパイスを効かせた焼き菓子)、キッシュ・ロレーヌ(生クリームと卵をベースにしたアパレイユをパイ生地に注いでオーブンで焼いたもの)、タルトフランベ(小麦粉を練ったピザ状の薄い生地にチーズやベーコンなどを散らして焼き上げたもの)など
※冒頭の過去記事より
今日は、アルザス地方に伝わるクリスマス・クッキーのつくり方を取り上げたいと思います。
フランス菓子研究家・大森由紀子さんに教わる、 フランス・アルザス地方のクリスマスクッキー
12月号「ウェルネススイーツ」特集で紹介した、フランス菓子研究家・大森由紀子さんによるアルザス地方に伝わるクッキーレシピ。3種類のクッキーレシピを、工程からポイントまで、誌面では説明しきれなかった部分も含めて、さらに掘り下げて紹介!
モミノキのクリスマスツリー発祥の地 フランス・アルザス地方のクリスマス文化
ドイツとの国境に面したフランス・アルザス地方は、ドイツの文化も色濃く感じる場所。モミノキのクリスマスツリーや、クグロフの発祥地としても知られている。大森さんによると、この地方では、イエス・キリストの降誕を待ち望む期間「アドベント」に、約80種類もの“ブレデレ”と呼ばれるクリスマスクッキーを楽しむ習慣があるという。本誌12月号では、とくに代表的な3種類のクッキーを教えてもらった。今回は小麦不使用のレシピなので、日頃からグルテンを控えている人にもうれしい。ぜひ、クリスマスの本場アルザスの文化を感じながらつくってみよう。
Recipe A
エトワール
フランス語で“星”という意味を持つ名前で知られるクッキー。スパイスをたっぷり入れるのが本場のレシピだけれど、今回は3種類のスパイスを使って、食べやすい美味しさに。メレンゲを表面に塗って焼き上げれば、より見た目もクリスマスらしく!
材料(星型 約5cm幅 約15枚分)
卵白 20g
グラニュー糖 45g
アーモンドプードル 100g
シナモンパウダー 小さじ1/4
クローヴパウダー 小さじ1/4
つくりかた
1 メレンゲをつくる。ボウルにあらかじめ冷やしておいた卵白を入れ、ハンドミキサーを使って、6分立て(とろみがついて、すくい上げるととろとろと流れ落ちる状態)まで泡立てる [画像A]。そこにグラニュー糖を3回くらいに分けて入れながら、さらにもったりとするまでしっかりと泡立てる。あとで使うグラサージュ用に大さじ1を別にしておく。
2 1のメレンゲにアーモンドプードル、シナモンパウダー、クローヴパウダーを加えて、木べらで混ぜ合わせたら、手でひとまとめにする。ラップをかけて涼しい場所に30分ほど置いて生地をなじませる。そのあいだに、オーブンを160℃に予熱しておく。
3 めん棒を使って、2の生地を厚さ4mmほどに伸ばしたら、手早く星型で抜いていく[画像B]。残った生地は、再びまとめて伸ばして型で抜いていく。
4 天板にクッキングシートを敷き、型で抜いた生地を並べていく。1で別にしておいたグラサージュ用のメレンゲを刷毛で生地の表面に塗る[画像C]。
5 160℃のオーブンで約20分焼く。
Recipe B
シュプリッツ
バターの味わいが口いっぱいに広がる、絞り出しクッキー。本来は小麦粉を使うけれど、グルテンフリーのレシピにアレンジ。もちろん、米粉がなければ小麦粉でつくってもOK! 濃い焼き色がつかないよう焼き上げるために、焼く時間はオーブンをみながら調整しよう。
材料(約15個分)
バター 90g
粉糖 45g
塩 少々
バニラエッセンス 少々
卵白 30g
米粉 105g
つくりかた
1 バターと卵白を、それぞれ常温に戻しておく。オーブンを180℃に予熱しておく。
2 ボウルにバターを入れ、木ベラで混ぜながら、粉糖を3回くらいに分けて加えていく。塩とバニラエッセンスを加えて、さらに混ぜる。
3 卵白を少量ずつ加えて、その都度しっかりと混ぜ合わせる[画像A]。米粉を加えて均一になるまで混ぜてから、大きめの星口金をつけた絞り袋に生地を入れる[画像B]。
4 天板にクッキングシートを敷き、そのうえに円や波を描くように絞り、180℃のオーブンで約15分ほど焼く[画像C]。
“ドレンチェリー”をトッピングしてアレンジしてみよう!
