先日、 【今夏、「mitosaya 大多喜薬草園蒸留所」の稼働により、果実やハーブからつくるボタニカル・ブランデーの市場が大きく動き出しそうです】 の記事の中で、千葉県夷隅郡大多喜町にできる”日本初のボタニカル・ブランデーの蒸留所 mitosaya のことを紹介しました。
「ボタニカル・ブランデー」というのは、ヨーロッパではフルーツやハーブからつくられる蒸留酒のことで、梨やぶどう、ベリーなどの果物を発酵させ、複数回蒸留することでできます。
このボタニカル・ブランデー市場は、日本では全く未開拓分野なので、今現在動向は注視しており、このmitosayaの動きを起点にして、日本の中で様々な動きが出てくるのではないかと感じていました。
そんな中、早速、10月4日付けの日本経済新聞で、「かんきつ・ハーブ入り日本酒を輸出 WAKAZE」というニュースが飛び込んできました。
一部抜粋します。
洋食に合う日本酒を開発して「世界酒」として展開することをめざすWAKAZE(山形県鶴岡市)は、日本酒を仕込む際にかんきつ類や和のハーブなど香味植物を使った新たな日本酒「ボタニカル日本酒」の開発に乗り出した。山形県の技術支援機関、山形県工業技術センターの支援を受けて今冬に醸造を開始、来春の発売をめざす。
かなり興味深い内容です。mitosayaはヨーロッパですでに定着している文化を日本で開拓しようと動きに対して、このWAKAZEという会社は、日本酒を使って日本独自の”洋食に合う”ボタニカル系アルコール飲料を世界へアピールしていこうという動きです。
この山形に本社を置くWAKAZEという会社、非常に気になりましたので少し調べてみました。
山形本社なので、2代目とかが父親の酒蔵を引き継いでやっている会社なのかと思いきや、2016年の設立で出来立てホヤホヤです。しかも、外資コンサルのエリート社長でした。ホームページを眺めていると非常にわかりやすいコンセプトが伝わり、「洋食に合う日本酒の開発」がコアになっていることがわかります。
すでに、ORBIAというブランドの日本酒を販売していて、そのブランド下にSOL(ソル)というコンセプトのお酒とLUNA(ルナ)というコンセプトのお酒をリリース済です。
味わい、香り、合わせる料理項目を見ると、こだわりがあって面白いです。
また、ワインの熟成に使った樽を使用することによって、ボタニカル系日本酒が出来上がっていることがわかるので、冒頭の日本経済新聞のニュースは、とても自然な流れだと感じ取ることができます。
より、柑橘・ハーブのテイストを全面に出してくるということだと思いますので非常に楽しみです。
SOL(ソル)が美味しそうだったので昨夜注文してしまいました。。
そして、、このWAKAZEの取り組み、今後がたのしみだなあと思っていたら、、、逆のパターンのニュースが入ってきました。つまり、和食に合うボタニカル系アルコールをヨーロッパの会社が発売したというものです。
以下にニュースを抜粋します。
三井食品はベルギー産プレミアムビール「リンデマンス」の取り扱いを強化する。25日から和食にも合う新アイテム「ジンジャーグーズ」を発売。質販型のスーパーや料飲店に積極的に売り込む。
「リンデマンス」はブリュッセル郊外に1822年に設立された老舗ビール醸造所。野生酵母による自然発酵ビールを手がける数少ない醸造所の一つで、近年はハーブなど植物由来の原料を加えた「ボタニカルランビック」シリーズを展開するなど、ユニークな商品提案で注目されている。
三井食品はシメイ(ベルギー)、アンカー(米国)に続く高品質輸入ビールとして昨年からリンデマンスの国内独占販売を開始。クラフトビールなどの取り扱いに意欲的な質販店を中心に定番導入店舗を着実に広げている。
新アイテム「ジンジャーグーズ」は「ボタニカルランビック」の第3弾で、生姜を配合したさわやかな酸味が特徴。9月28日に分とく山東京のホテルインターコンチネンタル東京ベイで行われた商品発表会の席上、リンデマンス6代オーナーのディルク・リンデマンス氏はアジアの要望に合わせて開発した「ジンジャーグーズ」の魅力を説明。分とく山総料理長・野崎洋光氏監修のうなぎの煮こごりなどとともに試飲を行い、和食との相性の良さをアピールした。
※食料新聞社より抜粋
「ランビック」というのは、Wikipediaによると以下のように書いてあり、ベルギー独特のもののようです。面白いです。
ベルギーのブリュッセルの南西に位置するパヨッテンラント地域でのみ醸造される特色のあるビールのスタイルである。慎重に培養した醸造用酵母を使って発酵させるエールやラガーの製法と異なり、ランビックは自然発酵で造られる。自然発酵は、ブリュッセルを縦断するゼンネの谷に自然に生息すると言われている野生酵母とバクテリアにさらされることで起こる。この珍しい工程により、ドライで、ワインやシードルのようなわずかな酸味という特有のフレーバーがビールに加わる。
ニュースの内容をみると、三井食品が扱っている「リンデマンス」側が、和食をターゲットにしてジンジャ―グーズを開発したということではなく、三井食品側が「この味は和食にピッタリじゃないか?」と思ったことが発端ではないかと推測します。
この「リンデマンス」のビールのラインナップを見たのですが、非常に特徴的でした。柑橘類・ハーブ好きにはとても魅力的な「ボタニカル系ビール」だと思います。
記事冒頭からのこの一連のボタニカル系アルコール界の動きは、ここ最近起こってきているもので、尚且つ、急激にその動きの輪が大きくなってきているようです。
「ビール」というと今まで、アサヒかサッポロかキリンかというようなメーカーによる味の区分けがメインだったものが、そのそれぞれの区分けの中にさらに様々なフレーバーの味が追加されてくるという流れがもしかしたら加速していくかもしれません。
そうなると、今まで「ビールは飲まないけど、カクテルやサワーならいける」という女性も、「ラズベリー味のビール?ちょっと試してみようかな」と思うような感じがします。
柑橘・ハーブがアルコールに加わることで、その楽しみ方が無限大に広がると思いますし、日々の生活にバリエーションをもたらすので、ハーブ好きにとってはタマラナイ動きでございます。。
この流れは日本の中でも大きくなって欲しいですね。