千葉県鴨川市の山間で無農薬・無化学肥料でハーブやエディブルフラワーを栽培する【苗目】について

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先日、日経新聞の有料会員限定記事の冒頭に取り上げられていた以下の内容を目にしました。

井上隆太郎さん 苗目代表取締役、無農薬食用花で起業

2019年6月28日 19:34 [有料会員限定]

フレンチ料理やカクテルを彩るカラフルなエディブルフラワー(食用花)や独特の香りを放つハーブの数々。生産者の井上隆太郎(42)は自らの温室や山を歩き回り、植物を手にとっては鼻や口に運ぶ。農薬や化学肥料を使わず、自然のままに育てた個性豊かな植物が鴨川から生まれている。

連なる山のふもとに水田や畑が広がる鴨川市。井上の温室は全部で大小9棟で、敷地面積は約1000坪にのぼる。計100種ほどの多種多様な植・・

私は日経新聞の有料会員ではないので、これ以降の内容は見れなかったのですが、無農薬の食用花(エディブルフラワー)で起業したという部分に興味を持ちました。

エディブルフラワーに対する需要が増えているということが想像できる内容です。

先日、行った「かながわハーブナーセリー 」でも、園主の笛木さんから、エディブルフラワーへの需要の高まりを感じるコメントがあったので確かだと思います。

【過去の参考記事:開放型ハーブ農園としての準備が着々と進む「かながわハーブナーセリー」へ初めて行ってきました。

早速、日経新聞の記事中の、「苗目」(株式会社苗目)のホームページへ行き、概要について確認してみることにしました。

Our (Not) Short Story / 苗目について

野原のような畑を作る

苗目の代表、井上隆太郎が千葉県鴨川市の山間で畑を始めたのは、2014年。
最初は200坪ほどの棚田の跡地を借り、無農薬・無化学肥料でハーブやエディブルフラワーの栽培を始めました。
これまで園芸業界に20年近くいた経験を活かして、収穫量や作業効率を重視する従来の畑ではなく、自然で、見て楽しい、庭造りに近い考え方で畑を作ろうと考えました。

一見ただの「野原」、でも実はよく見るとハーブが生えている。目指したのはそんな環境です。 この場所で、ハーブやエディブルフラワーを少量ずつ育て、レストランやバーへの販売を始めました。
ナスタチウム、イエルバブエナ、ボリジ、ソサエティガーリック、マロウ、コリアンダー、レモンバーム、コーンフラワー、カモミール……。
限りなく自然に近い環境で作った植物は、豊かな香りを放ち、味も力強いものでした。 天気予報を見ながら、雨が降る前、そして夏が来る前に種や苗を植え、あとは自然の雨風に任せる。
背の高くなる雑草は抜く。そんな形での栽培でした。

都内から通いながら行っていたので、連日雨が降らず好天が続いた時は車を飛ばして川から水を汲み上げてまいたり、
ある日畑に行くとイノシシの被害で、畑が全滅近くまで壊されていたり。
山からの湧き水が流れる小さな小川が干上がってしまい、水がまけなくなったこともありました。

それでも一度根付いたハーブは翌年になるとまた芽吹き成長していきます。
クレソンだけは台風や大雨の増水で流されて結局一度も収穫できませんでしたが・・・。

2年を経て、レストランやバーからのオーダーが増えてきて収量を増やす必要があったこともあり、栽培環境を整えて、害獣などから少しでもこの場を守り、より良い「野原」を作ろうと決意します。
2015年末、家族で鴨川に引っ越しました。 

Forage(採取)というキーワード

その頃、スコットランドのアイラ島に行く機会がありました。
言わずとしれたスコッチウィスキーの聖地ですが、蒸留所を巡る旅の途中に、wild food forager(野生食物採取人)の、MARK WILLIAMSと出会います。 彼の主催するツアーでは、森を歩き、そこにある植物の葉・花・根などあらゆる部位から食べられる部位を採取します。 また、それらをアルコールやビネガーに漬け込んだものなどを彼は持ち歩いていて、森の中にある石の塔でそれらを素材に、ランチを作り、バーチツリー(白樺)の樹液を採取しカクテルを作ってくれました。 その後、ツアーでは森だけではなく海に行き海藻も採取。海藻からはベーコンの味がしました。 この経験はとても衝撃的で、Forage(採取)という言葉を強く意識することになります。

