今日は、【”免疫力アップ・抗菌”に関連するハーブの説明をJAMHA(日本メディカルハーブ協会)のホームページでじっくりと読み返してみるシリーズ】の4回目となります。
(1回目)エキナセア
(2回目)シソ(赤紫蘇)
(3回目)ペパーミント
4回目の今日は、レモンバームを取り上げたいと思います。
レモンバームは、どこのホームセンター・ハーブショップで一般的に見かけるハーブなのですが、時間の経過と共に、「あれ、レモンバームのこと、実際のところ、よく知らない・・」と感じることがあります。
私個人の特性として、珍しいものが大好きというのがあるので、自分の知らないハーブにすぐに飛びついてしまうのですが、、それぞれの国において、数百年、数千年の間、メジャーであり続けているハーブというのは、先人たちの経験の蓄積によって裏付けられている効果・効能が間違えなく存在しています。
なので、メジャーなハーブこそ、しっかりと理解を深めていく必要性を切に感じています。では、「レモンバーム」についての記述を取り上げたいと思います。
レモンバームは南ヨーロッパ原産のシソ科の多年草で、レモンに似た香りが特徴です。ヨーロッパでは古くから長寿のハーブとして知られ、食品や飲料の香りづけ、サラダやスープなどの料理、スキンケアなどの美容、医療にとさまざまに使われてきました。学名のMelissaはギリシャ語ではミツバチを意味し、レモンバームが蜜源植物として重用されてきたことに由来すると考えられています。
レモンバームの主成分は精油成分(シトラール、シトロネラールなど)、タンニン類、フェノール類(ロスマリン酸、カフェ酸)などで構成され、精神の高ぶりを鎮めたり、頭痛や腹痛などをやわらげたりする働きがあります。最近は、ロスマリン酸が認知症改善に効果があることがわかり、注目されています。
【作用】精神安定、消化促進、抗菌・抗ウィルスなど
【適応】不安、ストレス、認知症予防、頭痛、発熱、単純ヘルペスなど*食品としての適正摂取は安全だが、妊娠中や授乳中の経口摂取は控えたほうが安全。高濃度での使用は肌への刺激がある場合があり、敏感肌の人は注意が必要である。
※日本メディカルハーブ協会のMedical Herb Libraryの「レモンバーム」の記述(https://www.medicalherb.or.jp/archives/8930)より抜粋
「蜜源植物」というのは、ミツバチが蜂蜜を作るために花から蜜を集める植物のことですが、「メリッサ」というのは、ギリシャ語で「みつばち」そのものを指すというのは驚きでした。ヨーロッパにおいて長きに渡って重宝されてきているハーブということが伝わります。
レモンバームについては、様々な角度から研究がされているようで、以下のサイトで研究情報を確認することができます。
【1】レモンバーム抽出物をスコポラミン誘発性学習障害ラットまたはナイーブラットに処置し、モーリス水迷路試験にて記憶力への影響を調べました。その結果、スコポラミン誘発性学習障害を改善し、またナイーブラットの記憶が高まりました。さらに、両ラットの海馬でアセチルコリンエステラーゼ活性を抑えることが確認されました。従って、レモンバーム抽出物にはコリン作動性シナプスを介して記憶力や学習力に働きかけ、アルツハイマー病の記憶障害への有用性が示唆されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25657779
【2】20名の健康な若年層の参加者にて、レモンバーム抽出物を単回摂取した結果、高用量の投与にて記憶能力の改善とともに心の落ち着きが増すことが分かりました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12888775
【3】レモンバームの脳の虚血疾患に対する効果を調べるため、脳皮質培養神経細胞を低酸素ストレス負荷したin vitro試験、および一過性の海馬虚血ラットモデルを用いたin vivo試験にて効果を調べました。その結果、レモンバームは培養神経細胞の保護作用を示し、ラット海馬の脂質過酸化を減らすと共に、虚血により上昇する炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、HIF-1α)のmRNA量を抑制しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23351182
【4】アルツハイマー型認知症を自然に発症するアルツハイマー病モデルマウス(トランスジェニックマウス:Tg2576)にロスマリン酸を混ぜた餌を摂取させたところ、脳内におけるAβの沈着が抑えられたことから、アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)の予防効果が示唆されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19893028
【5】標準化されたレモンバーム抽出物を4ヵ月間摂取したところ、アルツハイマー病患者の興奮が治まり軽度から中等度の症状が改善したということが分かりました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12810768
