全てをスマホで制御するIoTルームディフューザー「Scentee Machina (センティー マキナ)」という商品。多様な香りの演出が可能になりそうです。

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最近の「香り(アロマ)」の領域における業界の動きが非常にスピーディーであるが故、今後の生活・仕事における様々なシーンにどのような変化が起こっていくのかという期待が日に日に高まっています。

10年~20年前は、男性が「アロマ」という言葉を公に発信するのが、なんだか恥ずかしい風潮がまだあったように思いますが、ここ最近は、全くそんなことを感じなくなりました。

その理由の一つとして、社会が徐々に「香り」の重要性を認知し始めていることが非常に大きいと思います。

先日、AEAJ(日本アロマ環境協会)主催の、イメージフレグランスコンテストの表彰式に参加してきたのですが、このコンテストの中で最も上位にランクされるのが「環境大臣賞」であることを知りました。

国としても「香り」の重要性に対するアンテナが高いということの表れだと思いました。

今から5年後、10年後というスパンで見た場合、「香り」が社会に対してどの程度の変化をもたらしているのか?を想像するだけでもワクワクします。

先日、IoTルームディフューザーの「Scentee Machina (センティー マキナ)」という商品を開発したScenteeの丹下大さんと取り上げた記事を見たのですが、今後の社会に大きなインパクトを与えていく予感がしましたので、取り上げたいと思います。

シャネル No.5の調香師を唸らせた、香りの配信サービス

私はコーヒーが好きだ。味ももちろんだが、コーヒーの香りを嗅ぐとリラックスでき、仕事の疲れがフッとほぐれる。眠い朝も、挽き立てのコーヒーの香りで気持ちをスッキリと切り替えることができる。

金木犀の香りで秋の訪れを感じたり、街ですれ違った人の香水で昔の恋人を思い出したりと、「香り」によって意識が刺激された経験は誰にでもあるだろう。

日常生活を送る中で、五感のうち嗅覚を意識することは少ない。生産性を高める上でリラックスや気分転換は大切なので、「香り」はビジネスとしても大きな可能性を感じる。

香りのSpotify
今回、開発背景を聞いた「Scentee Machina(センティー マキナ)」はユーザーの好みや気分に合わせて部屋の香りを変えてくれるIoTルームディフューザーだ。

ミニマルな金属のボックスの上に4本のガラス管が並んでおり、見た目は真空管アンプのようだ。それぞれのガラス管には透明の液体が入っており、蛍のようにゆっくりと、暖かい光が点滅している。液体の正体はフレグランス。4本のガラス管それぞれからフレグランスが噴霧され、空間に香りが拡がる。

Scentee Machinaを開発したScenteeの丹下大は東証一部上場企業でソフトウェアテストを行うSHIFTの代表取締役社長も務めている。丹下自身は香りに強いこだわりがあるわけではなく、良い香りがする空間が好きという程度だという。音楽に例えると「お気に入りのアーティストのアルバムを聴くのではなく、Spotify(音楽配信サービス)でその時の気分に合った音楽を聴きたいタイプ」。

丹下は香りでもSpotifyの様な体験を作りたいと考えていて、朝の香りや夕方の香り、集中したいときの香りやリラックスするための香りなど、その時の気分に合った香りと偶然出会えるような製品を作りたかったと話した。

香りで空間をデザインする
既存のアロマディフューザーは色々な香りがあるが、どれもオイルの匂いがメインで単調な香りが続く。香りに飽きて消したいと思っても自由にON/OFFすることができず、ずっと香らせておくと頭が痛くなることもある。また、アロマディフューザーから出る香りは粒子が大きく、壁や床に匂いが染み付いてしまうのだそうだ。

「香りは変化」だと考える丹下が目指したのは、1時間のうちの最初の5分だけ香らせておいて、30分経ったら違う香りに切り替えて脳をリフレッシュさせるような体験。そのため、IoTデバイスでオンデマンドに、香りで人間に寄り添った空間を作ることが必要だった。Scentee Machinaから出るフレグランスは粒子が非常に細かく、爽やかに部屋中に拡がったあとスッと消えていく。

新しいテクノロジーでこれまでにない香りの体験を
丹下が初めて香りのプロダクトを開発しようと思ったのは2009年のこと。当時はフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が急速に進んでいたタイミング。そんな中で様々なサービスが立ち上がっていたが、人間の五感のうち、味覚と嗅覚に関するサービスはなかった。「ガラケーでは難しいが、スマートフォンだったらこれまでなかった新しい体験を提供できるかもしれない」。そんな想いから「香り」のプロダクトの検討を開始した。

はじめに考えたのはユーザー同士が香りをメッセージのように送りあえる体験。スマホのイヤフォンジャックに取り付け、メッセージを送ると香りが出るデバイスを開発した。当時はIoTという言葉もまだなかったが、丹下にはインターネットとものづくりを組み合わせた領域では日本人も世界で勝負できると考えていた。そこに「香り」の要素も追加すれば世界的にも例のない、新しい体験を創造できると確信していた。

日本発のサービスで世界を驚かせる
このとき丹下が作ったスマホで香りを送るデバイスは瞬く間に世の中の注目を集めることになる。女子高生が友達と香りを送り合うプロダクトムービーを公開したところ大きな話題になり、ロレアルをはじめとした世界中のコスメ、アパレルブランドから声がかかった。

