私がInstagram上でフォローしているアカウントで、いつも魅力的なハーブクラフト作りの光景をアップされている方がいます。(以下)
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写真から伝わる雰囲気(人・場所)がとても良く、いつも癒されています。この投稿者は、新潟の「ハーブランドシーズン」というハーブ園のオーナーであることは知っていたのですが、どのようなハーブ園なのかを調べたことがありませんでした。
今日は、そのハーブ園の魅力が伝わる記事を取り上げたいと思います。
「私の庭・私の暮らし」 佐潟の自然の中でハーブの魅力を伝える 新潟〈ハーブランドシーズン〉
広々とした青い空に、濃淡の緑、そして、ちらりと覗く静かな湖面。そんな美しい景色を望むハーブ園〈ハーブランドシーズン〉は、新潟県新潟市の佐潟(さかた)と呼ばれる、自然豊かな湖のほとりにあります。園を切り盛りする代表の永嶋節子さんは、新潟の自然に根差して生きる、素敵な女性。自らが感じ取り、学んできたハーブの力を、多くの人に伝えています。
目次
水辺を見下ろす素晴らしいロケーション
ハーブランドシーズンの建物は、佐潟(さかた)の水辺を見下ろす傾斜地に建っています。高低差があるおかげで、テラスからの見晴らしは最高。電線などの一切ない、開放感あふれる景色を一望することができます。
赤いポピーの咲く6月の景色。
野鳥の宝庫、佐潟。
佐潟は国内最大の砂丘湖。砂丘と砂丘に挟まれたくぼ地に湧き水が溜まってできたという、国内でも珍しい成り立ちの淡水湖です。佐潟は昔から、人々の生活と共にある水辺として活用されてきました。今では希少な植物も残るこの一帯を守るため、地域の人々は環境保全に努めています。この湿地は、水鳥の生息地を守る「ラムサール条約」に登録され、野鳥の宝庫として知られます。200種を超える野鳥を観察することができ、コハクチョウやマガモといった、渡り鳥の越冬地としても有名です。
遊歩道に面した入り口。
ハーブランドシーズンは、その佐潟を一周する遊歩道に面した、ナチュラルな雰囲気のハーブ園で、2002年にオープンしました。広々とした敷地には、ハーブ、草花、野菜、果樹、樹木など、100種を超えるさまざまな植物が健やかに茂り、鳥のさえずりが絶えません。
5月末のカモミール、7月のラベンダー、盛夏のハス、晩夏のレモングラスと、園内の景色は変わり続け、季節ごとの楽しみをもたらします。
無農薬ハーブを使った充実の講座
永嶋節子さん。写真/ハーブランドシーズン
佐潟の近くで育った永嶋さんは、結婚を機に農業に携わり、その後、ハーブの道に進むようになりました。園内を足取り軽く歩き回って、「この植物はね、こうなのよ」と次々に教えてくれる様は、まるでハーブを知り尽くしたチャーミングな魔法使いのよう。採れたてのハーブをたっぷり使った体験講座で、ハーブのあれこれをとことん学ばせてくれます。
テラスで生徒さんと。写真/ハーブランドシーズン
園内のハーブや植物は、すべて無農薬で栽培するというのが、永嶋さんのポリシー。その安心なハーブを使って、ハーブティー体験や花摘み、ハーブのコスメ作りといった体験講座を提供しています。また、ハーブを使った料理や薬膳、つるカゴなどのクラフト制作、植物を使った染め物など、いろいろな角度から植物について深く学ぶ講座も、多々行っています。
さまざまな植物がおおらかに育つ園内
建物の前に広がる斜面は、色とりどりの草花が植わり、お花畑のような雰囲気です。訪れた6月上旬は、カモミールの刈り取りがほぼ終わったところで、赤いポピーの野原となっていました。この後、夏に向けてセンニチコウが生えてきます。カモミールは、こぼれ種でまた来年生えるそう。
ミカン科のルー(ヘンルーダ)とタチアオイ。
佐潟のほとりはスイカの産地として知られる砂丘で、園内はどこもさらさらとした砂地です。佐潟から吹く風が通り抜ける、日当たりのよい乾燥した砂地の斜面に、ハーブを中心としたたくさんの草花が元気に育ちます。
左上から時計回りに、フレンチラベンダー、カモミール、クローブピンク、コバンソウとマンテマ。
草花は時に、意図していない場所にこぼれ種で生えてくることがあります。土地が広いこともありますが、永嶋さんはそんな時でもあまり気にしません。植物に「君がここにいる意味があるかな?」と問いかけ、どうしても違うと感じた時は、移動してもらいます。
