今年4月に行ったマレーシア・ペナン島では、ハーブ・スパイスの生活への浸透度合いに驚いたのですが、その中でも、日本ではスパイスとして認識されている「ナツメグ」の生活への浸透度合いが衝撃でした。
そのことは、一度記事にいたしました。
【過去の関連記事:マレーシア・ペナン島で「ナツメグ」に対するイメージが激変。ナツメグの生活への浸透度合いに驚きました。】
この記事にも書いていますが、マレーシア・ペナン島では、ナツメグがスパイスという捉え方だけではなく、フルーツの一つとしての捉えられ方をされていることもとても新鮮でした。
※ナツメグの木については、同じく、マレーシア・ペナン島にある「トロピカルスパイスガーデン」にて見ることができました。(以下の記事に最後の方に写真があります)
【過去の関連記事:トロピカル・スパイス・ガーデン(マレーシア・ペナン島)の植物たち【スパイステラス編】】
そんなナツメグについての記事で、先日、興味深い記事を見つけましたのでご紹介したいと思います。
以下にご紹介する記事は非常に長いので、一部を抜粋させて頂きます。
◆食べ過ぎると幻覚症状が出る「ナツメグ」料理専門店に行ってみた
グレナダとは一体どんな国なのだ?と調べてみたところ、香辛料として有名なナツメグの生産量が世界第6位で「スパイス島(スパイス・アイランド)」とも呼ばれていることが判明。よく見ると国旗の左側にもナツメグの実が描かれていました。和名で「ニクズク」と呼ばれるナツメグは、コショウ、シナモン、クローブと並ぶ四大香辛料の1つ。ナツメグの実を2個食べた子どもが死亡した症例があるほか、向精神作用もあるというナツメグですが、グレナダにはなんとナツメグ料理専門店があるとのこと。これは行くしかあるまい……ということで「ザ・ナツメグ」というお店に行ってみました。
店員さんに「ナツメグが入った料理はどれですか?」と聞いてみると「全部だよ!」という頼もしい答えが返ってきたので、深く考えずに気になった料理と飲み物を数点注文します。なお、飲み物にスパイスは入っていないとのこと。
まずはご当地ビールの「Carib Premium(6ドル/約240円)」から注文。なお、本文中の「ドル」表記は一部を除いて「東カリブ・ドル(EC$)」のことです。
「STAG(6ドル/約240円)」が到着。どちらもラガーで飲みやすいです。落ち着いた雰囲気の店内からセントジョージズの港が見えるのも、夜のひとときを彩ってくれます。
海外では、瓶ビールはコップに注がずにそのまま飲む機会が多いのですが、このお店ではキンキンに冷えたジョッキグラスも一緒に出てきました。日本とのシンパシーを感じます。
続いて、鶏もも肉のグリル(60ドル/約2400円)が運ばれてきました。付け合わせには赤飯のようなお米とソテーされた野菜。ホワイトソースは濃厚ながらも、ナツメグの風味であっさりと食べられます。
スパイスアイランドロブスター(85ドル/約3400円)。ナツメグはもちろんですが、ナツメグ以外のスパイスも入っていて、噛むごとにロブスターの味と複雑なスパイスの香りが抜けていきます。幸いなことに、もりもりナツメグを食べた後もこれといった症状は出ず、元気に翌日を迎えることができました。
またレストランだけでなく、街のいたるところでナツメグが使用された食べ物が提供されていました。宿泊先の朝食で出てきたパンにはやっぱりナツメグジャム。
ジャムとは思えないスパイシーな香りがしますが、アプリコットのような甘酸っぱい味わいです。
壁にはナツメグの絵画がかかっていました。
グレナダで食べる料理にはナツメグが入っているものが多い上、スーパーにもいろいろなナツメグ製品が売っています。ご当地料理は普段食べられないのでついつい食べ過ぎてしまいがちですが、ナツメグのヒト経口中毒量は、成人で5グラム~10グラム。食べ過ぎると呼吸困難、めまい、幻覚、嘔吐などの症状を発症することもあります。通常は24時間以内で回復しますが、2~3日かかるケースもあるとのこと。今回旅行中にもりもり食べた中では特に症状が出ず、おいしく食べられるうちは問題なさそうですが、旅行をしっかり最後まで楽しむためにも食べ過ぎには注意が必要です。
