今年の春先に、ホームセンターで初めてルー(ヘンルーダ)の苗を購入し、植えていました。食用には向いてないという情報は知っていたので、あまり面白味のないハーブという先入観がありました。
しかし、7月頭に、なんだかアンバランスな光景というか奇妙な光景を見ました。
まだ小さなルーに、2匹の大きなナミアゲハの幼虫がついていて、量的にはわずかしかない葉をむしゃむしゃ食べていたんです。
アゲハ系の幼虫はよくミカンの葉を食べることを知っていましたが、非常に苦いルー(ヘンルーダ)の葉を食べている光景は少し違和感を感じました。
この光景は一般的な光景なのだろうかと、「ルー アゲハ」でググってみますと、普通にアゲハの好むハーブとして紹介されていました。
しかも、ルーは「ミカン科」ということがわかりました。。
そう言われてしまうと、みかん科の葉を食べるのは自然のように思えるのですが、このルー(ヘンルーダ)の味は、とんでもない味です。ちょっと噛んだだけで舌の上を苦みが走り、強い香りが長時間口の中に残ります。
一方、庭の温州みかんの葉を噛んでみましたが、全く苦みはないです。
古代よりヨーロッパ各地で魔除け草として崇められ、どんな強い魔法も無力にする力があると信じられてきた理由がよくわかります。半端じゃないパワーです。
16世紀まで薬物書のバイブルとなっていた「マテリア・メディカ」の著者、ディオスコリデスは、ルー(ヘンルーダ)を「堕胎薬」として有効であると賞賛していたそうです。
パリの植物園では妊娠をした女がルー(ヘンルーダ)を盗まないように鉄の格子で保護されていたという記録もあるようです。
また、修道院では「性欲抑制剤」としても使われていたようです。
さらに16世紀には、ルー(ヘンルーダ)の助けで意中の女性をゲットできるとも言われているようです。
こんなことを言い出すと、このハーブについては本当にたくさんの逸話が出てくるのでこの辺にしておきます。
あと、ルー(ヘンルーダ)自体の植物特性として、他感作用(アレロパシー)が強いハーブで、周りには他の植物は育ちにくく寄せつけず、且つ、周りの植物を枯らしてしまうようです。
いまだに多くの地域で、死者にルー(ヘンルーダ)の冠を着せる風習があるようですが、オーストリアでは「死の薬草」と呼んでいて、棺の中の死者の胸の上に置くそうです。
この風習は悪い力を防ぎ、エーテル様油の殺菌性と保存作用による腐朽および分解を止めるためのもの、といわれているとのこと。
ルー(ヘンルーダ)の他感作用によってこのような風習が生まれたことは想像できます。
ハーブの特性を自分自身の心身でしっかりと感じる癖をつけると、今まであまり興味の沸かなかった神話上の内容とかにも目が向くようになって、ハーブの世界の奥の深さが理解できるようになる気がします。
最後に、冒頭に出てきたナミアゲハの幼虫ですが、一度手で取り除いて、ルー(ヘンルーダ)から50センチほど離れたところに逃がしたのですが、二度と同じところに戻ってくることはありませんでした。不思議です。