昨年6月、広島県にある食用バラを使った商品を展開する「マチモトバラ園」へ訪問した時のことをレポートしたことがあります。
【過去記事:広島・島根ハーブ巡り記【マチモトバラ園-編】】(2021年6月21日)
地元愛溢れる町本社長と過ごした時間は、今でも鮮明な記憶として思い起こされます。
今日は、食用バラをはじめ、バラに関する商品を開発・販売を行なっている「ローズラボ」の代表が語る食用バラの話を取り上げたいと思います。
「ローズラボ」代表の看板娘が、食用バラの可能性を全力で追求していた
ローズラボ(ROSE LABO)株式会社。文字通り「バラの研究所」で、食用バラをはじめ、バラに関するさまざまな商品を開発、販売している。
同社は2月14日のバレンタインデー当日まで、バレンタイン用のギフトセットの予約を受付中。世界的パティシエ・辻口博啓シェフのこだわりスイーツが味わえるパティスリー、「モンサンクレール」とのコラボ商品だ。
例えば、下の写真はベリーのような香りを持つ食用バラ、「ルージュロワイヤル」を使った生チョコレート。
こちらは「ローズティーorローズハーブティーと生チョコセット」。
それにしても、食用バラという聞き慣れないジャンルに目を付けたのはどんな人物なのだろうか。港区内にあるローズラボの本社を訪れた。
のちにわかるが、バラの栽培だけでなく、その加工から販売までを行う6次産業の成功例としてさまざまな団体から表彰されてきたという。
皆さん、真剣な表情で働いていらっしゃる。そして、ローズラボの代表として10数名のスタッフを束ねるのがの田中綾華さんだ。さっそくご登場いただこう。
看板娘、登場
東京で生まれた綾華さんは、ひいおばあちゃんの代から続く“バラ好き一家”で育った。
食用バラに出会ったのはいつですか?
「大学1年生のときですね。母から食用バラのジャムをもらって食べたのが始まりです。バラの香りとジャム特有の甘さがすごくマッチしていて、こんなに美味しい食べ物があるんだと感動しました」。
しかし、このあととんでもない転機が訪れる。
「私、もともとやりたいことがなくて、やっと見つけたのが食用バラだったんです。両親の反対を押し切って大学を中退、大阪の食用バラ農家のもとで修行を始めました。大学に通いながら、という発想はまったくありませんでしたね」。
作業は早朝から始まる。まず、ビニールハウスの保温カーテンを開け、収穫、清掃、雑草むしりなどを行う。
「背中を見て覚えろという感じだったので、がむしゃらについていきました。想像していたより力仕事が多いんですよ。虫が大の苦手だったけど、ミミズも素手で触れるようになりました」。
2年ほど働いて食用バラ作りのノウハウを身に付けたところで東京に戻ったが、起業するつもりはまったくなかったそうだ。
「単に好きなバラに囲まれて生きていければいいやというぐらいの気持ちで。とはいえ、バラの栽培は続けたかったので、登記用のオフィスを借りてスタートのための準備を自宅でしていました」。
農地というのは貸してくれないらしいが、綾華さんは新規就農者を手厚くケアしてくれる深谷市役所と奇跡的に出会う。こうして借りられたのが深谷市内の耕作放棄地だった。
1発目の出荷は上手くいった。しかし、2発目の3000株をすべて枯らせてしまう。
「大阪で習った肥料バランスで育てていたんですが、もっと暑い深谷では栄養不足だったみたいで。無農薬でのバラ栽培は本当に繊細なんです」いきなり無収入になった綾華さん、日中はバラ栽培、夜は定食居酒屋で働くという日々を半年ぐらい続ける。「2、3時間寝れたらいいほう」だったという。
バラ栽培は再び軌道に乗るが、販売先の開拓がまた大変だった。
「食べログを見てあらゆる飲食店、1軒1軒に営業電話をかけるんです。でも、食用バラに全然興味を持たれなくて。やがて、『洋菓子店は反応がいいぞ』と気付いたんです。そこからは、いろんな取引先から定期的に発注をいただけるようになりました」。
ここで、面白い話を聞いた。品種によって花弁の味が違うというのだ。
「黄色いバラは苦味やえぐみがあります。漆黒に近い赤は香りがないのがほとんど。そういうバラは花弁が肉厚なので、観賞用としては重宝されるんです」。
下の白いバラはコスメのために品種から開発したもの。
もちろん、農薬不使用なので食べることができる。
ローズラボでは2年目からジャムの開発を始めた。
「農薬不使用の食用バラをたっぷり使用したジャムで、口の中に広がる華やかなバラの香りで幸せな気持ちになります」。
さらに、3年目にはコスメの開発に乗り出す。
「綾華さんは誰よりもポジティブで元気。あと、意見を絶対に否定しない。仕事では真剣だけど、家族といるときはチャーミングだったり。いろんな顔を持っているところも好きですね」。
さて、取材もそろそろ終わりに近付いてきた。ところで、綾華さん。さっきからあっちの部屋で「クーンクーン」と鳴いている生き物がいますね。
「私が飼っている犬ですね。ビション・フリーゼという犬種で、毛が白いので名前は『トロロ』。もうすぐ1歳になります。遊んでほしいみたいで、飼い主の私でも捕まえるのが大変です」。
いやあ、食用バラに関する興味深い話をたくさん聞けた。今後の展開としては、めちゃめちゃ甘いバラを作る、産学連携でバラを使った新薬の開発など、綾華さんのバラ愛は止まることを知らない。
では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
[取材協力]
ROSE LABO
www.roselabo.jp
※OCEANSの2022年2月10日の記事(https://oceans.tokyo.jp/article/detail/38263)より抜粋