企業(産)と大学(学)のハーブに関する連携の動きの活発化は何を意味するのか

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今まで、ハーブ関連における「連携」といった場合、『市町村』が、漢方に利用される薬草や、西洋のハーブで”町おこしをする”という目的が先に立ち、その目的を実現する手段として、『企業、または、大学』と共同研究・共同開発を進めていくケースが多かったと思います。

「市町村」と「産・学」の薬草協定。その後、どんな具体的成果が出ているのか4つのケースを調べてみました】の中でも、その具体的な内容・成果について取り上げたことがあります。

ただ、ここ最近、企業(産)と大学(学)との間でハーブに関する連携を深めているニュースが徐々に目立ってきています。

どのような連携内容なのか最近発表された2つの事例を見てみたいと思います。

まずは、エスビー食品と筑波大学の連携について。

筑波大 ハーブ効用検証、エスビーと共同研究 機能性食品商品化へ /茨城

筑波大は、エスビー食品(東京都中央区)とハーブやスパイスの効用を科学的に検証する共同研究を開始したと発表した。試験も重ね、3年後をめどに同社でハーブを使った機能性食品の商品化を目指す。

礒田博子教授(食品科学)によると、ハーブなどは古代から薬や食品の保存料として幅広く使われている。だが動物実験などで効果のメカニズムが検証されるようになったのは最近で、特に人への効果に関する科学的根拠は未解明な部分が多いという。

同大では、地中海沿岸地域原産を中心に食材、薬用植物900種以上の成分や薬効などに関する情報をデータベース化している。共同研究では当面、同大が先行して研究を進めてきたハーブの一種「ローズマリー」を対象に実験を進める。実際に人に摂取してもらい、ストレス軽減につながる反応が体内で起きるかなどを調べる。

礒田教授は「ローズマリーは古くからリラックス効果があるとされてきた。マウスの実験などで抗ストレス作用に関するデータを蓄積しており、今回の共同研究で産業応用を進めたい」としている。【大場あい】
毎日新聞 2017年10月5日の記事より

続いて、三井農林と大阪大学の連携について。

三井農林が大阪大学と次世代の機能性食品開発に係る共同研究講座を設置

日本の紅茶業界首位で、三井物産株式会社子会社の三井農林株式会社が2017年9月1日、安心安全で有用な次世代の機能性食品・香粧品素材の開発を目指し、国内最高水準の国立大学法人 大阪大学と「次世代食品開発学(三井農林)共同研究講座」を設置しました。

この共同研究講座のコンセプトは、以下の通りです。

1. 茶やハーブ、漢方薬などの健康素材の可溶性・吸収性を上げるパウダー化技術の開発。
2. 知財化・商品企画・マーケティングまでを視野に、各分野の専門家が参画することで、市場投入までのリードタイムを短縮。
3. 安全性を検証するADMET(注)・薬効解析・臨床試験も内包。
4. 国内各地やアジアの健康素材を発掘し、地域の活性化に貢献。
5. 自然素材からヒット化合物、リード化合物を創出し、次世代の健康食品や機能性飲料、化粧品などを開発。
6. 「食べる」や「飲む」「塗る」だけでなく、噴霧などのさまざまな適用方法を追求。

以上を通じ、事業化を強く意識した高機能素材を研究開発すると同時に、経営感覚を持った研究者や薬剤師を育成することで、健康長寿社会の実現を目指します。

(注)ADMETとは、薬物が生体内に取り込まれてから体外に排せつされるまでの過程を示す、吸収(absorption)、分布(distribution)、代謝(metabolism)、排せつ(excretion)、毒性(toxicity)の英語表記の頭文字からなる略語。

三井物産のホームページより。2017年10月11日付。

三井農林と大阪大学の連携について、少し具体的な研究テーマの内容が「プレスリリース」に記載されていました。以下の3つがキーポイントです。

①カテキン、各種難溶性漢方・ハーブ素材の溶解性向上を目指した技術開発
②カテキン、各種難溶性漢方・ハーブ素材のADMMET並びに薬効評価方法の確立
③新たな機能性食品、香粧品素材のヒトを対象にした臨床研究

今回の『エスビー食品と筑波大学の連携』、及び、『三井農林と大阪大学の連携』の双方に共通しているのは”ハーブを利用した機能性食品の開発を目的とした共同研究”という部分です。

この「機能性食品」という言葉については、以前、JAMHA(日本メディカルハーブ協会)のハーバルセラピスト養成講座の中でも以下のように教わりました。

食品は以下の3つの機能を持つ。(日本発の考え方)

一次機能:生命維持のための栄養面での働き
二次機能:食事を楽しむという味覚、感覚面での働き
三次機能:生体の生理機能を調節する働き

機能性食品というのは、三次機能を人為的に付与した新規の開発食品のこと。

つまり、ある植物・動物に含まれる人体に有効な成分に着目し、その有効成分を抽出していかに効率よく吸収させるか、が機能性食品の開発において大事な部分になると思います。

最近は熱が冷めた感じがありますが、特定保健用食品(トクホ)もこの機能性食品の一部と言えると思います。

今年の春くらいだったと思いますが、一部の週刊誌で、「トクホの効果は嘘だらけ」というような記事がかなり増えて、電車のつり革広告でも非常に目立っていました。

私も「トクホ」と銘打つだけで価格が1.5倍くらい跳ね上がる風潮に違和感を感じていましたので、個人的には問題提起の観点でよかったと思います。

このようなことから、今回ご紹介した2つの連携の話は、このトクホの件も影響を与えているのでは、と思いました。

つまり、ビジネスとしての機能性食品を広めていく上で、効能についての科学的な裏付けがないと消費者は納得しない、ということを企業側で深く認識した。その裏付けを得る上で、大学というパートナーが最適であるという結論に達した。そして、企業側から大学に対して打診をした。

という流れではないかと個人的に推測しています。ちがうかもしれませんが。

このような動きが加速していくと、ハーブ好きか否かに関わらず、自然と食卓にハーブを活用した食品が増えていくと思いますので、ハーブ普及の観点でプラスに働いていくと思います。

「企業」と「大学」のハーブに関する連携については、今後も注目していきたいと思います。

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