昨日は、英国在住ハーバリスト リエコ・大島・バークレー先生(以下、大島先生)のハーブ講座を受講する為、朝5時に家を出発し、宮城県山元町へ行ってきました。
自宅の横浜から休憩込みで片道約5時間の道のりだったのですが、それだけの時間をかけても行く価値のあった内容でしたのでレポートさせて頂きます。
今回の講座は、大島先生がサポートメンバーとして関わっている”特定非営利活動法人ノワイヨノット ハーバルアーツ& Herbal Garden project”が推進している「鎮守の森ハーブガーデン」の横にある普門寺で開催されました。
今回の講座名は「ハーブとアロマのある暮らしを送りたい貴方に」で以下の構成でした。
一の巻 《育てる》
●原材料の草花から親しむ
✔︎種?苗? 園芸種と薬草種の違い
✔︎オーガニック・無農薬を選ぶ注意点
✔︎収穫から使用までの注意点二の巻 《知る/楽しむ》
● 個々のハーブを知る
✔︎多様なハーブの効能について
ハーブのプロフィールをじっくり学ぶ三の巻《活かす》
●適した選び方のポイント
✔︎飲む?食べる?塗る?使い方の奥義
✔︎目的とタイプのマッチング方法
(家庭&治療向け)
以下、大島先生が話されていたことで、私自身が大事だと感じたポイント、及び、今後掘り下げて研究していきたいと思ったポイントについて、記載していきます。
●ハーブを購入する際は、ハーブ園・ハーブショップの”オーナーがどのくらいハーブのことを知っているか”が大切。
⇒その背景は、日本のハーブ園では薬草的(メディカル用)に使う品種として相応しくないものが混ざっていることが非常に多いとのことです。
最低限、ハーブを買うときは「学名」が記載されているものを買うようにするのが大切。
「薬草的に使う品種の理解不足の現状が日本の課題」ともおっしゃっていて、英国で25年メディカルハーブを学ばれている大島先生の言葉には強い説得力がありました。この部分は私自身の課題でもあります。
因みに、イギリスでハーブを買う際、学名が記載されていないものはほぼ無いようです。
●オーガニックと謳われていても、ほぼ農薬が混ざってしまっているのが現状。
⇒ある農園が実際に有機栽培を行なっていたとしても、近隣の農園で農薬を使っているのならほぼ間違えなく空気を介して周辺に散乱してしまっているケースが多い。
”有機=農薬0”という視点は視野を狭めてしまうので、そういうもんなんだという現実を踏まえた上でハーブと接することが大切とのこと。
●イギリスでは薬草的にブルーマロウはほとんど使わない。一方で、イギリスで薬草的に使うマロウと言えば「マーシュマロウ」。
⇒大島先生がイギリスの学生時代に学んだ300種のメディカルハーブの中で、ブルーマロウは出てこなかったとのこと。レモングラスも含まれていなかったようです。
一方で、マーシュマロウはイギリスではかなりの頻度で薬草的に使うそうです。
マーシュマロウは、根や葉に粘液質が多く含まれ、根は特に消化器系、葉は泌尿器系と呼吸器系に使われるとの事。
●イギリスやフランスでは、ハーブがビニールに入って売られていることは稀で、ほとんどが紙パックで売られている
⇒大島先生の経験則でも、紙パックの方が品質の持ちが全然良いそうです。乾燥の観点や遮光の観点でも確かに合理的ですね。
以前、ハーブを通じてお伺いした女性のお宅で学んだことをレポートさせて頂いたことのがあるのですが、そのお宅では新聞紙にハーブを入れてドライにされていました。
【過去の参考記事:「ハーブを生活の中に取り入れ、楽しむ」の一つの形を、ある一人の女性から教わりました。】
●本に載っている情報というのはスタンダードな情報であり、同一品種であっても、土地の気候条件や季節(時期)によって、味・香り・効能に変化が出るという前提を把握しておく必要がある
⇒面白かったは、カモミールの香りの印象について会場の参加者に質問していったところ、全ての回答が異なっていました。
カモミールのいい香り(青りんごの香り)というのは、精油成分が残っているときの香りで、それが残っている時期に収穫するのが大事ということでした。
そのような時期的な要素にプラスして気候条件の違いも変化を生じさせる要素として取り上げていました。
同じ日本の中でも、熊本と宮城のハーブ園のカモミールの成分や味というのは微妙に違うはずという話もあり、私も恐らくそうだろうなと同意できました。
大島先生は、カモミールの効能の話だけで丸一日あっても時間が足りないくらい話せるということをおっしゃられていましたので、次回、大島先生のカモミール講座を開いて欲しいなと思いました。カモミールの特訓講座的な感じでビシバシしごいて欲しいです。。(すみません、ちょっと話の方向性が変わりそうですので次に行きます)
●効能を知識ではなく「身体で覚える」ことが大切
⇒大島先生の講座ではよく、ハーブティーのブラインドテイスティングを行なうそうです。
その理由は、人びとは、「これはリラックス効果の高いカモミールティーです」と出されて飲むと、だいたい「わあ~、とってもリラックスする~」という反応なのですが、事前にカモミールティーということを知らされないでどう感じるかを問うと「あれ、なんだろ、あれ」という反応になるそうです。
如何にアタマ(知識)を使って飲んでいるかの現れを示す例ですね。
なんのハーブかを知らされないで、「あ、これ神経が緩む」とか「あ、胃腸にやさしく働いてる」とか身体で感じ取ることで、ハーブの効能を本当の意味で楽しんでいくことができるとのことです。
私自身、平均して3杯~5杯くらいハーブティーを一日に飲んでいるのですが、違いを身体で確認する行為を自然に行なえてきている実感があるので、近い将来、飲んだだけで体内のどの部位にどのような形で働きかけているのかについて人に説明できるレベルへ到達したいという密かな願望が沸いてきました。
●「自分に合っているかどうか」という視点が最も大切
⇒たまに、「チンキ剤の方がハーブティーよりも有効成分が抽出されているから、私の症状を改善させる上で、チンキ剤の方がいいですよね?」と聞いてくる患者がいるとのことです。
でも、その人自身がアルコールの味があまり好きじゃない場合は、ハーブティーとして継続して飲んだ方がいい場合もあるので、最終的には本人の感覚を重視することが大切。
●ハーブの姿・色・形といった外見やその生育環境、そして味などの特徴表示から、ハーブの薬効を示している場合がある。(特徴表示説)
⇒これは目から鱗でした。これについては後日、別記事で取り上げます。
(例)ヤローの葉はノコギリのような形⇒切り傷に効く など
●最近は、精油の抽出法において「二酸化炭素(CO2)抽出法」というのが誕生している
⇒会場で、水蒸気蒸留法で抽出されたカモミール精油の香りと、二酸化炭素(CO2)抽出法で抽出したカモミール精油の香りを比較したのですが、後者の方が圧倒的に良い香りでした。今後、市場に広く出回ってきそうです。
以上の内容でもわかると思いますが、大島先生はハーブを多面的な視点で常に捉えており、ニュートラルな形で広い情報にリーチしつつ、日々の診察の中で発生する事象を深く考察しているので、全ての言葉に厚みがあります。
今後もメディカルハーブ分野における、様々な視点を大島先生から教わっていきたいと思います。
今回の大島先生の講座をはじめて受講したことで、自分自身の視野もグッと開けた感覚がありますので、今後のハーバルライフにおける大きな資産となりました。
以下は、大島先生の新刊本です。
以下、大島先生が持参していた本です。