香りのプロフェッショナル2人の対談から見える「香りとの付き合い方、楽しみ方」

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過去に本ブログでは、「香りの心身に対する有効性」に関する記事を取り上げてきました。(以下に一部を記載します)

【過去の関連記事:「紅茶の香り」の睡眠に対する有効性確認試験の結果について】(2019年8月23日)

【過去の関連記事:ほぼ北海道内だけに分布する『トドマツ』の香りの有効性に注目が集まっているようです。】(2020年8月20日)

【過去の関連記事:在宅ワークの効率UPに役立つ【集中力&リラックスを同時に得られる香り】に関する実験について】(2020年4月15日)

【過去の関連記事:「脳のストレス」と「免疫力」の関係。ベルガモットの免疫力アップ効果の相対的な持続性の高さに驚きました。】(2019年12月21日)

【過去の関連記事:ローズマリーの香りはなぜ記憶の維持に効果を発揮するのか?】(2019年5月29日)

【過去の関連記事:ラベンダー精油が心身に与える”科学的に証明された”8つの効果をシンプルにまとめた記事について】(2019年5月21日)

【過去の関連記事:「精油の嗅覚刺激により、テストステロン(男性ホルモン)の分泌量が増加」AEAJと長崎大学の共同研究】(2019年4月24日)

【過去の関連記事:「ジャスミンの香りの鎮静効果」について実験したドイツの研究について】(2019年1月11日)

もし自分の大好きな香りが、科学的エビデンスとしてある効能が実証された場合は、嬉しい気持ちになります。これからの社会において、”香りと人間との関わり”はもっともっと密接になると思いますので、香りに関するデータは増加していくと思います。

また別の切り口で、”心療内科医”と”公認心理師”が「香りが心身にもたらす効果」がテーマに話し合う記事を先日ご紹介しましたが、香りに対する認識の違いと共通点がとても面白かったです。

【過去の参考記事:「香りが心身にもたらす効果」について語った”心療内科医”と”公認心理師”の対談】(2020年9月26日)

この対談をきっかけに、香りを扱う様々な領域のプロフェッショナルの香りの捉え方に大きな興味が沸いてきました。今日は、”香りスタイリスト” と、”ヘア&メイクアップアーティスト”が、香りの楽しみ方について語った記事を取り上げます。

「香り」が心の支えになることもある。【杏 喜子さん×草場妙子さん 対談】

先が見通しにくい世の中で、目に見えない「香り」が心の支えになることもある。そんな香りの楽しみ方を香り使いの達人ふたりに聞いた。

撮影・MEGUMI 文・入江信子

生きることと直結しないけれども、心や気分を豊かにしてくれますね。(杏さん)

香りは精神に影響を与えるもの。それが回り回って健康につながる。(草場さん)

(左)杏さん 香りスタイリスト (右) 草場妙子さん ヘア&メイクアップアーティスト

自然な素材を操り、人の心に訴えかけるフレグランスをつくり続ける、杏喜子さん。その人自身の「肌の香り」から「香りのスキンタイプ」を見極め、フレグランスを選ぶというカウンセリングメソッドはユニークそのものだ。一方、ヘア&メイクアップアーティストとして活躍しながら、ボディケア製品もプロデュースした草場妙子さんは、日常生活における香りの力を知り尽くした人。その香り使いとは……?

杏喜子さん(以下、杏) 草場さんは、昔からフレグランスがお好きだったんですか。

草場妙子さん(以下、草場) 好きではあるんですけれど、自分自身を香らせるという習慣があまりなくて。日常のアイテム、シャンプーやボディケアなどを使うときに、いい香り、気に入った香りに包まれるというのは好きですが、後にずっと残したいかといわれるとそうじゃない。スーッとフェイドアウトしていくのが心地いいなあと。

杏 私も家の中ではいっしょです。たとえばディフューザーで、ずっと同じテンションで同じ精油を香らせていると、脳が疲れるし、慣れて耐性ができて、香りが効かなくなっていくんですね。アロマテラピーは瞬間の香りを瞬間的に効かせるためのもので、消えてなくなっていかないとダメなんです。

草場 なるほど。私は仕事の日は、ルームスプレーを持参して、メイクを始める前に必ずひと吹きするようにしています。するとほかのスタッフの方も、「いい匂いがしますね」って。空間をクリーンにしたいと思って使っているのですが、その清涼感というのはみなさんにも伝わるみたいで。

杏 喜子(あんず・よしこ)さん●香りスタイリスト。調香師・ダウン氏との出会いを機に、自身がブランディングする「DAWN Perfume」を日本で展開。香りのカウンセリングも行う。

天然香料を主とした洗練された香りの「DAWN Perfume」。新作「オードパルファム アメ」はルバーブが特徴。

杏 それはいい使い方ですね。草場さんは、ボディケアの香りをプロデュースされたそうですが。

草場 はい、「オサジ」というブランドとのコラボレーションなんです。

杏 (製品の香りを嗅ぐ)スッキリしていますが、ふくよかさも感じます。

草場 男女ともに使えることを意識した香りです。私はぜひセージを用いたいと思ったのですが、クセのある香料でもあるので、ローズマリー、ティーツリー、レモンなどをブレンドしました。でも柑橘系って強いんですね。少量入れただけでもすごく存在感が出る。