そんな中、2012年にアメリカのOscar Mayerという食肉加工品メーカーの”Wake Up & Smell the Bacon”というキャンペーンで、朝になるとベーコンの香りとともに目覚められるデバイスを作った。キャンペーン動画は3600万回以上再生され、カンヌライオンズでもモバイル部門でシルバーを受賞した。

この取り組みで香り業界の注目を一気に集めた丹下は、2013年にドイツで開かれた人工嗅覚の分野の世界的な学会「Digital Olfaction Society」に出席。そこで世界で最も有名な香水であるシャネルのNo.5の調香師と出会う。シャネルの調香師にとって香水は「神の作る芸術品」だ。香りをデジタルデバイスにすることは神への冒涜に等しいのではないか。批判を覚悟して挨拶をしたが、調香師の口から返ってきたのは「こんなものを作ってしまう日本人はなんて面白いんだ」という予想外の称賛だった。

このときの「日本人も世界で通用するという」自信は、丹下にとってその後のサービス開発を進める原動力となった。香りの世界で、ある種日本人らしく、オタクのようにガジェットを作るだけで、世界から評価してもらえる新しい価値が生まれる。丹下はその価値を日本人にも届けるため、プロダクト開発に邁進した。

新しい香りの体験を届けるために

丹下は香りを通じた新しい生活を実現するために、製品の完成度にとことんこだわった。丹下の製品開発プロセスはスペックや技術面からアプローチするのではなく、製品がどこでどう使われるのかというUXが起点になっている。

香りは実際に体験してもらえないと良さを伝える事ができない。しかし、体験したお客さんにしか製品を買ってもらえないのでは事業拡大は望めない。そのため、プロダクト自体を部屋の中心に置きたくなるようなデザインを目指した。Scentee Machinaの開発には約3年かかっているが、はじめの2年で100枚以上のデザイン画を描き続けた。

SXSWやCESにも製品のデザインモックだけで出展して来場者の反応を確かめた。もちろんモックなので香りは出ず、別の容器に入れた香りのサンプルを嗅いでもらった。香りに関してはデザイン性の高いデバイスが珍しかったため丹下の狙いが見事的中し、ホテル業界などから多くの引き合いをもらうことができた。

ものづくりの飽くなきこだわり
いよいよ本製造へ入っていったが丹下の求める製品を実現することは一筋縄ではいかなかった。Scentee Machinaの製造は中国の工場で行なっており、本体はアルミの削り出しで作っているが、表面の仕上げの質感を出すことが難しい。指紋がつかないマットな仕上がりを実現するために多くの試作を繰り返した。

また、香りが入っているガラス製のカートリッジを照らすLEDライトはろうそくと同じ色温度で、心臓の鼓動と同じリズムでゆっくりと点滅する。ライトを見つめるだけでもリラックスできるこの拘りも丹下のUX志向の現れだ。この色と動きを実現するだけでも半年かかっている。

Scenteeの可能性
インタビューした2019年8月時点、Scentee Machinaはサービスを開始してから3ヶ月で300台を販売していた。ローンチ時のクラウドファンディングで20ヶ国でのニーズを確認できているので、1カ国あたり1000台で2万台を販売可能だ。一度、ディフューザー本体を買ってもらえば、あとはカートリッジの交換で継続的な売上を創出できる。1カ月で1本カートリッジを交換してもらえれば、将来的にはデバイスの無料配布も可能になる。

そしてScentee Machinaは誰がどのタイミングでどの香りをどれくらい噴霧したかがリアルタイムでわかる。そうして集めた数万人のデータはエンドユーザーのニーズそのもの。香料メーカにとってダイレクトマーケティングのための貴重な資源となる。4本のカートリッジのうち1つを企業のマーケティングに活用してもらうといったこともあるかもしれない。

香りは普段意識することは少ないが、人間の意識や気分にダイレクトに働きかける強さを持つ。個人のリビングやベッドルームだけでなく、ホテルやデパートなどのサービス業から、オフィス、交通機関、介護の現場まで、香りの体験によって付加価値を上げられる業界は多い。

今後、様々なシーンで香りのデザインが当たり前になったとき、香りの体験と連動させることで私達の生活をどうアップグレードできるか考えてみると、新しいビジネスの機会をそこかしこに感じる。

※Forbes Japanの2020年2月13日の記事(https://forbesjapan.com/articles/detail/32274)より抜粋

Scentee Machinaというサービスがどういうものなのかについては、以下のYouTube動画を見ると一気にイメージが湧くと思います。

動画を見る限りにおいては、スマホを通じて非常に細かくシーン別の香りを設定できる機器という印象を持ちました。

私は、今回、Scentee Machinaの特徴に触れたことで、今では普通となったAmazonの推奨機能(過去の購入履歴からおススメ商品を表示する機能)の「香りバージョン」の位置づけへの成長を遂げていくのではないかと感じました。

香りに対するフィードバックを継続的にIoTを通じて行なっていくことにより、「この香りが好きならば、こんな香りが好きなのでは?」というように、コンシェルジュ的に働きかけを行なってくれるようなディフューザーがあったら、日々が楽しくなっていくと思います。

一度、この商品を置いている場所へ行き、機能性について色々と確かめてみたくなりました。Scentee Machinaの今後の進化が非常に楽しみです。

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