2018年7月に、以下の過去記事の中で、精油の香りが猫に及ぼす影響について取り上げたニュースを取り上げました。
【過去の参考記事:「猫とアロマ」の記事を読んで感じたこと】
その内容(↑の記事に記載あり)によると、猫は、完全な肉食で、植物を消化する酵素も能力もないため、植物由来の成分を代謝できない猫がエッセンシャルオイルを吸い込んでしまうと、吸気から一緒に入り込んだエッセンシャルオイルの香り物質が肺を通して血液内へと流れ込み、肝臓に行きついてしまう。
そこで代謝されず毒素として肝臓にため込まれてしまうことが、猫にとって危険と言われる理由だと書かれています。
また、猫が肝臓で代謝できない物質で良く知られているのは、
柑橘系の香りに含まれる「モノテルペン炭化水素類」
香辛料としても良く使われるクローブ・シナモン・オレガノ・バジルなどに含まれる「フェノール類」
スペアミント・セージ・キャラウェイといったハーブに含まれる「ケトン類」など。
とのこと。
たまに香りにあたる程度なら「猫が嫌がる」で済むらしいのですが、アロマディフューザーやお香などで空気中に充満させるといった事を続けていると、肝臓の毒素が排出される前に溜まり続けてしまい、結果的に肝機能障害で命に関わる事態に繋がってしまう可能性が出てくるとのことです。
上記の知識を前提として持っていると、以下のニュースが全く対照的な内容に見え、非常に面白いので取り上げたいと思います。
大型ネコ科はカルバン・クラインの香水が大好きなんすよ!動物園側が香水の寄付呼びかけ(イギリス)
image credit: youtubeライオンやトラなどの大型ネコ科動物は人間が使うある種の香水が好きなのだという。アメリカの動物園が行った実験によると、特にカルバン・クラインの香水『Obsession for Men』が一番人気だそうだ。
世界各地の動物園や保護施設では、この事実が明らかになって以来、積極的に香水を取り入れ、動物の飼育環境を豊かにする工夫がなされてきた。
そこで今回、イギリスのある動物園が訪問者らに、不要なムスク系の香水を寄付してくれるよう求めているという。
【他の記事を見る】猫はダンボールが好き!じゃあ大型のネコ科はどうなのか?実験してみよう
Our big cats want your ‘Purrrfume’!香水に積極的に反応する大型ネコ科動物
2003年、アメリカ・ニューヨーク州ブロンクス動物園が大型ネコ科動物たちに香水を使った実験を試みたところ、カルバン・クラインの『Obsession for Men』が一番好まれることがわかった。特にジャガーにはとても人気だったそうだ。
当時の実験では、チーターも11分間ずっとその香水の匂いを嗅いでおり、他の香水よりもその時間は長かったことが記録されている。
専門家によると、この香水にはジャコウネコが出す分泌物シベトンと呼ばれるフェロモン成分が含まれており、大型ネコ科の動物たちはそれに大きな反応を見せるということだ。
イギリスの動物園では不要な香水の寄付を呼びかけ
イングランドのノーフォークにあるバナム動物園では、今回「大型ネコ科動物のために不要な香水を寄付してほしい」と呼びかけた。
こちらの園でも、ライオンやヒョウ、トラなどの囲いや木に香水をスプレーした時、その独特の香りに大型ネコ科の動物たちは非常に積極的に反応したそうだ。
image credit: youtubeしかし、在庫が少なくなってきたため、園側は訪問客に「動物園に来る際には使わないムスク系の香水を持ってきてほしい」と依頼している。
ムスク系の香りが動物環境の改善に繋がる
バナム動物園のマネジャー、マイク・ウールハムさんは、このように話している。
全ての大型ネコ科の動物はムスク系の香りが好きなようで、特にカルバン・クラインの『Obsession for Men』が大ヒットしています。ですが、他の香水でもそれなりの効果が出ているので、飼育員らはどんな香りの香水でもいろいろ試してみたいと思っています。専門家が言うには、強い香りが動物の環境を豊かにし、匂いを嗅ぐことで大型ネコ科動物たちは心身共に活発な状態になるということだ。
しかし、活発といっても攻撃的になるのではなく、その匂いにメロメロになり、香りに刺激されることで繁殖活動にも大きな効果を発揮しているようだ。ある種のまたたび効果みたいなものだろうか?
グアテマラでは、2007年以降ジャガーの繁殖プログラムには香水が使用されているという。
image credit: youtube一方2018年10月には、インド西部のマハーラーシュトラ州で、複数の住民を殺したとされるトラを捕まえようと、『Obsession for Men』が使われたことが伝えられた。
大型ネコ科はバニラノートもお気に入り
また、アメリカのノースカロライナ州にあるトラの救済・保護施設『Carolina Tiger Rescue(カロライナ・タイガーレスキュー)』でも、香水を使っている。
スタッフによると、施設内のオセロットはAxeのボディースプレーが大好きだが、ヒョウはフルーティーでレモン系の香水がお気に入りだそうだ。
なお、アメリカで複数の動物園にて飼育経験があるダン・ベーカーさんは、大型ネコ科動物は『Obsession for Men』以外にも、ビクトリアズ・シークレットのBomshellという香水や、Bath&Body WorksのWarm Vanilla Sugarという香水が大人気だったと話している。
ちなみに『Obsession for Men』同様、これら香水は全てネコ科動物が思わず舐めたくなるようなバニラノートが特徴的だということだ。
Big Cats Wild for Calvin Klein Cologne?※追記(2020/02/06):この記事はあくまでも大型ネコ科を対象としてもので、イエネコのような小型の猫に対するものではありません。特にアロマテラピーに使用する精油は危険とされているようです。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
References:mashable.comなど / written by Scarlet / edited by parumo・あわせて読みたい→大型ネコ科の動物に背を向けるとどうなるのか?強烈な”だるまさんがころんだ”をされる
※カラパイアの2020年2月16日の記事(http://karapaia.com/archives/52287399.html)より抜粋
まず、動物園において、人間が使う香水が活用されていたという事実に大きな驚きがありました。
大型のネコ科動物が反応する理由は、ネコ科の放つフェロモン物質と同様の成分が含まれており、それに反応している可能性が高いというだと思うのですが、そのことをうまく活用して、繁殖を促したり、凶暴化したトラを落ち着かせるために使われたりしていることもはじめて知り驚きました。
大型のネコ科動物が好む、ムスク系香水のことについては、以下の記事が参考になると思います。
今回の記事を見て、例えば、大型ネコ科以外の絶滅危惧種になっている動物に対して、香りが繁殖に対して持つ可能性というのはどのくらいあるのだろうか? ということが気になってきました。
あと、日本の動物園で香りを活用しているところはあるのか?など、色々と気になってきました。
動物と香りの関係性については、今後も様々な情報に触れていきたいと思います。