小さい頃から、「カレーライス」を食べていたにも関わらず、”カレーの味ってどのように作り出しているか”についての問題意識は、少しだけ持っていたにも関わらず、その事について掘り下げようとしたことがありませんでした。
でも、カレーの味を作り出す上での3大要素が、『コリアンダー、クミン、ターメリック』であることを、ちょうど1~2年前のテレビ番組で知った時は、大きな衝撃を受けたと共に、最初にこの味を編み出した人は凄いと思いました。
ハーブ・スパイスに触れることの楽しみの一つは、
「ブレンド(調合)をすることで、想像以上の香りと風味が生み出される場合がある」
ことだと個人的に感じています。
世界的に日々の生活の中に活用されているハーブ・スパイスというのは、土地固有のものを含めると数百は存在しているはずなので、その組み合わせとなると、ほぼ無限に存在していることがわかります。
なので、一生をかけてもほんの一部の世界しか知ることができないが故に、このハーブ・スパイス・(香り)の世界というのは非常に魅力的です。
ちょうど昨日、冒頭で紹介した「ターメリック」の効能を研究している農学博士の記事を見つけたのですが、その内容が興味深かったのでご紹介します。
ターメリックなどスパイスやハーブの健康効果|がんや認知症予防効果に期待
今や国民食ともいえるカレーライスに不可欠な香辛料、ターメリック(アキウコン)。その機能にいち早く注目し、研究を続けている農学博士の大澤俊彦さんは、
「ターメリックはがんを含め、さまざまな病気の予防に効果の高い機能性食品」
とすすめる。日常的にカレーを食べるインドでは、がんの発生率が少ないという報告もある。その効果について聞いてみた。
【ターメリック】ターメリックは、ショウガ科のアキウコンの根茎を乾燥させたもの。黄色成分の80%以上が「クルクミン」成分。抗菌・抗炎症作用が強い
10年前に乳がんを患い、手術、抗がん剤治療、ホルモン治療等を行った本誌記者(59才・その後、再発なし)が、各種治療とともに真剣に取り組んだのが「食生活の見直し」。食事、運動、睡眠など日々の生活が、がん予防にいかに大切か、自らの体験を踏まえつつレポートします。
乳がん、皮膚がん、大腸がん、腎臓がんなどの予防に期待
――ターメリックの研究に着手したきっかけは何ですか?
大澤さん(以下敬称略)ターメリックはもともと薬として利用されてきた食品です。漢方では止血剤や健胃剤に。またインドやマレーシア、インドネシアなどでは女性が皮膚に塗る習慣が知られています。
これはターメリックに抗菌・抗炎症作用があることから、経験的に紫外線による障害や皮膚感染などを予防するためでしょう。ターメリックのほかにも、唐辛子、ジンジャー、シナモンなど多くの香辛料が、古来より薬として用いられ重要視されてきました。ところが科学的根拠に基づいた評価が少ない。そこで、これら香辛料を科学的に解明し、生活習慣病を予防する食品開発につながればと、研究を続けています。
─―研究でどのようなことがわかりましたか?
大澤まず、ターメリックの主要成分である黄色の色素「クルクミン」が、乳がんや皮膚がん、大腸がん、腎臓がんなどの予防に期待できるということ。特にクルクミンを経口摂取した場合、腸管の部分で「テトラヒドロクルクミン」という物質に変化し、この物質が強力な抗酸化力を発揮し、がん予防効果を示すことがわかりました。
国立がん研究センターとの共同研究では、本来のクルクミンに比べ、腸内で変換したテトラヒドロクルクミンの方が、大腸がんを強く抑制することが明らかになったんです。
生活習慣病や認知症予防も期待されている
─―つまり、ターメリックを食事として口から入れることが重要と?
