ちょうど2週間前くらい前に、今年4月にマレーシア・ペナン島で購入した商品で、初めて箱を開けたものがあります。(以下)
Sanqi Pian(田七片)という記載の意味をネットで調べてみると、生薬の「サンシチニンジン」(別名:田七人参)のタブレットであることがわかりました。
この「サンシチニンジン」について、私自身全く馴染みのない言葉でしたので、どのような植物なのか確認してみました。
【田七人参】
田七人参はウコギ科多年生草本で栽培は難しく、播種してから3年~7年後にやっと収穫できる。そのため三七と呼ばれている。葉は薬用の人参に似ているから参三七とも言うが普通には田七または田七人参という。
田七人参は外傷による止血、内出血の止血、傷の癒合、鎮痛などの効果を持っていることから「本草綱目」には「山漆」と記されている。田七が漆のように傷口を癒合させるという
意味である。田七人参は名薬であるため別名「不換金」ともいう。田七はその葉や味が人参に似て、甘く渋みがあり、薬性が穏やかで、毒性がない。
成分はパナックスジオール、パナックストリオール、鉄分、カルシウム、蛋白質、糖分を含み、吐血、鼻血、血便、子宮出血、産後の出血、打撲症、鬱血、腫脹などに優れた効果を発揮する。また鶏、豚、牛、羊などの肉と一緒に煮込むとその味が濃厚になり、薬効が持続し滋養強壮剤としての働きもある。年令に関係なく食べることができる。また病後や産後の婦人が食べると短期に健康を取り戻す。老人や虚弱者の補血、保温の効果があり子供の成長促進にも良い。田七は特産地中国雲南省、標高2100mの耕地で栽培され、気候の変化に著しく影響され夏季の気温が33℃以上になってはいけないし、冬季の気温が、-2~3℃以下に下がっても枯死寸前になるという。このため水はけの良い南向きの丘陵地が適地となる。
収穫が終わると10年は休耕地にする。10cm×15cm四方に一株の種を播き、一年目に全て植え替える。薬用人参と同じく直射日光を嫌うので、カヤで畑の全面を覆うように日よけを作る。日よけは3割の日照、7割の日陰になるよう組む。この加減がノウハウらしい。葉、種、茎も薬用になるが、もっぱら根が繁用される。【薬用植物事典より抜粋】
原植物:
学名はPanax pseudo-ginsengであったが、雲南植物研究所の人参属植物に関する研究ではP.noto-ginseng F.H.Chenとすべきという。主治:
すべての血症・挫創・打撲症・瘡傷を治しオケツを散じ、止血し、腫脹を去り、痛みを鎮める。吐血・衄血・婦女崩漏(子宮出血)・産後オケツ・腹痛に用いる。(内服・外用)滋養強壮作用もある。外傷出血に粉末を患部につけても良い。挫創・打撲には白湯また酒で服用する。腫瘍の初期には等量の大黄末と酢を練って塗布する。挫創・打撲傷・内臓の痛みには外用内服とも効果が早い。料理には田七をラードや植物油で黄色に揚げたあと、砕くか蒸して軟らかくし、薄片に切って鶏・豚肉と煮て食べる。補血の効果がある。鍋物や煮物に粉末を直接入れても良い。
用量:
狭心症、コレステロール血症:1日3回 1回1g
吐血・衄血、便血、産後血暈:無名腫痛、1日2回 1回3~5g
不出血の跌打損傷:1日2回 1回3~5g
外傷出血:患部に外用
スープ:5~10g禁忌:
妊婦、風邪の高熱時。酸味で冷たいものとの同時服用。
一説には刺身などの生ものとの同時服用も注意。【田七の薬理実験報告】
主に心血管系を中心とした実験(抄)冠状動脈の血流量増加作用:田七をイヌに投与して実験したところ、冠血管が拡張し、冠血管の抵抗が低下するため、血流量が増加した。それにより心筋の虚血状態が改善される。また心搏数が減少、血圧低下、心筋の酸素消費量低下。
肥満減少作用:ウサギを使った実験で普通食に田七を加えると、肥満を減少させる効果が顕著に現れた。肥満減少とは脂肪を低下させること。太っている人が田七を服用すれば体重を軽減できかも知れない。
高脂血症低下作用:高脂血症になると、1)血液の凝固 2)繊維蛋白の溶解抑制 3)赤血球の凝集 4)心筋の血液の凝集 5)血管の硬化など起こりやすくなり心血管疾患を引き起こすことになる。2群のウサギに脂肪食を与え、うち1群には田七を与え6週間観察の結果。田七を与えた群のウサギは体重の増加もなく、コレステロール、グリセロール値ともに低くなっていた。
【寸評】
これだけの効能・効果を列挙すれば、まさに万能薬と錯覚するくらいである。確かに効能から類推、応用できる範囲は広い。副作用も殆ど気にせず使えるし、服用すれば一定の満足感は得られる。しかし、万病の薬ではない、また魔法の薬でもない。田七は肝臓病の中成薬として知られる片仔廣の主成分として有名になった。漫然と、得体の知れないものを健康維持として服むくらいなら、田七をお勧めしたい。
田七は心臓に対する働きや、痛み、出血に対する効果に優れている。このあたりの役割を見据えて使うべきであろう。ここのところ田七の知名度は向上し、色んなところで色んな人の手で販売されている。このことは温心堂webページでも何回か取り上げているが、高価なものが多すぎる。単位グラムあたりの有効成分の含有量が多いといってそれを高級・高価とする位なら、安いものを多量にのんだほうが安価で有効成分も多く摂収できる。それよりそんな高級品が、本当に豊富に存在するのかどうか疑問である。
