漢方に興味のある人であれば、生薬として使われる「冬虫夏草」の名前は有名かもしれません。
この「冬虫夏草」のネーミングが面白いですが、その由来が以下の養命酒製造のホームページに記載されています。
古来より不老長寿の秘薬として重用
秋といえば、キノコが美味しい季節ですが、古来よりキノコは薬用として食されてきました。中国では、生薬をはじめ、薬膳料理などにキノコが用いられてきました。
キノコと虫が合体した珍奇な生物「冬虫夏草」も、古来より東洋医学の生薬として不老長寿、強壮の秘薬として重用され、鎮静、鎮咳薬として病後の衰弱、肺結核などに用いられてきました。1757年に清の呉儀洛が著した医学書「本草従新」にもその名が記されています。日本には1728年(享保13年)に中国から輸入され、以来その名が知られるようになりました。
冬虫夏草とは、キノコが昆虫やクモに寄生し、体内に菌糸の集合体である菌核を形成して、さらに昆虫の頭部や間接部などから棒状の子実体を形成したものの総称です。冬虫夏草という不思議な名の由来は、冬は虫で、夏になると草(キノコ)になると信じられていたことから、冬虫夏草という名が付けられたといわれています。
一般に、冬虫夏草と呼ばれるものの仲間には、虫ではなく、菌類や高等植物の果実に発生するものも含まれていますが、本来の冬虫夏草は、子嚢菌類、バッカク菌科(Cordyceps sinensis(BERK.)SACC.)とその寄主であるコウモリガ(Hepialus armoricanus OBER)の幼虫の複合体を指します。
冬虫夏草は主に中国の四川、雲南、甘粛、青海、湖北、浙江の各省、チベットなどに分布しています。その大きさによって、「虫草王(ちゅうそうおう)」「散虫草(さんちゅうそう)」「把虫草(はちゅうそう)」の3種に分類され、日本では把虫草が主に輸入されています。冬虫夏草の主な薬用成分としては、「Cordyceptic acid(キナ酸の異性体)」が7%で、「ステロール(ergosterol、cholesterol、campesterol、sitosterol)」や「抗菌成分cordycepin」などを含むことが報告されています。近年では、化学療法後のガン患者の生活の質(QOL)と細胞性免疫の向上、B型肝炎の患者の肝機能の向上に対しても有効性が認められています。
古くから多くの研究者の注目を集めている冬虫夏草は、今も多くの新種が発見されています。特定の昆虫に、特定の菌類だけが寄生する寄主特異性や、昆虫の生態防御機構を打ち破る仕組みなど、未解明のことも少なくありません。今後、謎に包まれた生態の解明や、新たな薬理作用の発見、新薬への応用など、さらなる研究成果が期待される生薬のひとつです。※養命酒ライフスタイルマガジン「元気通信」の生薬ものしり事典(https://www.yomeishu.co.jp/genkigenki/crudem/151028/index.html)より抜粋
この説明を見ると、世の中に出回っている「冬虫夏草」には多種多様なものが存在していることが想像できますので注意が必要ですね。
また、主に中国の四川、雲南、甘粛、青海、湖北、浙江の各省、チベットなどに分布しているという記載がありますが、中国内で6割以上の生産量を誇る青海省の冬虫夏草マーケットに関する興味深いニュースを見つけましたので取り上げます。
中国青海省の「軟らかい黄金」冬虫夏草が出荷シーズン ライブ配信の販売も開始
【7月21日 CNS】中国で中医薬や薬膳料理に使われるキノコの一種、冬虫夏草の出荷シーズンを迎え、中国西部の青海省(Qinghai)西寧市(Xining)にある玖鷹(Jiuying)冬虫夏草市場がにぎわいを見せている。価値が高く「軟らかい黄金」とも呼ばれる冬虫夏草が布や新聞紙に敷かれ、業者と客の間で取引が行われている。
青海省の冬虫夏草の年間生産量は約100トンで、生産額は約180億元(約3040億円)。中国の総生産量の6割以上を占め、同省の100万人の農民、牧畜民が利益を得ている。
冬虫夏草を販売する王立強(Wang Liqiang)さんは「今年の生産量は昨年より少し多い分、価格は少し下がった。土付きの新鮮な冬虫夏草は1斤(500グラム)あたり4000元(約6万7520円)以上で売れる。仮に売れなかった場合でも、乾燥させて1斤あたり約3万元(約50万6390円)で売れる」と話す。
冬虫夏草の商売を40年続けている馬進財(Ma Jincai)さんは冬虫夏草を透明な管に入れて5本ごとに梱包し、顧客の元に届けている。「冬虫夏草は大きさや見た目で価格も大きく変わる。最も高価なものは1袋が数百元で売れ、最も安いのはわずか20元(約337円)だ」と説明する。「以前は干した冬虫夏草を食べることが多かったが、ここ数年で新鮮な冬虫夏草をそのまま食べることが人気になり、干した物より早く売れるようになった」と馬さん。自分も毎日3本の冬虫夏草を食べるのを欠かさず、「新鮮なものは数か月冷蔵しても劣化しないよ」と教えてくれた。
32歳の丁士俊(Ding Shijun)さんは自らを「青海チベット高原を歩く洮州(Taozhou)商人」と称する。故郷の甘粛省(Gansu)甘南チベット族自治州(Gannan Tibetan Autonomous Prefecture)臨潭県(Lintan)が古くから「洮州」と呼ばれていることが由来。洮州の人々は数百年前から、現在の青海省や四川省(Sichuan)、チベット自治区(Tibet Autonomous Region)で店を開いたり商品を売ったりしてきたという。
祖父の代までは他の商品とともに冬虫夏草を買い付けていたが、丁さんは冬虫夏草の人気が高まっていることに着目し、冬虫夏草を専門とする貿易会社を設立。年間約1000キロを販売している。「冬虫夏草の大半は流通拠点である広州市(Guangzhou)に卸売りされ、沿岸部の都市や香港、マカオ(Macau)、台湾で小売りされる」という。
最近盛んなのは、インターネットのライブ中継販売だ。「多くの商品を売っているインフルエンサーにライブ販売を依頼し、私たちは冬虫夏草の乾燥や梱包作業を視聴者にアピールする。利益はインフルエンサーと分配している」という。
最近は人工栽培の冬虫夏草も市場に出回り始めている。青海省の研究チームによると、冬虫夏草の需要は世界的に増え続けており、10年以内に人工栽培は大規模なレベルに達して農家や牧畜民の収入がさらに増えると予想される。
丁さんは「人工栽培の冬虫夏草は大きいが軽いので、野生との違いは一目で分かる。野生の希少性は変わらないため、冬虫夏草市場に大きな影響はないと考えている」とみている。(c)CNS/JCM/AFPBB News
※AFPBB Newsの2021年7月21日の記事(https://www.afpbb.com/articles/-/3357790)より抜粋
希少価値が高く、中国の農家の貴重な収益源になっていることがわかります。
また、最近の冬虫夏草に対する世界的なニーズが高まっているという情報を見ると、10年後、20年後の世界全体のハーブマーケットの成長度合いも楽しみです。
【青海省】