昔から言われてきたハーブ・アロマの効能や、体感的に感じている効果が、客観的な科学的エビデンス(証拠)に基づいた実験を通じて、「確かな効果・効能がある」という結果が導き出されることは、ハーブ・アロマが生活の中へ浸透する上で、非常に重要な要素だと思っています。
先住民族のように、自分たちが住んでいるテリトリーが常に危険にさらされる状況が発生しうる環境に住んでいる場合、本能(爬虫類脳)を使わざるを得ないので、身の回りに生えている植物が持つ潜在的な可能性に気付きやすかったのではないかという仮説を持っています。
現在、よく耳にする先住民族とハーブの結びつきというのは、そのような流れで生まれてきたのではないか思います。
現代のように、大脳の表面(人間の脳)を中心に使う社会人は、思考中心となってしまっているので、本能で「このハーブはすごい」と感じることをできる人というのが少なくなっているが故に、
現代の社会人がハーブ・アロマへ興味を持つ取っ掛かりとして、科学的エビデンスというのは重要な役割を持つという側面もあると考えています。
つい先日、公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)と、長崎大学大学院の共同研究で興味深い内容が発表されたのでご紹介します。
精油の嗅覚刺激により、テストステロン(男性ホルモン)の分泌量が増加
公益社団法人 日本アロマ環境協会
~長崎大学大学院との共同研究で確認~公益社団法人 日本アロマ環境協会(略称:AEAJ、東京都中央区)は、長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 神経機能学の篠原一之教授と共同研究を行い、精油の吸入がテストステロン(男性ホルモン)に与える影響を確認しました。40代の女性15名を対象に10種類の精油で実験を行った結果、ジャスミン(アブソリュート)精油とローマンカモミール精油、クラリセージ精油の香り刺激で、唾液中のテストステロン濃度の有意な増加がみられました
研究概要
【対象】
40歳代の女性15名(月経周期21日~37日)
【精油】
10種類<イランイラン、クラリセージ、ジャスミン(アブソリュート)、スイートオレンジ、ゼラニウム、ネロリ、フランキンセンス、ラベンダー、ローズオットー、ローマンカモミール>
【測定方法】
「溶媒で希釈した精油」または、「溶媒のみ」と空気を混合した気体を、それぞれ20分間吸入し、吸入の前後で唾液を採取
【評価項目】
唾液中のテストステロン(男性ホルモン)濃度研究結果
10種類の精油のうち、ジャスミン(アブソリュート)精油、ローマンカモミール精油、クラリセージが
精油吸入後の唾液中のテストステロン濃度が有意に上昇しました。ジャスミン
ローマンカモミール
クラリセージ
※テストステロンとは
男性ホルモンの一種。少量ながら女性の体内にも存在し、生きる活力や気持ちの張り、恋愛意欲の向上、筋肉量の増加などの働きがあるといわれている。研究結果詳細
※変化率は、吸入後テストステロン濃度を、吸入前テストステロン濃度で割って算出。
「有意差あり」とは、無臭時と精油吸入時の変化率を比較した際に有意な変化が見られたことを示す。まとめ
テストステロンは、男性にとって重要なのはもちろんのこと、女性にとっても活動的に社会生活を行う上で欠かせないホルモンです。特に、更年期の不調緩和や更年期以降の健康的な生活に影響をもたらすことが分かっています。今回の研究結果により、更年期以降の女性のQOL向上にアロマテラピーの更なる活用が期待されます。
篠原 一之 教授
長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科神経機能学 教授。長崎大学医学部卒業後、東海大学大学院医学博士課程(児童精神科)終了。北海道大学、横浜市立大学、バージニア大学などを経て2002年より現職。小児精神科・心療内科医師として臨床現場の声にも日々耳を傾けつつ、フェロモンや香りによる女性のうつや不安の緩和法、乳幼児行動・母性行動などを専門に研究している。※THE SANKEI NEWSの2019年4月22日の記事(https://www.sankei.com/smp/economy/news/190422/prl1904220045-s1.html)より抜粋
ネット上を見ると、テストステロンの研究は順天堂大学が盛んなようです。
男性が体内に多くもつホルモンであるが故に、男性との関係性にフォーカスされやすいですが、性別を超えて大切なホルモンであることが、以下の順天堂大学大学院泌尿器外科学の堀江重郎教授の記事をみるとよくわかりますのでリンクを貼ります。
以下に、このリンクの中で興味深かった部分を一部抜粋します。
ここまで男性について語ってきたが、女性はどうだろうか。
例えば、血管のしなやかさや筋肉量、骨密度を保つ働きをする女性ホルモンの一つ「エストロゲン」はよく知られている。その一方、前述のとおり男性の5~10%と量は少ないが、女性の体にもテストステロンは存在する。男性同様、副腎や脳に加え、卵巣、さらに脂肪から作られるのだが、その量は生涯でなんとたったスプーン1杯程度。しかしそれでも、役割は男性と変わらないという。
「女性にとっても、決断力や判断力、さらにリスクを取るという行動につながっています。また、女性にとってテストステロンの影響が強くなるのは、閉経後が多いといわれています。そのころになると女性ホルモンが減っていくのですが、テストステロンの量は大きくは変わりません」
その結果どうなるかというと、考え方が男性的になっていくのだという。例えば、よりアクティブになって社会貢献活動をするようになったり、友人と連れ立って旅行に出掛けるようになったり。その行動原理はテストステロンの特性を考えれば説明できる。
「もちろん、それ以前でもテストステロンの多い女性はいらっしゃいます。組織の中でパワフルに働いている方や独立心の高い方というのは、テストステロンの多い女性といえるでしょうね」