杏 柑橘系は分子の粒子が細かいから、インパクトが出ますね。

草場 配合によって香り方がまったく違ってくるし、本当に面白いです。

フレグランスは女性としての気分を盛り上げてくれるもの。

杏 暮らしの中の香りとは別に、私の場合、「素敵な女性は自分だけのフレグランスを持っているもの」という幼少期の刷り込みがありまして。小学生のとき、学校の図書室でココ・シャネルの伝記を読んだら、「香水をつけずに外に出るのは、下着をつけていないのと同じ」というような記述があったんですね。そして私も自分自身の、飽きずに1本使い続けられるフレグランスが欲しいと思うようになりました。結局見つからなくて、自分でつくり始めたんですけど……。今は、アロマテラピーは暮らしの一部として、気分の調整のために活用し、フレグランスは女性としての気分を盛り上げるというような使い分けをしています。

草場 気分を盛り上げる……私にとってのメイクですね。

杏 そうだと思います。装いの最後にひと匙、みたいな。草場さんは、スッキリした香りがお好きなんですよね?

草場 はい。自分の顔立ちとか容姿はどちらかというと、少し甘いほうに寄っていると思うんです。けれど、自分ではその路線ではいきたくなくて、ボーイッシュなファッションをしたり、キリッとしたメイクが好きだったりして、香りも甘いものはあまり欲していないかもしれません。

草場妙子(くさば・たえこ)さん●ヘア&メイクアップアーティスト。雑誌や広告、CMなどのヘアメイクで活躍。香りへの造詣も深い。著書に『TODAY’S MAKE-UP 今日のメイクは?』がある。

草場さんが香りをプロデュースした「オサジ ボディゲル -Kokyu-」。深呼吸したくなるような清々しい香り立ち。

杏 よく、自分がなりたい女性像を表現する香りと、似合う香りのどちらをつけたらいいかと聞かれるんですが、女性の場合、まず自分を喜ばせてあげることが大事だと思います。
草場さんだったら、キリッとでも、甘くても似合うキャラクターなんですけれども、ご自身の志向はキリッと路線だから、そちら系のフレグランスを選ぶようアドバイスします。
で、慣れてこられたら、またちょっと気分を変えるようなモードの香りを提案することが多いです。
脳はとてもだまされやすい臓器なので、抵抗感のないフレグランスから入門して、慣れてきたら初めのフレグランスと共通点があって、少しイメージの違うものを使うとなじみやすい。違う香りを使うと、一瞬にして気分を変えることができて便利です。

草場 自分の中で使い分けるのは楽しいですね。メイクでいうと、私は普段ベージュやブラウンを好んで使うんですが、たまにピンクをつけると、すごく心が躍るんですよ。

杏 わかる! リップ、チーク、さらに香りもなんとなく同じような位置にあって、血色感などと直結しているなあと。血色感抑えめでいきたい気分だったら、ブラウンのイメージの土っぽいアーシーな香りとか、ピンクを使いたい気分だったら、ほんのりと女性らしい、紅潮するような香りとか

この瞬間がキラキラしていられるような香りをまとう。

草場 初めてお会いしたのは、3年ほど前でしたっけ? 杏さんのブランド「ダウンパフューム」で香りのカウンセリングをしていただきました。

杏 そのときの診断では、草場さんの肌の香りは、かなり甘かったんですよね。スキンタイプでいうと「スイート」。

草場 香りのスキンタイプは年齢によって変わったりもするんですか?

杏 代謝リズムとホルモンバランスが関係しているので、変わる場合もあるんですけど、変わらない人も。もう一度、いいですか?(手首の香りを嗅ぐ) ああ、やっぱり「スイート」ですね。3年前にはカウンセリングの結果、ヒノキや白樺、ベルガモットを中心とした「ベジマット」というフレグランスをおすすめしたのを覚えています。

草場 今はどうでしょう?

杏 好きな色とか、目がいってしまう色ってありますか?

草場 メイクではイエローですね。

杏 これかなあ、「タージガーデン」。サフランとマリーゴールドの天然香料の色が濃くて、液の色が黄色いんですけれど、甘さのない樹脂に近い香りのマリーゴールドにジンジャーリリーという花の香りがミックスされていて。今の草場さんのイメージです。

草場 (嗅ぐ)わあ、百合っぽいいい香りが。でも、エレガントに香るのではなくて、凛としていますね。すごく好みです。

ジュエリーブランド「リニエ」のために「DAWN Perfume」が調香した「ホワイトネス」のミストとオイル。2品ともに、セージ好きな草場さんの愛用品でもあるそう。

ウッディ、ハーバル、ウォーターフローラル、グルマンなど幅広い香調が楽しめる「DAWN Perfume」のフレグランス。

杏 透明な明るさ、聡明な明るさがある、「ベジマット」と同じ「浄化」のシリーズのフレグランスです。

草場 「ベジマット」とブレンドしてもいいんですか?

