ハーブ・アロマ業界においては、オリーブを特定の地域に移植し、オリーブオイルをはじめとするオリーブ関連製品を地域の町おこしに活用する流れがあります。
「伊豆オリーブみらいプロジェクト」なんかは、有名な一例だと思います。
その流れとは別に、地域を代表する果実の”規格外品”を使用した精油で町おこしをしようという動きが出てきていることを先日お伝えしました。
【参考記事:摘果ミカンを使ったアロマオイルの商品化により、『アロマのまち』を目指す女性たち】
こういった動きはこれからますます加速していくだろうと思っていたところ、、
先日、屋久島の精油メーカー「やわら香」が、タンカン農家から、『味が良くても、形や色の面から既存ルートでは販売できないタンカン』を買い上げて、それを精油にするのを体験するツアーが始まったというニュースを見ました。
この精油を作るまでのプロセス、及び、使ったタンカンはどうされているかについて、ニュースの一部を抜粋します。
華やかなイメージのアロマオイルだが、参加者たちは地道な作業に追われた。
まずは、160個分の皮むき。大きな実は専用器具でむけるが、小さい実はナイフでの手作業だ。タンカンの皮は硬く、1時間の作業で握力をかなり使った。
アロマ抽出に使う皮は、香りが逃げるのを防ぐために、すぐに冷凍庫へ。果肉は絞り器に入れて、兵庫県の菓子メーカー用に6リットルの果汁を絞り出した。
さらに、凍った皮はフードプロセッサーで切り刻まれて粉々に。ミネラル分が少ないため、「香りが移りやすい」という島の山水と一緒に蒸留釜に入れられ、加熱が始まった。
そして3時間後、タンカンの香りを取り込んだ1リットルの水分をフラスコに抽出。その上部に浮かぶ数ミリの油分の層に、「タンカン・アロマ」の香りが凝縮された。
小さなサンゴにオイルをつけて、冬の香りを楽しんだ横浜市のセラピスト進藤朝子さん(36)は「大変な作業でしたが、一つも無駄にせずに循環させているので、香りのありがたみが増しました」と話した。
「(資源を)すべて使い切り、循環させる」ことを目指すやわら香では、アロマ抽出後の杉や皮を堆肥(たいひ)にして、果汁を取った果肉は養豚場でのエサにしている。社長の渡辺優子さん(41)は「農家の人が販売先に悩む規格外のタンカンでも、知恵と工夫で商品になる。今まで価値がないと考えていたものを生かせれば、屋久島がもっと生き生きとするはず」と期待する。
※朝日新聞DIGITAL(2018年4月5日版)より、一部抜粋
ベルガモットやグレープフルーツなどの柑橘系果実の果皮から精油を抽出するときには、一般的には、圧搾法が用いられていますが、上記の記事のように冷凍する手法は初めて見ました。
圧搾法の中で「低温圧搾(コールドプレス)」という手法がありますが、『機械のローラーを使って圧搾し遠心法で分離する』ことを指していて、特に”冷凍”はしていないのが一般的ではないかと思います。
ただ、精油づくりの現場をまだ見たことがないため、しっかりと確認する必要があります。
そして、先日ご紹介した、大磯町の摘果ミカンのアロマづくりの取り組みの中では、精油を絞った後のミカンの皮がどうなっているかの情報が無かったのですが、
今回の屋久島の『やわら香』の取り組みでは、使用後のタンカンの果皮は堆肥にして、果汁を絞った果肉は養豚場のエサになっていると書かれています。
堆肥にするというのは一般的だと思いますが、”果汁を絞った果肉”が豚のエサになっているというのは新鮮で、『産業的な循環』もきちんとされていますね。
『やわら香』は、屋久島の地杉の間伐材をはじめとする”屋久島産”の植物を活用し、循環に配慮した精油づくりをしている会社なのですが、こだわりをすごく感じます。
このタンカンの取り組み自体は、まだ体験ツアー企画の枠組みで行なわれている内容なのですが、今後恐らく商品化されていくのではないでしょうか。
屋久島へ立ち寄る際は、ぜひ『やわら香』伺い、社長の渡辺優子さんのお話を聞いてみたいです。
この体験ツアーは年4回で、今後は5月、8月、11月を予定しているとのことです。問い合わせは「やわら香」(0997・42・0109)へ。