マロウの花は、乾燥させてハーブティーに。
クワ(マルベリー)やジューンベリーなどの果樹も、ところどころに植えられています。クワの中でも、昔からある、葉を蚕に与える品種は小粒の実をつけますが、最近の人気は大粒の実をつける品種です。クワの実はケーキに添えるなどして使いますが、収穫が追い付かず落下することもしばしば。地面に落ちた実は染め物に使っています。
昔からのクワ(右)は葉が大きく、実は小粒。近年流行のマルベリー(左)は、葉は小さいけれど実が大粒です。園内にはアンズなどの果樹もありますが、鳥が食べるのが先か、人が食べるのが先かという競争になるそう。野鳥の宝庫ならではの悩みです。
敷地を縁取る木々
佐潟に面する側にはいろいろな樹木が茂っています。これは大きなクルミの木。実と葉、枝を染め物に使います。
中央がクルミの実。
鳥がクルミの実を運んで、思わぬところに芽を出してしまうこともあります。クルミは強い樹木で、そうなると困ったことになるので、気を付けています。
これは杜仲(とちゅう)の木。20年前に植えたのですが、ご本人は近年まですっかり忘れてしまっていて、知人によって発見されたのだとか。杜仲の葉は、割くと粘り気のある糸を引きます。煎って、杜仲茶にしていただきます。
紫の煙のような花が目を引くスモークツリーも大きく育っています。
ここに並ぶのはヤマザクラ。4月の終わりの花盛りには、ここで一服。素晴らしい時間を楽しめます。
ヤマザクラのサクランボ。
健やかに茂る和洋のハーブ
日陰の一角には、ミョウガと、鳥が実を運んできたというサンショウの木があります。
これはハマボウフウ(浜防風)という珍しいもので、海岸の砂地に生えるセリ科の植物です。新芽をおひたしにして食べますが、香りはセリとイタリアンパセリをミックスしたよう。ハマボウフウの根は漢方薬としても使われています。
ハウスの中には、挿し木したラベンダーや、種まきしたバジルなど、おなじみのハーブがありました。ボランティアの方々に手伝ってもらって挿し木したラベンダーの数は、なんと2,000本。それらは病院など、必要とされる場所に、無償で提供しているそうです。
「私の次の夢は蒸留小屋を建てること」と言う永嶋さん。そのためにも、もっとラベンダーの苗を増やして準備していきたいと考えています。
永嶋さんは、カモミール、ローズ、ラベンダーなどを蒸留して作ったハーブウォーターを、化粧水として使っています。季節ごとに変わるフレッシュな化粧水を使うのは、本当の贅沢といえるでしょう。
バジル畑には、よく見ると日除けがしてあります。バジルは太陽を浴びると、酵素の働きで苦味が強くなってしまいます。バジルペースト用に育てるには、間隔を詰めて植え、遮光します。すると、葉が柔らかくなって美味しくなるそう。
これはルバーブのタネ。植物はできるだけ、自家採種して育てるようにしています。生徒さんにも、花の後、タネになるまでを学んでもらいます。「タネにエネルギーを感じる」と、永嶋さん。いろいろなタネだけを合わせた、タネのブーケを作るのも好きです。
ハウスの中にはレモンの木もあって、300個ほどの実が付きます。新潟産レモンをつくるのも、永嶋さんの夢の一つ。ここにはライムとベルガモットの木もありますが、それらの花(ネロリ)の蒸留にも挑戦したいと思っています。
レモンの青い実。
建物の裏手には、立派なローズマリーの畑があります。永嶋さんはいつも、大きな枝を5本ほど、車のダッシュボードの上に置いています。効果抜群の、天然の消臭剤です。車の中に入れておくと、夏場はあっという間に乾燥してドライハーブになるそうで、一石二鳥です。
四角い枠の小さな畑は、年間の講座を受講する生徒さんに一枠ずつ貸し出しているものです。バジル、エキナセア、レモングラス、ローズゼラニウム、ラベンダー、スイスチャード、コモンマロウ、コモンセージといったハーブ類から、好きな植物を選んで、育ててもらいます。
ヒラタケ菌で土の改良
ハーブ園の一角には、ヒラタケを栽培する農家さんから譲ってもらった、使用後のヒラタケの菌床が積まれています。農学博士にお墨付きをもらったよい菌ということで、もみ殻と合わせてから、堆肥に混ぜて使っています。英国のガーデニングでいうところの、マッシュルーム・コンポスト(マッシュルームの菌床)と似た仕組みの土壌改良です。園内はどこも砂地で、チッソ系の栄養素をどれだけ入れてもすぐに流れてしまうので、堆肥を入れすぎるという心配はないそうです。
