中世ヨーロッパのペスト医師たちが、当時のマスクの先に香辛料を詰め込み治療にあたっていたというお話について

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日々、新型コロナウィルス拡散のニュースが流れてきますが、4月以降のウィルスの拡散の勢いがどうなっていくのかが気になるところです。

昨日、日本メディカルハーブ協会(JAMHA)から会報誌が送られてきて、内容盛りだくさんなイベントが満載だったので、イベントが本格化する5月以降、コロナウィルスの拡散も鎮静化することを願っているところです。

インフルエンザウィルスと同様、寒さと乾燥を好む性質なのかなと思っていたのですが、必ずしもそうでもないような情報もあるので、状況は見守っていきたいと思います。

とは言いつつも、自分ができることは、免疫力を高いレベルで維持し、感染しにくい体質を保っていくことが最優先だと思っていますので、周りの情報に振り回されることなく、「まずは自分」の意識を強く持ち、日々を楽しく過ごしていくことに集中したいと思います。

新型コロナウィルスと同じ感染病である「ペスト」は、中世のヨーロッパで大流行し、多くの人々の命が奪われたということについてはなんとなく自分の頭の中にあるのですが、当時、ペストの治療にあたっていた医師の話が非常に興味深いので取り上げたいと思います。

中世のペスト専門医師が着用していたマスク(ドイツ医学史博物館)

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中世のヨーロッパではペスト菌の感染によって起きる感染症が大流行した。黒死病とも呼ばれる理由は、感染者の全身の皮膚が内出血によって紫黒色になることに由来する。

ドイツ、バイエルン州のインゴルシュタッドにある医学史博物館(German Museum of Medicine History)では、1中世のペスト医師が装着していた嘴(くちばし)状のマスクが展示されている。

【他の記事を見る】まるで鳥人間。17世紀に実際に着用されていた医師用ペスト防護マスクに関する事実

ペスト医師が装着したくちばしのついたマスク

ペストは中世のヨーロッパを中心に、複数回の世界的大流行(パンデミック)が記録されている。ペスト医師はペスト患者を専門的に治療した医師のことで、黒死病が蔓延した時代に多くのペスト患者を抱えた都市から特別に雇用された者たちである。

当時、ペストがどのように広まって、人の体を蝕んでいくかについて、おもにふたつの説があった。四体液説と瘴気説だ。瘴気説は、人は悪い空気(気体または霧のようなエアロゾル状物質)のせいで病気になるという説で、ペスト医師は、瘴気対策としてマスクを装着した。

植物、ハーブなどの心地よい香りを吸い込めば、悪い空気が浄化され、瘴気を吸い込まないようにできると信じられていたため、長いくちばしの中には大量の香辛料が詰め込まれていた。

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パウル・フュルストによる1721年頃の版画。ローマのクチバシ医師として紹介された、マルセイユのペスト医師を描いたもの。くちばしのように見える部分にハーブが詰められ、病を寄せつけないようにした。

目の部分にはガラスが入れられ、ストラップのついたくちばし部分を医師の鼻の前につけ、くちばしの中にアロマの香りを充満させて吸えるようになっている。

中に詰めるものは、バラやカーネーションの花を乾燥させたものや、ミントなどのハーブ、スパイス、樟脳、酢を浸したスポンジなどだった。

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このマスクは、ペスト存在が知られる以前、病気のおもな原因とされていた瘴気、つまり悪い空気を吸わないようにするための工夫だった。

ハーブがペストの邪悪なにおいを撃退し、病気になるのを防いでくれると、当時の医師たちは信じていた。

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くちばしマスクをつけ、広いつばのある革の帽子をかぶったペスト医師たちは、そのいでたちですぐに職業がわかるようになっていた。

木の杖を持っていて、患者に直接触れないようにして診察した。その杖で人々を近寄らせないようにしたり、ペスト患者の服を脱がせたりしたりした。

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兵士の鎧からヒントを得た防護服

歴史家によると、このくちばしコスチュームを発案したのは、シャルル・ド・ロームだという。ロームは、兵士の鎧からヒントを得て、1619年に頭から爪先まで全身を守るこの防護服のアイデアを考案した。

くちばしつきのマスクには、ガラスのメガネがつけられ、首からくるぶしまでの長いガウンは、モロッコやレヴァンティンの革や、蝋でコーティングした帆布で作られた。

下に履くレギンスや手袋、ブーツ、帽子も蝋でコーティングされた革製だった。この防護服にも、くちばしの中身と同じ、いい香りのするハーブが焚きこめられた。

ロームは次のように記述している。

鳥のようなくちばしの長さは半フィート(およそ15センチ)で、このくちばしの中にいい香りがするものを満たす。これをかぶる者の鼻腔近く、両側にひとつづつふたつの穴があいているので、呼吸は問題なく、同時にアロマのいい香りを吸い込むことができる

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死神と共にやってくるペスト医師

ジュネーブの医師ジャン=ジャック・マンゲは、マルセイユの大疫病の後で書いた、ペストに関する1721年の論文の中で、1636~37年にオランダのナイメーヘンで、ペスト医師たちが着用していたコスチュームについて触れている。

その防護服のイラストは、この論文の口絵にもなっている。ナイメーヘンのペスト医師たちも、くちばしのついたマスクをかぶり、モロッコ革で作られたローブ、レギンス、帽子、手袋を身につけている。

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ローマで14万5000人、ナポリで30万人が犠牲になった1656年のペストの大流行のときも、ペスト医師はこの防護服を使用していた。

一目でわかるその装束は人々を恐怖に陥れた。まるで死が差し迫っていることがわかる死神のようなシンボルのように思っていたようだ。

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ペスト医師は、経験豊富な医師だけではなく、商売の成り立たない二流の医者か、自分の身を立てようとする若い医者も多かった。

都市に雇われた彼らは、報酬も都市側から支払われたため、貧富の隔てなく誰であろうと公平に治療を施したと言われている。

ペスト医師の本来の職務は、ペスト患者の治療と死者の埋葬だったが、死者の数を公式記録に記載し、患者の最後の望みを文書に残す仕事もあった。

さらに、死者や瀕死の者の遺言を見届け、証言するために呼び出されることもあり、ペストの治療法をより深く理解するために、解剖を要請されることもあったそうだ

https://youtu.be/JvG6tyzk_uc

(You Tube 動画)
16th Century Physicians Mask
References:vintag.es/ written by konohazuku / edited by parumo

カラパイアの2020年3月10日の記事(http://karapaia.com/archives/52288686.html)より抜粋

 

当時、数十万人規模で人が無くなっているなか、その治療にあたっていた医師の偉大さに心を打たれます。

(最近、家族が入院したタイミングがあったので病院へ数回通っていたのですが、医師や看護師さんの奉仕の心って本当に凄いなと改めて思いました。)

ペストが流行していた当時の医師たちが、莫大な死者を出していた感染症に立ち向かう上で、マスクの先にハーブ・アロマを満たして治療していたという歴史を感じると、中世ヨーロッパにおけるハーブ・アロマの効果に対する信頼が非常に高かったことがイメージできます。

メディカル領域におけるハーブの研究というのは、歴史を振り返ってみると中世ヨーロッパは熱心に取り組んできた経緯もあるので、そのことがハーブ・アロマの地位向上に大きく貢献していたという背景もあると思います。

人類の歩んできた歴史を知ることは、現在の世界の本質を掴む上で本当に貴重な情報となるので、今後も広く世界の情報に触れていきたいと思います。

 
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