厳しい自然環境、乏しい生産物のアイラ島でこれだけのことをしている人がいるのだから、多様な自然・植生のある日本なら、もっとやれることがあるはずです。
鴨川を拠点とした「栽培」と「採取」。やりたいことがはっきりとした言葉になってきました。

そして「苗目」へ

帰国後、井上はハーブ・エディブルフラワーの生産をしながら、より良い栽培と採取をするための場所探しを始めます。 2018年、ご縁があり鴨川の高鶴山のふもとにある8棟、計約1000坪の温室を借り受けます。もともとは花きの生産場だったため、温室内にあった作業台をすべて撤去するところから作業を始めました。
固く締まった地面を掘り返し、あらたに土を入れ、耕す。
こうして土ができたところに、順次、種や苗を植えていきました。
温室とはいえあくまでも理想は「野原」。
加温や冷房は最低限にとどめ、様々な品種が混在する自然に近い環境で、100種以上のハーブやエディブルフラワーの栽培を行っています。
天候に左右されることも少なくなり、安定した供給ができるようになりました。
また、シェフやバーテンダーからの細かい部位の指定、新たな品種の栽培などのリクエストにも応えられる体制も整ってきました。一方、同じく鴨川のとある里山と出会います。杉ばかりの山が多い中、この山には多くの果樹や在来種や広葉樹などの樹木が生えており、中でも100本近くある梅の木は圧巻です。 この山から四季を通じて自然からの恵みを採取しています。
また、環境保持に有効な植物の育成や、養蜂を通じて、里山の保全・健全化を図ることもこの場所の目的の一つです。 栽培と採取の拠点を得た私たちは、この活動に「苗目」という名前をつけ、
2018年2月、千葉県大多喜町でmitosaya薬草園蒸留所を営む蒸留家、江口宏志とともに、「農業法人(農地所有適格法人)株式会社 苗目」を設立しました。 苗目という名前は、温室のある土地の昔からの呼び名から取りましたが、自然が芽吹き育っていくという意味も込めています。

栽培と採取、そして採れてすぐだからできる加工品の生産を3つの柱に、耕作放棄地の問題解消、里山の健全化、鴨川と農業の新たな魅力の発信などに努めていきます。

この度開設するウェブサイトを通じて、苗目の活動を知ってもらうことと同時に、一般販売もスタートします。

自然の中から生まれるハーブやエディブルフラワーの力強い味や香り、また植物の新たな可能性を体験してもらえたらうれしいです。

2019年5月 株式会社 苗目  井上隆太郎 

※株式会社苗目のAbout us/苗目について より抜粋

スコットランドのアイラ島のwild food forager(野生食物採取人)、MARK WILLIAMSさんとの出会いのお話は、私も心が震えました。

日本では、「エディブルフラワー」という言葉だけが先行している感がありますが、”植物から食べられる部位を採取すること”というのはどういうことなのか、という根本に立ち返る必要を個人的に感じました。

MARK WILLIAMSさんのスピリットに共鳴した井上さんのお話というのは、間違えなく刺激を受けるものだと確信しました。

「エディブルフラワー」というと言葉を聞くと、今まではふわふわしたイメージを持ってしまいがちでしたが、この内容に触れたことで、より深い領域に対するアンテナが立ったと思います。

因みに共同創業者の「mitosaya 大多喜薬草園蒸留所」の江口さんについては2年前に記事として取り上げたことがあります。

【過去の関連記事:今夏、「mitosaya 大多喜薬草園蒸留所」の稼働により、果実やハーブからつくるボタニカル・ブランデーの市場が大きく動き出しそうです

以下の記事には、井上さんと江口さんの出会いから、今後目指すことについて書かれています。

千葉県には魅力あふれる場所が次から次に増えていますので、これからどんどん駆け巡っていきたいと思います。

苗目の情報

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