【6】ロスマリン酸について、アセチルコリン分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼに対する阻害作用をELISA法により測定した結果、ロスマリン酸にはアセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用をもつことが明らかになり、ロスマリン酸に認知機能の改善やアルツハイマー病予防効果が示唆されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26059146
【7】精油50種類、オレオレジン24種類について咽頭上気道細菌に対して抗菌試験を行いました。そのうち、レモンバーム精油は主要な成分ゲラニルアセテート、メチルアセテート、αテルピニルアセテートは上気道微生物に対して有効な抗菌性成分となったことから、レモンバームは風邪予防に役立つと考えられています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007367250
【8】放射線科スタッフ55名を対象に、レモンバームを1日あたり1.5g/100mLの量で1日2回、30日間飲用させたところ、カタラーゼ、SOD、グルタチオンペルオキシダーゼの活性は上昇し、血中のDNAダメージ、ミエロペルオキシダーゼ、脂質過酸化は減少していました。レモンバームは、放射線によるダメージを軽減する働きを持つと考えられています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20858648
【9】口腔ヘルペス患者にレモンバーム抽出物1%入りのリップクリームを塗布したところ、回復期間が短縮し、感染部位の拡大を防ぎ、症状の再発を軽減したことから、レモンバームは抗菌作用を持つと考えられています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10589440
【10】レモンバームの精油について、チフス菌、大腸菌、リステリア菌、黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用および抗酸化作用について調べた結果、高い抗菌作用を示すと共に、特に黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用が高いことがわかりました。そのため、食品の天然防腐剤としても使用できます。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29085610
「ロスマリン酸」というと、ローズマリーばかりに意識が行ってしまいますが、レモンバームの主要成分であるということはしっかりと押さえておいた良いと感じました。
また、ハーブティーの観点からの「レモンバーム」の記述については、以下の”ことり薬草”さんのHPがわかりやすいです。
個人的には、ハーブティーをブレンドするのに もっとも使いやすい と思ってるハーブです。
クセがなく、どんなハーブとも味や香りが調和しやすいレモンバーム。
シングルで飲んでもしっかりティーになります。
生命力が強いのに穏やかな性格で、しかも万能なんです。
こころ、脳、消化器系、風邪などに効き、抗菌作用もある。
婦人科系の症状にも優しく作用してくれる。
これぞ縁の下の力持ち!って感じで頼もしいですね。
なんか調子悪いんだけど原因がよくわからないな、
っていうときに、レモンバームティは優しくて心強いのです。
もしこれからハーブのブレンドしてみようかなって方がいたら、レモンバームはおすすめ。
他のハーブとも風味が調和しやすく、穏やかに作用するハーブだからです◎
さらに、アロマの観点からは、以下のサイトは詳細な記述を確認できます。
↑のサイトは、アロマだけではなく、歴史についての記述も面白いので以下に貼ります。
レモンバームの原産地はヨーロッパ(地中海沿岸地域)とされており、紀元前から栽培が行われていた・古代ギリシアでは既にレモンバームを蜜源植物として利用していたと伝えられています。
属名から“メリッサ(Melissa)”とも呼ばれていますが、これもミツバチを意味するギリシア語が語源とされていますよ。
ギリシア神話でゼウスは父親から隠すため密かにクレタ島で育てられたとされていますが、この時ゼウスに蜂蜜を与え世話をしていた女性の名前が元々の語源であるという説もあります。
古代ヨーロッパには蜂蜜以外の糖源が無かったとも言われていますから、ミツバチを引き寄せる花を持つ蜜源植物として珍重されていたと考えられます。
また古代ギリシアの医者ディオスコリデスや古代ローマの大プリニウスなどが止血作用や解毒作用のある薬草として挙げており、傷薬など薬用でも用いられていたようです。
それ以外にレモンバームの葉がハート形をしていることから、心や心臓に効果がある薬草とも考えられていたそう。
後の16世紀に活躍したスイスの医師パラケルススはレモンバームの心臓に対しての鎮静効果や精神への作用から「生命のエリキシル(不老不死の万能薬)」と呼んだと伝えられていますが、10世紀前後には既に「若返りの薬草」として持て囃されていたという説もあります。
イスラムの医学者イブン・シーナーも「抑鬱に効き目がある」として推奨しており、中東では強心剤のような形でも用いられていたと言われています。
【過去の関連記事:ハーブの外見、生育環境、味などの特徴が、そのハーブの薬効を示す『特徴表示説』という考え方】
レモンバームを今後のハーバルライフにしっかりと取り入れていきたいと感じたと同時に、レモンバームの歴史の深さも強く感じました。
今後もレモンバームのことはコツコツと学んでいきたいを思います。