先日、沖縄の首里城の火災がありましたが、ちょうど10月26日に琉球王国の記事を書いたばかりでしたので、非常に残念な気持ちが湧いてきました。
【過去の関連記事:琉球王国の時代の交易を通じて、沖縄に入ってきたハーブ・スパイスにはどんなものがあるのか。とても興味が沸いてきました。】
今までに何度か書いていますが、ハーブ・スパイス・香りの探求をしていくと、数百年前、数千年前からの人類の歴史とリンクしていくので、日々メディアを通じて流れてくる情報において、重要な意味合いを持つものとして認識できる場面が増えてきます。
そのような流れが起こってくると、日々の生活の中における自分自身の”好奇心”がどんどん強くなり、それに伴い、アンテナが広がっていくので、さらに入ってくる情報量というのは格段にあがってきます。
”歴史に対する認識を持つこと”は、流れてくる断片的な情報が、ただの情報で終わるというケースが減っていき、点と点が線で繫がり、線と線が繋がって面を形成し、、というように何らかの形で意味を持っていくことが頻発することの根源となっているように感じます。
上記の背景により、最近は、ハーブ・スパイス・香りの歴史・起源に関する記事が入ってくるとしっかりと目を通すようになっているのですが、先日見た「ケチャップ」の起源に関する記事が、非常に興味深い内容でしたのでご紹介します。
ケチャップの発祥はアメリカにあらず、ケチャップのトランスフォームの歴史はこんな感じ
by Pedro Ribeiro
ステーキや揚げ物、フライドポテト、ピザなど、数多くの料理に使われ、世界中で愛されている調味料「ケチャップ」は「アメリカのもの」というイメージがあります。しかし、実際にはケチャップの起源はアジアにあり、さまざまな変遷を経て現代の「トマトケチャップ」に進化したという歴史を持ちます。
A brief history of ketchup
https://theconversation.com/a-brief-history-of-ketchup-99812?xid=PS_smithsonian
ケチャップといってもメーカーによって風味はさまざまですが、ウェブスター辞典によるとケチャップの定義はシンプルに「トマトから作られたピューレ状の調味料」と書かれています。
2019年時点で「ケチャップ」というとアメリカのイメージが強くありますが、実は、その起源は中国にあると考えられています。数百年前から中国では魚から作ったソースのことを「KE-chiap」と呼び、人々は魚醤のような形で料理に使用していました。中国で生まれたケチャップはマレー半島からイギリスが植民地としたシンガポールに伝わり、18世紀にイギリス人が「kecap」と呼ぶ食べ物に出会うと、しょうゆと同様にローストや揚げ物といったイギリス料理に使われるようになりました。
その後、ケチャップはマッシュルームや酢漬けのくるみなど、さまざまな材料で作られていくようになりました。「Compleat Housewife」というレシピ本には、ワインやスパイスを使ったアンチョビベースのケチャップのレシピが記されているとのこと。
そして19世紀初頭、アメリカに伝わることで、ケチャップは大きな変革を遂げます。トマトを砂糖で甘くし、酢で酸味を加え、クローブ・ナツメグ・ジンジャーといったスパイスで味付けした、いわゆる現代の「ケチャップ」が誕生しました。最初にトマトベースのケチャップを作ったのは、フィラデルフィアの医師であり科学者でもあったジェームス・ミーズ氏でした。1812年、「Archives of Useful Knowledge, vol. 2」という本の中にレシピが記されています。
by Paolo Mandica
ケチャップの代名詞とも呼べるハインツは、もともと母親のレシピを元にしたホースラディッシュ(西洋ワサビ)のソースを販売すべく設立されました。しかし、事業がうまくいかずに破産し、新しい会社を設立した際に別の目玉商品が必要だ、ということで1876年に「トマトケチャップ」の製造・販売に乗り出します。そしてハインツの躍進によって「ケチャップはアメリカのもの」というイメージが定着し、さまざまな料理に使える調味料として、全世界へと広まっていったわけです。
多くのアメリカ発祥の食べ物と同様に、ケチャップもまた「速い、簡単、便利、甘い、いろんな料理にあう、中毒性あり」という特徴を備えています。また、ある意味ではケチャップは「マザーソース」、つまり、ケチャップをベースとして他の調味料を作れるようになっています。バーベキューソースはケチャップを材料とし、海老のカクテルにはケチャップにホースラディッシュを加えたものが使われます。サウザンドアイランドドレッシングやミートソース、チリなど、さまざまな料理がケチャップの上に成り立っています。
by Jason Leung
アメリカでは97%の家庭がケチャップを家に置いており、ヨーロッパ、アジアを問わず、世界中の多くの家庭でもケチャップが使われるにいたっています。ただし、フィリピンでは第二次世界大戦中にトマトが不足し、代替品として開発された「バナナケチャップ」が人気とのこと。
by John Stephen Dwyer
2019年時点アメリカは世界最大のトマトソース輸出国となっており、2016年には3億7900万ドル(約410億円)相当の輸出を行いました。このうち、1.9%がヨーロッパへ、60%がカナダへと送られています。ただし、ハインツはイギリスやオランダに工場を持っており、ヨーロッパでのシェアの80%を占めています。
近年は貿易戦争によりさまざまな物品に関税がかけられようとしていますが、ヨーロッパのハインツがケチャップをEU圏内やアジアへ輸出していることを考えると、ケチャップに関税がかけられてもヨーロッパには大きな影響はないとみられています。一方でカナダは、より複雑な影響を受けるとみられており、フィリピンのバナナケチャップのような代替品が新たに生まれる可能性もありえます。
※Gigazineの2019年11月5日の記事(https://gigazine.net/news/20191105-global-history-ketchup/)より抜粋
魚から作った魚醤のようなソースが、ケチャップの元々の起源だったという情報は、目から鱗です。
また、お恥ずかしながら、現代版のケチャップにクローブやナツメグが使われていたというのも全く知りませんでした。
ハインツのホームページへ行くと、ケチャップの原材料として「トマト、砂糖、醸造酢、食塩、にんにく、香辛料/香辛料抽出物」という記載があるので、この中にクローブやナツメグが含まれている可能性は高いと思います。
さらに、フィリピンでは、第二次世界大戦中にトマトが不足し、代替品として開発された「バナナケチャップ」が人気になっているというのも面白いです。
今までの人生の中で「ケチャップ」は、”美味しいトマトソース”くらいの認識しかなかったので、非常に勉強になりました。