私は田七が話題になるず~っと前から、医薬品製造・販売業の許可のある問屋から購入しているが、いまだかつて「幻の雲南田七を入荷しました。」などという話は聞いたことがない。いま扱っているもので量を加減したり、他の生薬との配合を工夫し使っている。田七だけしかなければ、何にでも田七を販売してしまうのだろう。「田七を服んで腹痛が起った。ならばそれも田七で治しましょう。」などというお笑い話もある。
服みやすい、持ち運びに便利というだけで高価なもの、広告や箱が豪華なものが果たしてそれだけの価値があるのか疑問である。しかし薬は高価でないと効かないと信じる人が居る。「安くて.. 」と言い始めたとたん。「金のことは言うな!」とお叱りを受けたこともある。少なくともまとめて数ヶ月分、数年分、そして値引率○○%等という田七は、健康を標榜するマネーゲームに過ぎない。体調や効果を確認しながら、時に薬を変え分量や服用法を考えながら健康を維持してゆかねばならない。良識を以て常識的な価格の田七であれば、いい薬草だと思うのだが。
※生薬解説10選の田七人参の説明(http://ww7.tiki.ne.jp/~onshin/denhich.htm)より抜粋
説明を読む限り、主に血液に絡む症状に効果を発揮し、且つ、非常に穏やかな薬という印象です。ただ、育てるのは結構難しそうな生薬です。
冒頭の、Sanqi Pian(田七片)【サンシチニンジンのタブレット】を飲んだ時の感覚も同様で、優しい薬という印象でした。「●●ニンジン」という名前を生薬のカテゴリーの中で聞くと強い薬という印象を持ってしまいますが、これは違いました。
このサンシチニンジンの主な産地となっている中国・雲南省で、”サンシチニンジンの栽培がエコ農業の代名詞になっている”という記事を先日見ました。
記事の内容自体はシンプルなのですが、好奇心の湧く内容だったのでご紹介したいと思います。
サンシチニンジンがエコ農業の新たな代名詞に 雲南省石林県
【新華社昆明12月3日】中国雲南省は生薬サンシチニンジンの主な産地として知られ、同省産サンシチニンジンは有名な中医薬「雲南白薬」の主要成分にもなっている。石林イ族自治県ではサンシチニンジン産業の発展に注力しており、県内の杏林大観園健康産業集団では、残留農薬や重金属が基準値を上回らないように、サンシチニンジンのパイプ水耕栽培を行っている。同県では現在、サンシチニンジン栽培の他、生薬エコ栽培観賞拠点を発展させ、サンシチニンジンを使った薬膳料理などの関連産業チェーンを開発しており、雲南産サンシチニンジンが同県エコ農業の新たな代名詞となっている。
11月28日、水耕栽培したサンシチニンジンの生育状況を確認する杏林大観園健康産業集団のスタッフ。(昆明=新華社記者/謝剣飛)
11月28日、杏林大観園健康産業集団で水耕栽培されたサンシチニンジン。(昆明=新華社記者/胡超)
11月28日、杏林大観園中医文化展覧館に展示されたサンシチニンジン。(昆明=新華社記者/張愛林)
11月28日、杏林大観園中医文化展覧館で中医薬の原料を見学する観光客。(昆明=新華社記者/馬平)
11月28日、サンシチニンジンをつぶす方法を説明する杏林大観園中医文化展覧館のスタッフ。(昆明=新華社記者/薛宇舸)
11月28日、雲南省石林イ族自治県の黒石箐薬材生態園で生薬のツルソバを触る観光客。(昆明=新華社記者/杜哲宇)
11月28日、杏林大観園中医文化展覧館で展示されたサンシチニンジン。(組み合わせ写真、昆明=新華社記者/韓旭)
11月28日、石林桜花峪薬膳公園で薬膳料理に使われるサンシチニンジンとその根。(昆明=新華社記者/蒲暁旭)
11月28日、サンシチニンジンを使った烏骨鶏スープを調理する石林桜花峪薬膳公園のシェフ。(昆明=新華社記者/孟麗静)
11月28日、サンシチニンジンを使った烏骨鶏スープを調理する石林桜花峪薬膳公園のシェフ。(昆明=新華社記者/劉大偉)
※新華社の2019年12月3日の記事(https://this.kiji.is/574512680114177121)より抜粋
雲南省へ興味は以前から非常に高いのですが、その理由は、たくさんの少数民族が住んでいるらしく、それぞれの民族がハーブを使った独自の食文化を持っているようで、珍しい料理が食べられることが少しずつ分かってきているからです。
※以下の本でも、そのことがわかります。圧倒的に雲南省発の料理が多いです。
上の記事を見ても、雲南省におけるサンシチニンジン栽培ビジネス事情意外にも、「杏林大観園中医文化展覧館」や「石林桜花峪薬膳公園」という場所の情報が出てきており、行ってみたいという気持ちが高まります。
雲南省の場所を見てみると、ミャンマーやラオスと隣り合っているということがわかります。東南アジアの国々と隣り合っているということも、中国の文化の影響を受けながら独自の文化を形成している要因になっているのではということが想像できます。
雲南省への興味がどんどん深まっています。