大澤 その通りです。腸の中で効果が強まるので、カレーなどのターメリック料理を積極的に摂ると効果があります。腸内で変化するテトラヒドロクルクミンは大腸がん以外にも、腎臓がん、乳がんの予防効果も期待されています。また糖尿病や動脈硬化といった代表的な生活習慣病に対する抑制効果も科学的に明らかになりました。
―─カレーライスはアンチエイジングにぴったりの食事だったんですね。
大澤 ターメリックなどのスパイスは、今までも知らず知らずに健康長寿の重要な役割を果たしてきました。最近では生活習慣病の予防だけでなく、脳内老化を抑制し、現在急増している認知症の予防にも期待され、世界的に研究も進められています。
ターメリックは食事程度の量なら副作用もありません。特別に取り寄せる必要もなく、ごく一般的なスーパーにも売られている点も魅力です。大いに料理に活用していただきたいものです。
スパイス&ハーブの種類と健康増進の役割
昨今、食品科学の研究が進み、スパイス中の非栄養素成分が健康増進に重要な役割を果たしていることがわかってきた。少量で料理の香りや味を調えるスパイスは、食事で摂るなら、がんや老化などさまざまな疾病を予防する。ただし、摂りすぎると体に害になるスパイスもあるので、摂取量には注意したい。
●クミン
クミン
セリ科。種子(クミン・シード)に強い芳香と辛みがありカレーの主要スパイスの1つ。消化促進、食欲増進、胃腸内のガス排出の促進効果がある。
●クローブ
クローブ
フトモモ科の樹木チョウジノキの花蕾。香辛料や生薬として使われる。インドや中国医学では歯科の痛み止めや殺菌などとしても使われている。
●山椒
山椒
ミカン科の落葉低木。原産国は日本。樹皮や果皮は古くから香辛料や薬として使われてきた。漢方では健胃、鎮痛、駆虫作用があるとされている。
●ナツメグ
ナツメグ
常緑樹ニクズクの種子、またはそれを挽いて粉末にしたもので、古くから西欧で珍重されてきたスパイス。消化促進、解熱、健胃効果があるとされる。
●キャラウエイ
キャラウエイ
セリ科。西アジア原産のスパイス。主にザワークラフトやパン、菓子などに使われる。古くは胃腸内のガス排出促進や強壮剤としても利用されてきた。
●タイム
タイム
シソ科のハーブ。タイムから抽出したオイルは消毒薬、歯磨き粉などにも利用。薬効としては殺菌、消化促進、糖尿病予防などに期待されている。
●タラゴン
タラゴン
キク科ヨモギ属の植物。古代ギリシャでは解毒薬として利用。アメリカの研究機関では、がん予防効果のある食材として、上位に位置づけられている。
●バジル
バジル
インド、熱帯アジア原産のシソ科のハーブ。鎮咳、強壮効果があるとされ、アメリカの研究機関では、がん予防食材として位置づけられている。
●コリアンダー
コリアンダー
タイやインド料理などでおなじみのセリ科の香辛料。ビタミンC、B1、B2、Eが豊富。古来民間療法では鎮咳や解熱、解毒効果があるとされている。
●パプリカ
パプリカ
唐辛子を粉末状にした香辛料。野菜として流通しているパプリカとは別品種。期待される効果は食欲増進、消化促進、エネルギー代謝亢進など。
●ペッパー(こしょう)
ペッパー(こしょう)
コショウ科の植物の果実を原料とし、古くから薬としても利用。効能としては消化促進、エネルギー代謝亢進、食欲増進、抗がん作用などがある。
●スターアニス(八角)
スターアニス(八角)
常緑高木トウシキミの果実を乾燥させた香辛料。成分の一部はインフルエンザ治療薬にも使用。漢方では健胃、鎮痛効果があるとされている。
●カルダモン
カルダモン
ショウガ科の植物の種子から作られる高級スパイス。古代エジプトでは「聖なる香煙」として祈とうのお香にも使用。胃腸トラブルの改善にも役立つ。
●フェンネル(茴香(ウイキヨウ))
フェンネル(茴香(ウイキヨウ))
セリ科ウイキョウ属の植物。漢方生薬では、食べすぎ、飲みすぎ、胃もたれ、消化不良、食欲増進、けいれん、去痰などに効果があるとされている。
●セージ
セージ
シソ科の常緑低木で、古くから薬草として利用。抗炎症、発汗防止効果があり、アメリカの研究機関では、がん予防食材に位置づけられている。
●オレガノ
オレガノ
ヨーロッパ地中海沿岸地方が原産のシソ科の香辛料。古くは、消化促進や頭痛薬などの薬用として利用。最近はがん予防効果も期待されている。
●ローズマリー
ローズマリー
シソ科の常緑低木で、古くから薬草として利用。抗炎症、発汗防止効果があり、アメリカの研究機関では、がん予防食材に位置づけられている。
●シナモン
シナモン
ニッケイ属の複数の樹木の内樹皮から得られる香辛料。古来より薬としても利用され、殺菌、消化促進に効果があるといわれている。
●ローリエ
ローリエ
クスノキ科の月桂樹の葉を乾燥させた香辛料。消化促進、利尿、冷え症や肌トラブルなど婦人科の病気の改善が期待され、研究が進められている。
●ジンジャー(しょうが)
ジンジャー(しょうが)
古くから漢方生薬としても利用されているショウガ科植物。消化促進、エネルギー代謝亢進、鎮咳、鎮痛、健胃、がん抑制などの効果が期待されている。
●ガーリック
ガーリック
ヒガンバナ科ネギ属。強力な抗酸化力をもち疲労回復、血栓形成阻止、強壮などに効果がある。最もがん予防効果が高い食品にも位置づけられている。