日々香りと触れ合うことが、広範囲な側面において「プラス」になっているということは、自分自身の体感としてはわかっていることなのですが、このような実験を通じ「やっぱりそうだったのか」と確認できるのは大きな納得感があります。
今後も、ハーブ・アロマに関する科学的な実験についての情報は常に追って行きたいと思います。
内田 ひろ美
2 5月 2019今回の手記は、大変興味深く読ませて頂きました。
アロマテラピーの世界でも、昔から女性の不調に良いと言われる植物はたくさんありながらも、実際にはエビデンス、科学的実証が取れていないものも多く、確かに効果があると自信を持って言えないものもあったようです。
ですが、実験の結果が腑に落ちる事ばかりでしたね。
特に閉経後のテストステロン量が、女性ホルモンより優位になりがちなのは、世に見られる、中高年女性特有の逞しい行動力により納得です(笑)
正直、エストロゲン様作用のあるハーブについて常に注目していた私にとって、テストステロンの方は、男性特有のホルモンだから、という安易な考えから、全くの盲点でした。
今後、自分のライフワークとして、テストステロンの方も注目していきたいと思います。
ちなみに、更年期特有の症状によい結果を出してくれたのは「ゼラニウムの香り」だそうです。
嗅ぐだけで、不安感が軽減した、気分が元気づいた、髪や肌の潤いの実感が増したと実験結果が出たとのこと。
ローズやイランイラン、ジャスミンを押さえての、ゼラニウム?!?には驚きでした。
私自身も好きなエッセンシャルオイルのひとつですが。
この実験では、血液中の女性ホルモン値まで測定して、ホルモン値を変えることなく、不調のみを改善してくれたとのこと。 閉経前途に女性ホルモン値が増えたらうれしいのですが、エストロゲンが乳房を刺激するリスクを考えると、乳がんの治療中の人は使うことができません。
しかし、ゼラニウムがホルモン値を変化させないというのなら、安心して使うことができるという、あえてホルモン値を変化させないことによるメリットがあるとのことでした。
詳しくは2018年12月5日
吉川千明 氏(1959年生まれ 美容家、オーガニックスペシャリスト)
の記事一覧よりWebから拾って、参考にしながら一部分、抜粋引用もさせて頂きました。
既にご存知でしたら、失礼しました。
これからも又 記事を読ませて頂きます。
Rosemary6107
2 5月 2019コメント頂きありがとうございます。
私が日々、ハーブと関わっている女性と交流して思うことは、行動に移すまでのスピードが速いということと、行動量がとても多いということです。明らかにテストステロンが多いと思います。
頂いた情報は、AEAJの実験結果に関するものですよね。比較的最近の情報でしたので記憶の中に残っています。
(以下の記事で、その事について触れたことがあります)
http://enjoyherballife.net/blog/herb-aroma-experiment/5949/
私自身、アロマが人体に与える影響についての見識が浅すぎる為、今後学びを深めたいと考えているところです。
貴重な情報を頂きありがとうございます。
今後とも宜しくお願い申し上げます。
内田 ひろ美
4 5月 2019そうでしたね、わりと最近の12月に既に取り上げていましたね、、本サイトでの記事も読んではいたのですが、何故か?その際はスルーしてしまっていました。(ボーっと生きてたんだと思います。)
実験の結果レポートよりも、それを受けての吉川氏の考察の方が深く響き、それというのも、
「女性ホルモン値を変えずして、症状を緩和」という点です。
自分の講座でも毎年、春はローズやお花の精油をテーマにするのですが、実際には予算上、ローズ精油は高価で使用することが出来ません。やはりローズの代用として、(「貧乏人のバラ」という不名誉な呼び名をされているのが残念ですが)ローズゼラニウムを使用することにになります。
先月の講座内でゼラニウム精油を紹介する際には、エビデンスがあることを自信を持って伝えられましたし、既にホルモン療法中の生徒さんにも、ホルモン数値を気にせず、治療と併用してゼラニウムを使用して大丈夫ですよ、と伝える事が出来ました。
やはり、医療従事者では無いことから、メディカルハーブやアロマを紹介する際は、何かしらの治療を受けている生徒さんには、禁忌事項は勿論のこと、主治医に相談の上での使用をして頂く様に伝えているのが常でしたが、今回のゼラニウムのエビデンスと共に、「ホルモン値に影響を受けない」という裏付けにより、自分の意思判断で、その生徒さんにハッキリと伝えられた事が何より、とても嬉しかったです。
私事になり、失礼しました。
こういう情報があると、このような事に役立つ、という点での、いち参考にして頂ければ幸いです。
自分自信が、実験のレポート記事を読んでの、経験値から考察を深めていけるように成長出来ることを、(遠い道かもしれませんが)目標としています。
また記事を読ませていただきます。
返信ありがとうございます。
Rosemary6107
4 5月 2019早速のご返信ありがとうございます。
ローズゼラニウムが、「貧乏人のバラ」と呼ばれているのは非常に残念ですね。
バラと人間の関係性の歴史については知りませんが、現在、大航海時代のスパイス戦争の歴史を勉強しているのですが、人間がナツメグに黄金以上の価値を与えたりしていることを知ると、様々な時代背景が植物に対する価値観に対して大きく影響を与えていることがわかります。
内田様のコメントを見ていて、生徒さん達への真摯なスタンスが伝わってきますし、実験レポートの記事を、日々の教室の中でどのように活かしているのかという部分がイメージでき、とても参考になります。
内田様の一つ一つの学びを着実に積み重ねていく姿勢は、私自身の今後のハーバルライフにおいて最も大切にしたいことの一つです。
今後ともよろしくお願い申し上げます。