千葉大学園芸学部の岩崎寛先生という方は、園芸療法やアロマセラピー、森林療法などの「緑の療法的効果」に関する研究に先進的に取り組まれているようです。
岩崎先生は、ラベンダーについて興味深い実験を行っています。
「都市公園内の芝生地およびラベンダー畑が保有する生理・心理的効果に関する研究」(詳細を詳しくお知りになりたい方はリンクをクリックください)と題するもので、
都市公園内のラベンダー畑で、人に対する癒し効果を血圧・脈拍・唾液アミラーゼ濃度などから比較検討した内容です。
具体的には、平常時の血圧から「高血圧」「正常」「低血圧」の3グループに分けた被験者を、グループごとにそれぞれ5分間、ラベンダー畑内で安静にしてもらい、最高血圧と最低血圧、脈拍、さらに唾液アミラーゼの濃度変化を見ました。
その結果、以下の興味深いデータが得られました。
【高血圧グループ】
ラベンダー畑で5分間安静にすることで、最高血圧が大きく下がり、最低血圧もやや低下。脈拍も減り、濃度が高い程ストレスがかかっていることを示す唾液アミラーゼ濃度も減少。
【低血圧グループ】
最高血圧、最低血圧、脈拍ともにやや上がった。
上記のリンクに数値的な比較表が載っていますが、簡単にまとめると以下が数値の対比です。
(最高血圧の変化:mmHg)
[高血圧グループ]-30 [正常グループ]-3 [低血圧グループ]+5
(最低血圧の変化:mmHg)
[高血圧グループ]-11 [正常グループ]-1 [低血圧グループ]+1.5
(脈拍の変化:拍/分)
[高血圧グループ]-10 [正常グループ]+2 [低血圧グループ]+6
(唾液アミラーゼ濃度:KU/L)
[実験前高濃度の人]-11 [実験前中濃度の人]-1[実験前低濃度の人]+12
つまり、ラベンダー畑は、高血圧の人の血圧を下げ、高ストレス状態の人を緩和する働きがある。
一方で、低血圧の人の血圧、脈拍を上げる効果があったということなので、興味深いです。
「ラベンダーは、高血圧の人の血圧を下げ、高ストレス状態の人を緩和する」という見方だけであれば、低血圧の人はさらに血圧が下がるということになってしまい、恐怖のハーブということになってしまいます。
ただ、一般的に鎮静効果が高いハーブという認識を持っている方が多いので、上記の一方向の見方の人も実際多いような感覚はあります。
- ●を摂取したから、便秘が改善した!
- ●を摂取したから、リラックスができた!
- ●を摂取したから、血液がサラサラになった!
という直線的な思考では、ハーブの効能に対する考察は深まらないと思います。
生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質「ホメオスタシス(恒常性)」がありますが、この実験を通して、ハーブはそのメカニズムに働きかけていることがわかったことにもなると思います。
「ハーブを摂り入れることで、心身が調整される」という言い方をすることがあると思いますが、人体の本質的な機能であるホメオスタシスへの働きかけが「調整」という意味だという捉え方もできると思います。
また、ハーブの「効能」と言うとき、”人体に対する”「効能」のことを言っているので、当たり前に聞こえるかもしれませんが、ハーブと人体の相互作用の結果を指します。
エネルギー交換とも言い換えることができると思います。つまり、供給(出ていく方)と受領(入ってくる方)の相対値が大切になってくるので、どちらか一方の視点では意味がないということです。
この相対値を人体にとってできる限り最適なポジションに移行させようというパワーが、ハーブの持つ効能の優秀さなのではないかと思います。
このハーブの実験で気づかされることは、現象を俯瞰することの大切さだと思います。
世の中のありふれたニュースの中で、●●のサプリメントを飲んで劇的に■■が改善!というのが非常に多いのですが、こういう内容を見て、
すご~い!私も●●を飲んで、■■を改善しよ~っと!
となるのか、
ちょっと待って。ここに書いてあることは本当なのか? と一旦落ち着いて立ち止まり、そこから情報収集をして適切なアクションをとっていく
のか。
この差が、ハーブの効能をとらえる視点に大きな差をもたらすと思います。