昨年は、本ブログの中でも、「オリーブで町興しをしよう」というオリーブ特産化の動きについて取り上げてきました。
幾つか取り上げてきましたが、対象の県は静岡県から南に限られていました。
オリーブと言うと、地中海沿岸や中近東が産地なので、栽培の条件としては比較的暖かい地域でなければ生育しにくいというイメージがあると思います。
ネット上を見ると、過去、日本におけるオリーブ栽培の北限は「茨城県」と言われていたそうです。
しかしながら、その常識を疑い、試験栽培を行ながら、東北地方でもオリーブが育つということを証明して、オリーブの特産化に向けて前進している地域が2つあることがわかりました。
その地域とは、『福島県いわき市』と『宮城県石巻市』です。それぞれの、特産化に向けての状況について取り上げたいと思います。
『福島県いわき市』については、2016年にはじめてオリーブオイルが商品化されています。
まずは、『福島県いわき市』の状況から。以下記事(2017年9月)の抜粋です。
オリーブの一大産地を目指すNPO理事長をリサーチせよ
松﨑 康弘さん
福島県 いわき市福島県を巡っているROAD 9のスマイルミッション。
金曜日の今朝ルーシーとプチェコが向かったのは、いわき市にあるオリーブ畑。
NPO法人いわきオリーブプロジェクト・代表の松﨑康弘さんにお話しを伺いました。みなさんはオリーブと聞いた時に暖かい所で作られるとイメージされる方、多いと思います。
オリーブは暖かな地中海地方原産といわれていて、世界一の生産国はスペイン。
日本では香川県の小豆島が産地として有名です。
オリーブは霜や凍結に弱いので日本の北の地域ではこれまで栽培されてきませんでしたが、
いわきでオリーブの一大産地を目指しているのが、いわきオリーブプロジェクトです。松﨑さんは2009年からオリーブの研究・栽培をはじめ、現在いわき市内の60ヶ所に12種類5000本のオリーブを栽培しています。
しかし最初は寒さに弱いオリーブの栽培に試行錯誤。
冬に霜が降りると小さい木は根を痛めるので、プラスチックのビニールを貼ったり囲ったりして育ててきました。
こうして現在ではオリーブの実の収穫が年間1.5トン。
オリーブオイルとしては130リットルを生産できるまでになりました。
現在、日本の最北限でオリーブオイルが生産している場所になります。
オリーブオイルが商品化されたのは去年(2016年)から。
その他、現在展開しているオリーブを使った商品は、オリーブの塩漬け、
オリーブの葉を使ったオリーブパスタ・オリーブ麺・お茶などです。
オリーブパスタは去年、ふくしまおいしい大賞2016・麺部門で優秀賞を受賞しています。松﨑さんがオリーブを栽培するきっかけになったのが、水産加工品で新しいことができないかと人に言われたこと。
その話しがきて、いわきでよく獲れるイワシを塩漬けにしてオリーブオイルに漬けたらアンチョビになるなと松﨑さんは思いつきました。
オリーブを栽培してまでやりはじめたのは、いわきの冬の空が青くすんでカラッとしていてスペインの空に似ていると思い、
これならオリーブができるのではと考えました。
こう思ったのは松﨑さんが以前にスペインやチュニジアに住んだことがあったから。今後松﨑さんたちが目指しているのは、いわきにオリーブの栽培地が広がりそれがオリーブの森になること。
オリーブの栽培をしている場所は元々、梨を育てていた耕作放棄地が中心。
いわきにはそういったところが300ヘクタールあるので、そこにオリーブ栽培を広げることができれば
日本の一大産地の小豆島を超えることができる。
それがこのプロジェクトに協力してくれた小豆島の方への恩返しにもなるのではと話してくれました。
また商品も少しずつ増やしていき、オリーブ栽培のきっかけになったアンチョビを作りたいとのこと。
来月の10月にはオリーブの収穫祭や祭典も開催。
“いわきのオリーブ”注目です!==================
「NPO法人いわきオリーブプロジェクト」についての詳しいこと、商品の注文などは下記HPから、
http://iwaki-olive.comさまざまな写真や様子が見られるHonda Smile Mission 番組Facebookページはこちら
http://www.facebook.com/HondaSmileMission
※東京FM放送 Honda Smile Missionのページ(2017年9月8日)より
産地の規模としては、香川県小豆島を超える野望を持っています。
”水産加工業者からの依頼”と、”松崎さんの直感力”で形になってきている『いわきオリーブプロジェクト』の今後の動きが非常に楽しみです。
続いて、『宮城県石巻市』の状況です。ちょうど昨日の記事から抜粋します。
北限オリーブの商品化前進 復興のシンボルとして石巻で栽培5年目、1500本超す
東日本大震災からの復興のシンボルとしてオリーブの特産化を目指す宮城県石巻市は2日、同市北上の津波被災地約2.6ヘクタールに苗木200本を植樹した。栽培は5年目に入り、今月中に商品化の最低ラインといわれる1500本を超える。農水産業や観光の振興、雇用創出への期待が膨らんでいる。
苗木は香川県産で樹齢3~4年、高さ約1メートル。約120人が作業し、国内最大の栽培面積を持つ農業生産法人「アライオリーブ」(香川県)の荒井信雅代表園主(58)が指導した。
北上地区には月内に今回を含めて1150本が植樹される予定。実がなるまで3年程度、本格的な収穫には5年ほどかかるという。
オリーブ栽培は市や復興庁、県、石巻専修大などでつくる「石巻市北限オリーブ研究会」が実証試験として取り組む。オリーブオイルなどの商品化を見据え、本年度は仙台三越が会員に加わった。
栽培地は北上、雄勝、河北、網地島の4地区。昨年までに計500本が植樹された。昨年は台風などの影響で生育が懸念されたが、網地島を除く3地区で計4.7キロの実が収穫された。
オリーブは中近東や地中海が産地で、国内は北関東が栽培の北限とされてきた。これまでの実証試験で寒冷地の東北でも越冬できることが分かった。2020年東京五輪・パラリンピックでは石巻産オリーブの冠をメダリストに贈る構想もある。
荒井代表園主は「オリーブは葉も魚や家畜の餌に使え、特産化すれば裾野の広い産業になる。復興支援のためにも事業を伸ばしてほしい」と話した。
※河北新報(2018年6月4日版)より抜粋
オリーブの本数の規模としては、福島県いわき市と比較してはまだ3分の1ではありますが、産業化のスタートラインに立っている状況です。
恐らく今秋からオリーブオイルの搾油が本格的に行われて商品が誕生するかもしれません。
日本全国へと広がりを見せるオリーブ特産化の動きは引き続き目が離せません。