ちなみに、グレナダの植物園に行くと、ハーブティーなどでお馴染みのレモングラスや……
立派なパパイヤを見ることができますが……
そんな植物園でも足元には砂利ではなくナツメグの殻が敷き詰められていました。これを見るだけでもグレナダではいかにナツメグがあふれているのかがよくわかります。
植物園の近くにある小さなスパイス店「Tourist Destiny Spice Shop」にも行ってみました。
ナツメグを始めとするスパイスはもちろんですが、野菜やフルーツも置かれていました。
野菜や果物に混じって「自分、果実ですけど?」といった風情でカカオも並んでいました。中に見えるのが種子(カカオ豆)です。グレナダのカカオの品種は、アマゾンカラバシージョとベネズエラ由来のクリオロの交配種だと言われており、日本でもチョコレート通に人気があるとのこと。お土産用のチョコレートも販売されていました。
※Gigazineの2019年7月16日の記事(https://gigazine.net/news/20190716-interlink-islanddomains-gd/)より一部を抜粋
記事中に出てくる「グレナダ」という国は以下の位置にあります。
南米ベネズエラの上に位置する島国です。”スパイスアイランド”と呼ばれていることを知ると、自分の人生の中で一度は必ず訪れたいと思いました。
グレナダがスパイスアイランドと呼ばれるに至るまでの過去の歴史についても現地で深く学びたいという気持ちも強く沸いてきました。。
因みに、マレーシア・ペナン島でナツメグが普及した経緯としては、17世紀~18世紀に起こった「スパイス戦争」が深く関連しています。
紀元前から珍重されていたスパイスですが、シルクロードの発達によって、東西交易が活発化し、東南アジア産のスパイスがヨーロッパへ渡るようになったのですが、アラビアの商人が陸路を抑え、且つ、原産地を隠し通すことで莫大なマージンを載せていたことにより、ヨーロッパでの東南アジア産スパイスの値段はとんでもなく高かったそうです。その後、ヨーロッパでスパイスの原産地探しの熱が高騰し、ヨーロッパ人の大航海時代へ突入。
まずはコロンブスが大西洋を渡りアメリカ大陸を発見し、アメリカ原産のチリ(唐辛子)を発見。バスコ・ダ・ガマは、喜望峰経由でインド航路を開き、インド産のペッパーやシナモンを探し当てます。マゼランは、西回りで太平洋を横断し、インドネシアのモルッカ諸島に到達し、クローブやナツメグを持ち帰ります。
原産地が明らかになると、東南アジアやインドにおけるスパイスをめぐっての争奪戦が繰り広げられます。16世紀前半には、まずポルトガルが産地や交易地を制して実権を握ります。続いてスペインが進出し、植民地を獲得していきます。
17世紀になるとオランダが勢力をのばし、セイロン島(シナモン原産地)、モルッカ諸島(クローブ、ナツメグ原産地)からポルトガルを追い出し、スパイスの栽培と取引を独占します。そこにイギリスも割り込んできたために長い間、血で血を洗うような乱戦状態が続き、これがスパイス戦争と呼ばれています。
1770年頃、その状況を打破したのがフランスでした。原産地にしかなかったスパイスの苗木を密かに盗み出し、他の土地での移植に成功。
1795年にはイギリスも、植民地であったマレーシアのペナン島に、グローブやナツメグを移植。このように栽培地が広がることによって、スパイスの値段も価値も下がり、19世紀にはスパイスをめぐる抗争がおさまったとのこと。
今回、ナツメグ専門店の記事に触れたことにより、世界は無限に広いということを痛感しています。
今後もっともっと知見を深めていきたいと思います。