先日、『量り売り』を日本に普及させることを目指す「nue by Totoya」のことを取り上げましたが、その後、SNS等で様々な情報に触れる中で、「持参してもらったボトルに”量り売り”で提供」というキーワードを、少しずつ目にするようになってきています。
【過去の参考記事:『量り売り』を日本に普及させることを目指すオーガニック食材輸入店「nue by Totoya」(東京・代々木)。環境問題対策において必須の切り口だと思います。】
環境問題のことが議論になるときに、「●●が△△に影響している証拠が見つかっていない」から、「●●は継続しても問題ない」となり、現状続けていることを正当化し、過去の習慣を見つめ直すチャンスを失ってしまうケースが多いように感じます。
環境維持というのは、様々なレベルでの”循環”というのが前提になっているので、明らかにそれから外れている人間の行動は即改めていく必要性を最近は特に感じます。
アマゾンの火災、オーストラリアの火災というのはそういうメッセージだったと自分自身は受け取りました。
個人のレベルで環境に対してどう貢献できるのかを常日頃から考え抜いていくことは、今後のハーバルライフの質を高める上でも欠かせない視点だと思いますので、有益な環境対策の情報には広くアンテナを張ってきたいと考えております。
そんな中、先日、オランダ最大級の外食産業展示会「HORECAVA」についてのニュースを見たのですが、イノベーションのレベルが高いと感じ、大きな刺激を受けましたのでご紹介したいと思います。
イノベーションを続ける農業大国オランダ 2020年の外食トレンドは食品ロス
毎年1月に、オランダのアムステルダムにあるライ国際展示場で開催されるHORECAVA。毎年、面白い展開を見せている展示会で紹介された2020年の外食産業トレンドをレポートする。
オランダ最大級の外食産業展示会「HORECAVA」
HORECAVAとはHorecavakbeursの略称で、ホテル・レストラン・カフェ分野の外食産業展示会だ。1975年よりアムステルダムで開催されており、外食業界においてはオランダ最大級のメッセである。各分野に分かれてパビリオンがあり、特に注目すべきはイノベーション部門だ。
「常に現実的な国民性」で「農産物輸出量世界第2位」を誇る農業大国オランダにおいての、食分野のイノベーションは一目置く価値があるといえるだろう。本年のメッセ開催は、1月13~16日だった。
出展社数768、訪問者7万806人、今回発表された新規イノベーションは1239件。平均すると、出展1社につき1.6件のイノベーションとなる。(情報提供:ライ国際展示場)
消費期限切れの生鮮食品をレストランで活用
毎年注目されるのは展示会でのトレンド。筆者も最初に足を運ぶコーナー「トレンドラボ」では、食品ロス対策のブースが目白押しだった。本コラムにおいて以前紹介したデンマーク発祥の食品ロス防止アプリ「TOO GOOD TO GO」のブース以外にも面白い発見があった。
福袋のようなワクワク感で食品ロス防止 欧州で普及に成功したアプリ
INSTOCK社は、消費期限切れや規格外の生鮮食品(野菜、果物、パン、肉、魚など)をスーパーより取り寄せて、専用のレストラン(アムステルダム、デンハーグ、ユトレヒト)で食材として再利用している。またケータリングやイベントにも積極的に出店しているそうだ。
さらに、消費期限切れパン及びジャガイモを発酵させてビールを作っている。緑のラベルがジャガイモからできたビール(PIEPERBIER)で、ピンクがパンのビール(BAMMETJES BIER)。
パンとジャガイモのビール
これらのビールを製造する過程で、麦汁を絞った後に残る麦で作ったシリアルも製造販売している。そして、これらの商品を使ったレシピ本も販売しており、高評価を得ているそうだ。
麦汁を絞った後に残る麦で作ったシリアル 摘みたてハーブをレストランに提供
hrbs社は、レストランへ小規模コンテナと棚を貸し出して、自社栽培したハーブをお客さんに提供する仕組みを構築している。「輸送にかかる手間とコストと環境への配慮をし、新鮮なものをお客さんに提供」というコンセプトだ。
hrbs社のハーブコンテナ
棚とコンテナは、大きさや高さが数種類あるため、店舗にあったものが選べる。これなら、省スペースで多種類のハーブが一度に栽培できる。ハーブの使用量は各レストランで違うと思われるが、主原料に比べれば少ない。摘みたてハーブが料理に添えられれば、映えも変わってくるだろう。
hrbs社のハーブコンテナ
次回は、ネスプレッソのリサイクルと食品貯蔵への省エネアイデア、ダイエット中の人のためのレストラン紹介アプリをご紹介したい。(オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵)
HORECAVAの会場 コラムニスト
オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵
EUSTIM代表。1998年より、オランダに住居を移す。 理学博士である夫と共にEUSTIMを立ち上げ、日欧間の食品及び医科学関係のコンサルタント業務に携わっている。 食品分野を担当。日欧間で食品分野における新商品の紹介や企業間の架け橋、視察のアレンジや同行(通訳)等を行っている。
※日本食料新聞の2020年1月28日の記事(https://news.nissyoku.co.jp/column/shiraga20200128)より抜粋
食品ロスを無くしていく取り組みについては、「賞味期限」「規格」というのは、いわば人間が勝手に設定した基準なので、個々人の感覚に照らし合わせて、それが必要なものか否かを選んでいくスタンスがより強く求められているように思います。
「賞味期限が切れている」、「形が良くない」という一面的な指標というのは、売る側としても改めていかない限り、過剰な食品ロスは無くなっていかないのではないでしょうか。
また、ハーブ栽培用のコンテナを貸し出すアイデアは、素晴らしいと思いました。月額費用を払い続けると、ハーブのケアもしてくれるのでしょうか。より詳細なサービスの内容が気になります。
日本以外の環境に対する取り組みは、とても大きな刺激を受けますし、日本社会にとっても有益なアイデアになると思いますので、今後も取り上げていきたいと思います。