●唐辛子
唐辛子
ナス科トウガラシ属の果実。効能には食欲増進、抗ストレス、消化促進、血中コレステロール低下、脂質代謝亢進、エネルギー代謝亢進など。
長寿のスパイス ターメリック料理
※スパイスの量はあくまでも目安です。辛みのカイエンペッパー(チリペッパー)の量など、好みによって調節してください。
●本格チキンカレー
本格チキンカレー
<材料>(3~4人分)
・鶏肉…500g
・玉ねぎ(みじん切り)…中1個
・にんにく(すりおろし)…20g
・しょうが(すりおろし)…20g
・クミンシード…小さじ1
・にんじん(すりおろし)…100g
・セロリ(みじん切り)…1本
・りんご…1/4個(すりおろし)
・カットトマトの缶詰…1カップ
・オリーブオイル…大さじ2
・水…300ml<A>
・唐辛子…1本
・シナモンスティック…1本
・ローリエ…1枚
・カルダモン…大さじ1
・塩・こしょう…少々<B>
・ターメリック…小さじ1
・カイエンペッパー…小さじ1
・コリアンダーパウダー…大さじ1/2<C>
・ガラムマサラ…大さじ1
・オレガノ…少々
・タイム…少々
・パプリカパウダー…少々
・塩・こしょう…少々<作り方>
(1)フライパンにオリーブオイル大さじ1を入れて、鶏肉を焦げ目がつくまで焼き、皿に取り置く。
(2)(1)のフライパンにオリーブオイル大さじ1を入れてクミンシードを入れて炒め、香りがしてきたら、玉ねぎ、にんにく、しょうが、カットトマトを加えてよく炒める。
(1)(2)ににんじん、セロリ、りんごを加えてさらに炒める。
(4)鍋に水、(1)と(3)、Aを入れて中火で約20分煮込む。
(5)いったん火をとめて、Bを加えて弱火でとろみがつくまで煮込む。
(6)仕上げにCを入れて一煮立ちさせれば出来上がり。●鶏肉スープ・ソトアヤム
鶏肉スープ・ソトアヤム
<材料>(3~4人分)
・鶏胸肉…300g
・キャベツ…150g
・もやし…1/3袋
・春雨…40g
・ゆで卵…2個
・パクチー…適量
・ライム…適量
・塩・こしょう…少々
・水…1L<A>
・にんにく(みじん切り)…2片
・しょうが(みじん切り)…20g
・長ねぎ(小口切り)…適量
・ローリエ…1枚<B>
・ターメリック小さじ1
・鶏ガラスープ粉末大さじ1
・ナンプラー大さじ1
・赤唐辛子1本<作り方>
(1)キャベツを一口大に切る。
(2)鶏胸肉をフライパンで軽く焦げ目をつける程度に焼く。
(3)鍋に水と(2)とAを入れて約10分ほど煮て、鶏胸肉だけを取り出す。
(4)(3)の鍋にキャベツ、もやし、春雨、Bを入れて5分ほど煮込み、ライム、塩こしょうで味を調える。
(5)器に盛り、ゆで卵、パクチーをトッピングすれば完成。●野菜のアチャール
鶏肉のアチャール
<材料>(2~3人分)
・なす…2本
・トマト…1個
・塩・こしょう…少々
・レモン汁…適量
・オリーブオイル…大さじ3<A>
・ターメリック…小さじ1
・カイエンペッパー…小さじ1
・コリアンダー…小さじ1/2<作り方>
(1)野菜を一口大に切る。
(2)フライパンにオリーブオイルを入れて(1)を炒める。
(3)火を止めてAを加え、よくかき混ぜる。
(4)塩こしょう、レモン汁で味を調えれば完成。●ベトナム風から揚げ
ベトナム風から揚げ
<材料>(2~3人分)
・鶏肉…500g
・揚げ油…適量
・ライム…1/2個<A>
・酒…大さじ1
・ナンプラー…大さじ1
・しょうゆ…小さじ1
・しょうが(すりおろし)…大さじ1
・にんにく(すりおろし)…1片分<B>
・米粉…30g
・ターメリック…小さじ1
・塩・こしょう…少々
・水…30ml<作り方>
(1)鶏肉を一口大に切る。
(2)(1)をAに30分ほど漬け込む。
(3)ボウルにBを混ぜ合わせ、(2)を絡める。
(4)油を180℃に熱し、(3)を揚げる。食べる時にライムをかけるとおいしい。教えてくれたのは
農学博士・大澤俊彦さん/1946年、兵庫県生まれ。東京大学大学院農学研究科博士課程修了。オーストラリア国立大学リサーチフェローを経て名古屋大学農学部へ。カリフォルニア大学デービス校客員教授。名古屋大学名誉教授。愛知学院大学心身科学部特任教授(人間総合科学大学特任教授兼任)。著書に『食べてガンを防ぐスプラウト健康法』『スパイスには病気を防ぐこれだけの効能があった!』(共著)など多数。
撮影/茶山浩 料理協力/新谷君子
※女性セブン2019年9月19日号
※介護ポストセブンの2019年9月23日の記事(https://kaigo.news-postseven.com/74595)より抜粋
『クルクミンを経口摂取した場合、腸管の部分で「テトラヒドロクルクミン」という物質に変化し、この物質が強力な抗酸化力を発揮し、がん予防効果を示すことがわかりました。』
という部分の記述は非常に有益な情報だと感じたと共に、生活の中で、カレーライスを取り入れる頻度を少し上げたいという気持ちや、ターメリックを使った料理のバリエーションも今後のハーバルライフの中で増やしていきたいと気持ちが沸いてきました。
このような科学的なエビデンスを蓄積させていくことは、ハーブ・スパイス・アロマが生活の中に浸透していく上での大切な要素の一つだと思っているので、今後の研究のアップデートを楽しみに追っていきたいと思います。