最近、「薬用植物栽培で連携協定 玄海町、県と国立研究法人」というニュースや、「横浜薬大と戸塚区が連携協力協定を締結」というニュースが立て続けに入ってきました。
そして、ハーブ絡みの「市町村」と「産・学」の協定について調べてみると、色々な範囲での連携の話が過去に存在することが分かりました。
IT業界でも、産・官・学で連携することで新しいテクノロジーを開発し、それを業界全体の発展に役立てるという動きをよく聞きます。
一番大事なのは、その連携によってどのような前進があったのかだと思います。
「薬草」という領域での協定で、具体的な成果としてどういうものが出てきているのかについて興味が沸いたので調べてみました。4つのケースを取り上げてみたいと思います。
①「茨城県水戸市」と「養命酒製造株式会社」の薬草を活用した官民協働事業
(締結時期)
2016年7月
(連携領域)
(1)薬草を通した新たな賑わいの創出に関すること。
(2)市の歴史と薬草への理解による,郷土愛及び健康意識の醸成に関すること。
(3)薬草文化の普及及び啓発を通じた市のイメージアップに関すること。
(4)薬草の産業化による地域経済の発展に関すること。
(5)水戸市植物公園の薬草園の整備及び維持管理に関すること。
【現時点の成果】
2017年4月29日に、「水戸 養命酒 薬用ハーブ園」オープン。
②「山梨県甲州市」と「新日本製薬株式会社」甘草栽培に関する連携協定
(締結時期)
2013年2月
(連携領域)
1、薬用植物の研究・開発、栽培技術確立等に向けた取り組みに関すること。
2、薬用植物の生産栽培組織の確保・育成及び生産栽培圃場の選定と確保並びに生産拡大や振興に不可欠な技術指導に関すること。
3、薬用植物の生産者及び地域産業事業者連携による6次化製品の研究・開発
及び販路の確保並びに薬用植物の地域内での観光産業等との連携による多面的利用促進による「甲州市甘草」のブランド推進に関すること。
4、甲州市甘草屋敷の三百有余年の歴史を背景として、甘草屋敷産甘草が育む地域伝統文化の継承と保護及び意識向上、啓発に関すること。
5、甘草の故郷としての甲州市甘草屋敷を文化的、学術的側面から全国への積極的な情報発信に関すること。
6、1から5を推進するための施設の整備及び人的資源の確保等に関すること。
【現時点の成果】
「甘草に関する(協定締結時から)現在までの状況」と「甲州市における甘草活用に関するQ&A」が、甲州市のホームページで詳細に見ることができます。
※協定後からの進捗をこんなに詳細にレポートしている市町村は他に見当たりませんでした。甲州市が本気で、「甘草」で町おこしする意気込みを感じます。
③「福島県平田村」と「奥羽大学薬学部」カンゾウなど薬草の共同研究
(締結時期)
2016年7月
(連携領域)
カンゾウなど薬草の平田村の土壌や気候に合った栽培法の共同研究
【現時点の成果】
2017年3月15日の福島民放で、途中経過が報告されています。
「薬草の村」で農業振興を カンゾウ栽培本格化へ
※積極的に取り組んでいる様子が伝わってきます。
④「大分県杵築市」、「公益社団法人東京生薬協会」、「国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所」の国際薬用植物の普及振興及び杵築市での産地化を図るための連携協定
(締結時期)
2015年7月
(連携領域)
キキョウなど薬草の杵築市の土壌や気候に合った栽培法の共同研究
【現時点の成果】
2017年5月23日の毎日新聞(地方版)で、途中経過が報告されています。
杵築市と東京生薬協会など連携、農高跡で 観光客向け農泊体験、薬膳料理 「生薬の里」目指す /大分
※着実に成果が出はじめている様子がわかります。
この4つの事例を見て思ったことは、各市町村ともにかなり本気で取り組んでいるということです。事業収益としていく目的意識の高さによるものだと思います。
そして、カンゾウやキキョウ等の漢方系に属する薬草栽培の話が多いです。上記4つのケース以外でも調べてみましたが、圧倒的に「カンゾウ(リコリス)」を地元で生産の軌道に乗せようとしている市町村が多いです。
現状、漢方薬の原料のほとんどを中国に頼っているため、価格変動リスクの吸収や品質のばらつきを無くすということに主眼が置かれているようです。
ネット上で、「薬草協定」というと漢方系の話がメインになるのですが、西洋ハーブに関する協定話も今後色々出てくるかもしれません。
例えば、生活の木さんと市町村の連携などです。
個人的には、観賞用としてのハーブ園だけではなく、生産用としてのハーブ園も増えてくれると嬉しいです。
「協定」という切り口で業界を見ていくことで、新たな発見も出てくるので、今後もこの動きについてはウォッチしていきたいと思います。