今年7月に、「軟らかい黄金」と呼ばれる生薬として価値の高い”冬虫夏草”(とうちゅうかそう)についての記事を取り上げました。
【過去記事:「軟らかい黄金」冬虫夏草の中国青海省におけるマーケット状況】(2021年7月22日)
☝の記事の中で、中国内で6割以上の生産量を誇る青海省の冬虫夏草マーケットに関する興味深い情報が記載されています。
今日はその後のアップデート版にあたる情報を取り上げたいと思います。
中国で紀元前から重宝される「秘薬」 冬虫夏草の調査、人工栽培進む
【12月11日 東方新報】中国で長年、漢方の生薬や薬膳料理に使われてきた「冬虫夏草(とうちゅうかそう)」。近年は乱獲による減少や偽物の流通などの問題があり、関係者が対策に取り組んでいる。
冬虫夏草はキノコの一種。地中の昆虫類の幼虫に冬虫夏草の菌が寄生し、菌糸から地上に子実体を作る。中国ではコウモリガの幼虫に寄生したものを冬虫夏草と呼ぶ。地中部は幼虫の外観のまま、地上に生えた部分は草のように見えるという不思議な形状から、チベット族の間で「冬は虫、夏は草に姿を変える」と言われ、この名がついた。
冬虫夏草は漢方医学では免疫増強、抗腫瘍、抗菌、止血、せき止め、気管支拡張、鎮静など多岐にわたる効能があり、「不老長寿(アンチエイジング)」「滋養強壮の秘薬」として時の皇帝ら身分の高い人々に重宝された。紀元前の秦・前漢時代に成立した中国最古の薬物書「神農本草経」に登場しており、2019年には江西省(Jiangxi)南昌市(Nanchang)にある前漢時代の諸侯、海昏侯劉賀(Liu He)の墓から大量の冬虫夏草が見つかっている。
グラム単位で、高値で取引される冬虫夏草は、チベット高原をはじめ海抜3000メートル級の高山地帯などに分布。厳しい自然の中で暮らす牧畜民や農民にとって貴重な収入源となり、「軟らかい金」と称される。中国の冬虫夏草の収穫量は世界の98%を占め、このうち青海省(Qinghai)が全体の60%強を占める。今年1~8月に青海省から国内外に出荷した総額は4781万8000元(約8億5198万円)に上る。
一方、近年は人気の高まりによる乱獲や環境破壊のため、資源の減少が心配されている。また、コウモリガ以外に寄生したものを冬虫夏草と称したり、形が似た植物で偽物を作ったりする問題も起きている。
青海省林草局は今年に入り、青海大学の冬虫夏草研究室に冬虫夏草の総量について調査を依頼。分布地域におけるコウモリガの幼虫の個体数、冬虫夏草の菌の侵入率などから、年間発生量は約2億~64億本と推定した。研究室の李玉玲(Li Yuling)教授は「総量を調べた初めての調査で、冬虫夏草の「埋蔵量」が豊富であることが分かった」と話す。
また、広東省(Guangdong)科学院動物研究所の資源昆虫・生物工学研究センターは冬虫夏草の人工栽培の研究を進めている。人工の冬虫夏草は安全性に問題がなく低酸素症に効果があることを確認。低地での人工栽培技術の確立を進めており、古くからの「秘薬」の安定供給に取り組んでいる。(c)東方新報/AFPBB News
※AFPBB Newsの2021年12月11日の記事(https://www.afpbb.com/articles/-/3380231)より抜粋
冬虫夏草の産業の全体図が捉えられる記事であり、個人的に重宝する情報です。
元々3000m級の高地に分布する冬虫夏草の低地での人工栽培技術が確立されることによって、中国以外での栽培比率も高まっていきそうです。
中国をじっくりと時間をかけて周るとしたら、チベット文化やモンゴル文化の伝統が入り混じる青海省への訪問は欠かせない気がしてきました。