大森さんおすすめのアレンジが、ドレンチェリーのトッピング。ドレンチェリーとは、さくらんぼの砂糖漬けのこと。赤や緑に着色されているので、トッピングするだけでクリスマスらしいクッキーに早変わり!
Recipe C
アーモンドロッシェ
その見た目から、「ロッシェ(岩)」という名前がつけられたクッキー。材料は、卵白・グラニュー糖・アーモンドの3つだけ! 低温で1時間、乾燥させながらじっくりと焼き上げるから、バター不使用でありながらサクッとした歯ざわりで、口のなかで溶けてしまうメレンゲクッキー。
材料(約10~12個分)
卵白 33g
グラニュー糖 40g
アーモンドプードル 50g
つくりかた
1 オーブンを120℃に予熱しておく。
2 メレンゲをつくる。ボウルに卵白とグラニュー糖を入れ、湯せんにかけ、人肌より少し熱めの温度をキープした状態になるよう気をつけながら、ハンドミキサーで泡立てる[画像A]。
3 ハンドミキサーでかき混ぜたスジが、メレンゲの表面にはっきりと見えるまで泡立ったら、アーモンドパウダーをふるって加え、ゴムベラで混ぜ合わせる[画像B]。
4 天板にクッキングシートを敷き、大さじのスプーン2つをつかって3の生地をすくい落としながら並べていく[画像C]。
5 120℃のオーブンで1時間じっくりと焼く。
フランス全地方の料理・菓子を網羅した
大森さん渾身の近著もチェック!
今年夏に発売となった大森さんの新刊がこちら。フランス全地方の伝統料理と郷土菓子のつくり方や、その歴史までまとめた保存版的な一冊だ。レシピだけでなく、食材やワインなどについての記述もあり、フランスの食文化を知ることができる。アルザスやロレーヌ、オーヴェルニュ、ブルゴーニュ、プロヴァンス、コルシカ島など、フランス各地方における料理と菓子を盛りだくさんの情報量で解説しているので、フランスの食文化をもっと知りたい人は、ぜひチェックしてみよう!
『フランス伝統料理と地方菓子の事典 全地方の食文化や歴史、食材、ワイン、チーズの知識から料理・菓子の作り方まで俯瞰して理解できる』(誠文堂新光社)7700円 著:大森由紀子
フランス菓子研究家
大森由紀子 さん
Profile
パリのル・コルドン・ブルー卒業。帰国後も定期的に渡仏し、フランス全土の食文化や歴史の研究を続けてきた。2016年、フランス政府よりフランス共和国・農事功労章シュバリエ勲章を受勲。料理教室「エートル・パティス・キュイジーヌ」を主宰。高校生パティシエNo.1を決める「スイーツ甲子園」をはじめとするコンテストのアドバイザーや審査員なども務める。著書は『小麦粉なしでおいしいフランス菓子』(誠文堂新光社)をはじめ、多数手がける。
https://www.yukiko-omori-etre.com
Christmas Card & Icing Cookie
今号に登場するアイシングクッキーやクリスマスカードの装飾は、大森由紀子さんのアシスタントを務める娘のYumeさん作。
※メトロポリターナトーキョーの2021年12月10日の記事(https://metropolitana.tokyo/ja/archive/wellness_sweets_recipe)より抜粋
ドイツ文化の影響を色濃く受けるフランス・アルザス地方の魅力が伝わってきます。
12月のクリスマスシーズンは街中がクリスマスの雰囲気に包まれ、楽しい気分になりそう!と色々とアルザス地方のことを妄想してしまいます。
クリスマスシーズンを盛り上げる知恵として、上記3つのレシピは活用していきたいです。