冬になると、この山には自然とヒラタケが生えてきます。すると、生徒さんたちは「本物の『きのこの山』だ!」と喜び、きのこ狩りに勤しみます。ちなみにヒラタケは、バジルペーストと和えると美味しいそう。
お話を伺いながらハーブ園をぐるりと一周。色とりどりの収穫です。
人生を変えたハーブとの出合い
園内のハーブや野菜を使った料理やお菓子を習うことができます。
永嶋さんがハーブに興味を持ったきっかけは、80年代にハーブを広めた園芸家、広田靚子(ひろたせいこ)さんのラジオ番組でした。広田さんの、日曜日の朝は庭の野菜やハーブを摘んで、たくさんのカモミールを入れたお風呂にゆっくり浸かります…という言葉に、永嶋さんは、まあ、なんて素敵な生活なのだろう、と驚きます。当時、農業に就いて、息つく暇もないほどの忙しい日々を送っていた永嶋さんにとって、それは夢のような生活に思えました。が、広田さんの優しい語り口に背中を押され、自分もやってみようと思い立ったのです。
特製ブレンドのハーブティー。
『赤毛のアン』や『大草原の小さな家』などが好きだった永嶋さんは、お話に出てくる、カモミールやローズマリーといったハーブの存在に惹かれていました。しかし、当時はまだまだ珍しく、わざわざ探しに行って手に入れたローズマリーを料理に使っても、さじ加減が分からなくて、家族に不評を買うこともありました。まったく手探りのスタートでした。
園内の恵みを使ってお菓子。
そんな折、義理のお母様が体調を崩され、永嶋さんは少しでも助けになればと、ラベンダーを育て始めます。また、持病を持つお祖母様に、育てたカモミールを入れたお風呂をすすめ、「このお花のお風呂に入るとよく眠れる」と、受け入れられたことも励みになりました。そうやって少しずつ、心身の不調を和らげるハーブの力を感じるようになっていきました。
天井から下がるドライハーブやドライフラワー。 永嶋さん自身、忙しい一日の終わりに小さなハーブ畑に寄ると、疲れた気分がリセットされて笑顔が戻り、癒やされることに気がつきました。「香りってすごいな」と、人を元気にするハーブの力を実感したのです。そして、NPO法人ジャパンハーブソサエティ―(JHS)認定上級インストラクターの資格取得を機に、ハーブの道に本格的に進むことを決めたのでした。カモミールの「逆境のエネルギー」という花言葉が好きだという永嶋さん。人生に力を与えてくれるハーブの魅力をさらに広めようと、次の夢に向かっています。
Information
ハーブランドシーズン
〒950-2261 新潟県新潟市西区赤塚5073番地
TEL/FAX: 025-239-3288開園時間: 9:00~18:00 (冬期は17:00)
定休日:毎週水曜日Credit
取材&文/ 萩尾昌美 (Masami Hagio)
早稲田大学第一文学部英文学専修卒業。ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。20代の頃、ロンドンで働き、暮らすうちに、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するように。神奈川生まれ、2児の母。
写真/3and garden※GardenStoryの2019年11月15日の記事(https://gardenstory.jp/gardens-shops/35333)より抜粋
オーナーの永嶋さんの想い、夢、そして、写真から伝わる人柄。。。「ハーブランドシーズン」へすぐに行ってみたいという気持ちにさせてくれます。
新潟県と言えば、以前、耕作放棄地でラベンダーを育てる取り組みが広がっていることを紹介した記事を取り上げたことがあります。
【過去記事:新潟県において、耕作放棄地を活用し、無農薬でラベンダーを育てる取り組みが広がっているようです。】(2019年12月22日)
また、十日町市(新潟)の魅力的なハーブスポットについても取り上げたことがあります。
【過去記事:ハーブの香りを巡る旅レポートを見て、「新潟県・十日町市」に魅力を感じました。】(2020年10月2日)
最近、新潟県が自分の中でホットな場所になりつつあります。
引き続き、新潟県の情報にアンテナを張っていきたいと思います。