杏 はい。ブレンドすると、視界をワイドに明るく照らしてくれる感じ。新しいことにチャレンジするときにもいいですし、同じ毎日でも、つければ少し視点が変わる。

草場 ちょうど、新しいことにチャレンジしたい気持ちなんです! スキンタイプとは別に、年代や気分で似合う香り、欲する香りは違ってくるものですか?

杏 はい。自分を振り返ってみても、10代、20代の頃は、背伸びして、大人っぽいフレグランスをつけていたような。若い人は大人っぽく見られたほうがうれしいし、背伸びしている感じも初々しくて可愛いんです。しかし、それをいつまでも続けていると、清潔感が失われて、「今ここに生きている感」が感じられなくなる。生きているっていうライブ感がない人、つまりちょっと古い人という印象になる。それはもったいないこと。やはり現在、この瞬間を受け止めて、生きているほうが素敵ですから。「過去の自分がいちばんキラキラしていた」と思うのではなく、女性はいくつになっても、今、キラキラしていてほしい。

夏に心地よい軽やかなウッディ系。静謐な空気感が漂う「ベジマット」と、グリーンや花々とウッディのハーモニー「タージガーデン」。

草場 メイクも同じで、今日、自分がするメイクを、ちゃんと自分で見極めて選んでいるかどうかというのが、重要だと思っています。時短メイクとか、目を大きく見せるメイクとか、いろいろありますけれど、そういうことだけではなくて、きちんと自分自身が選択したメイクをすることが、本当の意味でのメイクアップの楽しみにつながっていく。香りに対する考え方も、それに近いんではないかと。

杏 今は「装うこと」を省略する方向に世間がいってしまっているのかも。メイクがマスクで隠れちゃうというのもあるし。

草場 実は私、自宅待機期間以前は、恥ずかしながら、家の中ではほぼスッピンだったんですよ。それが心地よくて。でも、常にマスクをして外出するという状況になって、私、口紅が大好きなんですけれど、「いつどこで塗ればいいの?」って。同じ頃、家の中ですることはいっぱいあるのに、なにか手につかず、1日をロスしたというような日が続いて。そこで「形から入ってみれば……。そうだ、家の中でメイクしてみよう!」と思い立って、メイクを始めたら、シャキッとしました。

杏 フレグランスもそうですね。私も以前は、お出かけ前にまとい、家に帰ってきて、仕事は終わり、はい、リセットというときに違う香りをつけていたので、在宅期間は一体どのタイミングでつけようかと悩みました。けれど、ここは頭で考えずに、とにかくつけたいものをつけようと考えて、結局、「ベジマット」とルバーブの香りの「アメ」を1:1で重ねて、そればっかりに。

草場 きっと杏さんの心がその香りを欲していたんですね。

杏 そうなんです。モヤモヤを吹き飛ばしつつ明るい未来を思い描きたくて。

気分を盛り上げる、気分を変える。メイクとフレグランスには共通点が。(草場さん)

アンチ無香料。世の中に香りがなくなったら、本当につまらない。

草場 自分に似合うフレグランスは、どうすれば選べるんでしょうか?

杏 ある意味、メイクや洋服と同じだと思います。8割くらいはセオリーでセンスよく仕立てることができる。とはいえ、最後の2割は好み、遊びです。

草場 セオリーというのは?

杏 たとえば日本の夏は湿気が多いので、ザ・シトラス的な香りは案外うまく香らないんです。シトラスは空気中に水分がいっぱいあると、ヘンに苦味が出るんですね。

草場 面白い。

杏 同じ爽快感のあるフレグランスでも、グリーンフレッシュ、ハーバル、スッキリ系のウッディがいい。もしくはホワイトフローラル。ジンジャーリリーやネロリの香りが夏に合います。

草場 強く香らせたくないときは?

杏 ウエストから下にスプレーするといいですよ。間接的に香って、相手のほうにダイレクトにいかないから。

草場 知れば知るほど興味深い! 強い香りが苦手な私ですが、一方で、物を選ぶときに香りというものをすごく重要視していて、無香料のものには全然興味が湧かないんです(笑)。世の中に香りがなくなったら、本当につまらないと思います。

杏 なくても生きていけるけれど、心を豊かにしてくれるものですよね。最低限の衣食住のことだけ考えていると、ウキウキする気持ちが湧いてこなくなります。好きな音楽を聴くこととか、美味しいコーヒーを入れて飲むことと同じで、素敵な香りを手にすることで幸せな気分になる。

草場 健康に直結しなくても、精神に影響しますね。回り回って、それが健康につながっていく気がします。

杏 心と体に寄り添い、生き生きさせる、まさに人生のエッセンスです!

香りを選ぶときには、まず「自分自身を喜ばせること」を考えて。(杏さん)

『クロワッサン』1028号より

クロワッサンオンラインの2020年10月4日の記事(https://croissant-online.jp/life/131098/)より抜粋

女性独特の視点からの対談で非常に興味深いです。

このように香りを、『自分自身で選択をして、楽しんでいく』ことはとても重要な視点だと思います。

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